月別アーカイブ: 2024年3月

南国シドニーを後にして

シドニーから戻って早20日。緑蔭と古建築が美しい植民地の思い出に浸る間もなく、新聞挿絵を制作せねばならなかったが、何だか急に風刺画を描く気が失せてしまい大幅に遅延!編集者さんに詫びを入れ〆切延長してもらい、月曜日夜入稿しました。
そんな訳でこの電子版日記の執筆もぐずぐずと怠け、掲載頻度が下がってしまった!シドニーでの出来事や新聞挿絵など記事のネタはいっぱいあるので、4月から頑張って書こうとおもいます。

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シドニーのスーパーマーケットで購入した美味しいチーズは、昨日の夕食で全部たべきっちゃった(もう無い)。
向こうでは郊外の美しい住宅街の一戸建てに滞在し、その家の近所のゴミ捨て場でこの薔薇柄ティーカップを拾った。(土産に持ち帰る)

カンタくん誕生

シドニー空港売店で購入した〈ハリモグラの缶詰〉を開封すると、缶に明記された【エクスポートクオリティ】のお墨付き及び博物学的な造形にまったく準じないヘンテコで可愛いやつが誕生しました!

カンタス航空で運ばれたおもちゃの缶詰なので、この子を「カンタくん」と命名。可愛いトリちゃんに紹介すると、トリちゃんはスンと無視して遠い目をしている。茶系の配色は似てるけど仲良くなる日は遠そう…

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12オーストラリア$(約1200円)

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缶切りで慎重にキコキコ…

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みっちり充填!

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ぷはーっ

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がんばれ〜

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カンタくん誕生!(君はハリモグラ…なのか?)

死出のCD

先日の葬儀で、棺に眠るご遺体を花で埋めるセレモニーの際、故人の好きだった音楽を流していた。79歳で旅立つこの老婦人への選曲は美空ひばりで〈東京ブギウギ〉も流れたが「やっぱり笠置シヅ子の方がうまい」と思った。

一緒に参列する兄に「私のときはワーグナーの〈ワルキューレ〉がいいな」と言ったのは、私という自己完結な闘争に明け暮れた者の退場に相応しいと思ったからだ。しかし家に帰ってよくよく考えてみると、現世で死んだ戦士が戦乙女(ワルキューレ)の選別でヴァルハラ護衛の兵士に再雇用される無限の帰属関係はまっぴら御免なので、この選曲は却下した。

(死出虫ではなくカメムシ)
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花粉が入らないよう閉め切った部屋に何処からか侵入した虫は「これは出棺にぴったりだろう」と聴いていたCD『ロシア未来派音楽』の上でお散歩。この中で特に葬式向きだと思うのはグネーシン〈彷徨える兵士の歌〉だ。死後もさまよえる自由を我等に!

荼毘とデカビタ

つい3日前は気温30度の地域にいたのに、冷たい雨の降る八王子で革靴を濡らしている不思議。ここに来たのは親類の葬儀に参列するためである。
大きな雨粒で喪服の肩をビタビタと光らせた参列者たちが斎場に集まり着座すると、紫色の鮮やかな袈裟を着た巨漢僧侶が入場し読経を始めた。リズミカルなパーカッション入り声明は、ワールドミュージックのような祝祭のノリもあり、後半の南妙法蓮華経ルフランはミニマル音楽みたいだった。とにかく巨体から発せられるテノールの響きがとても美しい。

仏様を荼毘に付してる(骨を焼いてる)間の控室で、私は巨漢僧侶に「素晴らしい読経でした。芸術ですね!」と話しかけ、それをきっかけに色々な話し(私と同じく僧侶は夜学卒業で、仏門入りを逃れ宅配便の配達員をしてる兄がいる等)をお喋りした。通夜/告別式/初七日を1日に凝縮した式が終わり、僧侶は去り際に「じゃあ、また!」と笑顔で私に挨拶をしたのだった。

「また」とはいつか?
私の葬式の時だったら私は南無阿弥陀仏グループなので呼べない。

(忌中払い)
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デカビタを愛飲してた故人を偲び、献杯のグラスにデカビタが注がれた。(食前に口中を支配するデカビタ味)

シャンパンファイト

私達を乗せた旅客機は赤道を越え3月4日の朝に南半球に到着。着いたその日から毎夜の祝賀会と社交、そしてビエンナーレ開幕行事の一つであるトーク会など6日間に及ぶミッションを完遂し、我々は日曜夜、羽田空港に帰還し即解散した。

夜の熱烈おもてなしパーティー会場では、給仕係がわんこ蕎麦のように隙あらばグラスにシャンパンを注いでくれるので、私は大層酔っ払ってしまい石のベンチで転けて負傷。昼は広大な街を散策し、足の親指にキドニービーンズそっくりの巨大血豆ができた。大英帝国の栄華が凝縮されたような都市シドニーに刻まれた歴史の陰影は濃く、足の傷とともに強い印象を私に残したのだった。

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私の作品はここニューサウスウェールズ州立美術館に展示されてます

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入って右側は18~19世紀の風景画/肖像画/彫刻がびっしりの展示室。左側はモダンアート。地上2階に現代美術、そして地階1に伝統工芸、地階2にビエンナーレ展示室 (ゲップが出そうなほど充実の展示がなんと見物無料!)

あっさり抽象画コーナー(1階左)で休憩中
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シャンパン飲過ぎを反省する反ミニマリスト

シドニーへ

9日より開幕のシドニー・ビエンナーレ関連行事に参加するため明日東京を発ちます。英語がちんぷんかんぷん/関所を無事通過できるか/迷子にならないか/連日のパーティー大丈夫か?など不安だらけですが、仲間2名が同伴してくれるので心強いです。
本当は美術館より戦争遺跡が好きな私だが、シドニー湾要塞と甲標的(部分)の見物は諦めて美術界の社交に専念だ!

「The 24th Biennale of Sydney – Ten Thousand Suns」2024年3月9日ー6月10日
会場:ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館

https://www.biennaleofsydney.art/