皿の夢

妄念に惑わされることなく無心に熟されてきた絵付け仕事の結果であろう、古伊万里に描かれた景物は、山=三角、帆掛船=四角、渡鳥=V字、海=横線など記号の如き進化を見せ、景物記号は古来からの様式に慣い配置され略式山水画と成す。少ない要素がかえって想像を生む余白となり、ちゃんと景勝に見えるから不思議だ。このような職人による積年の伝言ゲームの妙と、風景の夢幻境を湛えた皿宇宙を、有金を叩いてでも支配したいという願望が私にはあるが、陶器は嵩があって蒐集しても仕舞う茶箪笥が無いので、ヤフオクで見ても購入せず我慢している(絵葉書やノートゲルトみたいにペラペラならいいのに…)。そんな充足せざる夢が原因でこんな変な夢を見た。

畳敷きの部屋で女達がせわしなく食事の支度をしている。料理を盛った皿が三台の四角い座卓の上に何枚も並べられていく様を、霊体の私は空中に浮遊しながら眺めていたが、痺れを切らして女達の頭上でこう囁いた「料理が邪魔でお皿が見えない…。早く料理を食べてお皿の絵を見せなさい!」

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