日別アーカイブ: 2024年7月3日

悪魔の法律(2)

5月29日に最高裁判所で、旧優生保護法の被害者による弁論を傍聴しましたが、今日の午後3時に「違憲」の判決が下され、国への賠償請求が認められました。
除斥期間を盾に退けてきた国の卑怯な態度に、消しゴムを投げつけたくなる衝動にかられたが、この最高裁の判決に司法の良心を少しは感じた。(でもこれで終わりではない)

旧優生保護法は48年間。それに先駆けて執行された断種法《国民優生法》。1940年、新体制のもとで成立した民族浄化の悪法は「ナチスドイツをロールモデルにしてた時代だったからしょうがない」と思われがちだが一概にそうとは言えない。優生思想を啓蒙し続けた歴史を私の自主研究(古本コレクション)からご紹介しよう。

断種法のキーパーソン・永井潜
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オッペンハイマーが博士号を取得したドイツの超名門大学・ゲッティンゲン大学で生理学を学んだ永井潜は、日本における優生思想の主導者。
この大正5年刊行『生物学と哲学との境』は冒頭10ページが、ドイツの恩師に宛てた熱烈なラブレターで、科学よりも私情の迸りを感じる…。戦後も優生思想の書籍を数多く出版。

怒りのメモ「美しいことを夢見て 醜いことをする」
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雑草=不良な国民とその遺伝子、というのが定義だ。
〈淘汰の篩(ふるい)〉〈民族の花園〉〈血は最高の装飾〉などのパワーワードを連発する博士。その人に法律(国民優生法)の骨子をまとめさせた日本国。

(参考資料)1940年、国民優生法の意義を語る永井博士
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白樺派と大正デモクラシーの意外な一面!
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大正10年に創刊された『文化生活』は、森本厚吉/有島武郎/吉野作造が主宰する社会の改善を目的とした雑誌。創刊号には永井潜もエッセイ「優生雑話」寄稿しており、遺伝をコントロールする重要性を説いてる。
国家の構成=国民の数や質を合理的にデザインすることが、すなわち社会の幸福である。そんな上から目線の善意が透けて見える〈貧乏退治号〉も!

優生運動のイニシアチブ
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誰が第一人者になるか?名乗り出た一人にジャーナリストの池田林儀がいる。「精神主義の社会運動」を掲げ、修養や養成など後天的な変革を唱えた。「不良品の根絶やし」を目指す永井潜よりまともだけど、勝者は永井博士。

昭和8年刊行『プロレタリア産児制限法』無産者産児制限同盟という組織の出した恐ろしい表紙の本。…内容はいわゆる「家族計画」の方法。