やさしい奇跡

(ランド執務室に於ける秘密裏の酒宴、その朝に) アルコールの影響なのか変な夢を見た。どこかの劇場の後列座席で、あまり興味のないイタリアンオペラを鑑賞していると、通路前方から見覚えのある白人男性が歩いてきた。薄いピンク色の微妙な感じのシャツに白いジーパン、キラキラした鋲のついたベストを着用した死んだはずのペーター・ホフマンは、空席を探すように悠然とあたりを見回してから私の隣に座った。「こんな近くに憧れのスターが!」ありえない状況に興奮した私は不躾にも彼に話しかけてしまった。「あなたのパルジファル、ジークムント、ローエングリンが好きです」私のデタラメな英語にもローエングリンそのままの優しい微笑みで頷いたホフマンは、ポケットから白くて小さい小鳥の卵を数個取り出し私の手のひらにそっと乗せた。手品のような奇跡に呆気にとられたまま幸福感で目が覚めた。( TCAA展が始まって1ヶ月ほど経ってようやく悪夢から解放されたのだ)

スターの休日ファッション
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蝶が乱舞する素敵なシャツを着たこのドイツ人がヘルデンテノールのスター、ペーター・ホフマンその人だ