美術鑑賞!

「う”〜暑いっ、今日は外出無理!」と連日の猛暑に気力を奪われ、見に行こうと決めていた美術館の展示を先延ばしにしていたら、いつの間に最終日目前…これはイカン!今日は曇り時々雨という絶好のお出掛け日和、そそくさと行って参りました〜。
久しぶりの美術館です。東京近代美術館の『現代美術のハードコアは じつは世界の宝である展』とワタリウム美術館の『ルドルフ・シュタイナー展~天使の国~』の二軒をハシゴで観てきました。
近美の『ハードコア展』はチラシのアクロバティックなヨガポーズをとる黄金色のケイト・モスに度肝を抜かれ、どんなイロモノ(失礼!)が陳列されるのか?と見当違いの予想をしてしまいましたが、何をいわんや流石はサザビーズでウン億円と値がつく名品ばかりで、本当に充実した展示でした。恐るべしヤゲオコレクション!(美術館で買う、を前提に観るのも面白い)
新発見というか自分が知らなかっただけですが。最初の会場に数点展示されてた「サンユウ(常玉)」というヨーロッパで活躍した四川生まれの作家の絵画がとても気に入りました。無為なようにみえる筆致に凄いセンスがあって、とにかくスコッとした間がいい!抑えた色彩とエナメル質の表面が心地よいです。「アヒルとボート」はいつまでもボンヤリ眺めたくなる絵です。
そして、この展覧会で最高だったのは最近めっきりお目にかからなくなったドイツ作家の作品が観れたこと。「記憶」と題された一室で偉大なるドイツのマイスター、ゲオルグ・バゼリッツとアンゼルム・キーファーが展示されてました〜。今日ここで観れると思ってなかったので嬉しい!感涙モノです。90年代には美術館でキーファーの個展が開催され、バゼリッツもアートフェアなどに出品していて「こんな荒々しい精神的な作品があるのか…」といたく感動したものです。バゼリッツの「オレンジを食べる人」とキーファーの「君の金色の髪マルガレーテ」が対面する中間の椅子に腰掛け至福のひとときです!「〜マルガレーテ」はパウル・ツェランの「死のフーガ」という詩をもとにした作品で、息苦しく重たい灰色と小さな炎を点しながら立ちのぼる藁が画面を占領してます。「死のフーガ」の一節「もっと暗くヴァイオリンを鳴らせ、そうすればおまえらは煙となって宙へ立ちのぼる、そうすればおまえらは雲の中にも墓を持てる、そこなら寝るのに狭くない」。大量虐殺と残された大量の毛髪の山…以前見たホロコーストの資料写真と重たい灰色に塗り込められた藁が重なります。
…近代美術館は収蔵作品の展示がいつも楽しみです。近年は美術史のなかの「戦時期」に重点が置かれて戦争画もしっかり展示されてます。今日は戦時下のアニメ「動物となり組」がキョワいーかった!こんな時だからこそ隣近所で連携してがんばろう!という教育アニメで、擬人化した動物庶民が大活躍なのですが、キャラクターが怖っ可愛い、すなわちキョワイい!笑えました。
太平洋戦争期の5年半に焦点をあてた企画もよかったです。学生時代に好きだった木版画家、恩地孝四郎の作品も何点かあって、戦中は版画で報国する団体「日本版画奉仕会会長」で戦後は進駐軍に版画を売って稼いだという流れがわかり、世渡り上手な一面になんかガッカリ…。そういえば「国民優生法」も恩地は支持してたもんな〜。権力の意向に添うのが第一人者になるヒケツかな?(萩原朔太郎サマの肖像画に憤慨!ハゲでシワシワ。詩集・氷島のイメージだとしても枯れてもなお美しい姿がこれでは哀れです!)
ワタリウム美術館の『シュタイナー展』は今日が最終日でした。パスポートチケットも無意味。でも2回は来ないかな〜。十代の時、図書館でシュタイナーの作品集を初めて見たときの「????!!!!!」の衝撃!モノクロ写真でシュタイナーの仕事を紹介する本でしたが、聖堂ゲーテアヌムの異様に重厚な有機的造形に「アウトサイダーの建築かな?」というのが第一印象。黒板ドローイングや解説で、どうやら先生らしいということが分かりましたが、その文章でさらに「?????」に陥りました。しかし当時はウィリアム・ブレイクの「神曲」などが好きだったのでシュタイナーの神秘的な論理などサッパリ?でしたが、造形はハマりました。…その過去のギョっとした体験から比べると、この展示はインパクトが小さかったかな〜。シュタイナーの神秘☆コズミックな広がりに対して縦長空間が狭すぎる感じでした。しょうがないか。

最終日滑り込みでしたが、どうにか美術鑑賞できて満足な一日でした。帰り道、多摩川の花火大会の音の方角を見ると、民家の屋根のあいだから花火が見えたので、「もしかしたら」と思って我が家の物干し台に登ってみたら、ドンという轟音とともに花火の頭頂部だけが光って見えました。
13年近くも住んでいるのに今まで気づきませんでした。。。そんな事もあるんですね。

quinn
巨大化したセレブリティ!!マーク・クインの作品(近代美術館の前庭)

gb
こちらはバゼリッツの版画集とキーファー「世界智への道シリーズ」の画集。
木版画もとても素晴らしいです。キーファーの木版画は幅6m近い作品もあります。デカい!