「けこぼ坂上で下車だ」と、バス車内の電光掲示板と車窓を注視していたのにうっかり見落とし通過…終点の目黒駅ひとつ前の「権之助坂」まで来ちゃった。
目的の青山目黒からずいぶん離れてしまい「どうしようかな」と、炎天下の路上で目を泳がせていると、目黒区美術館のポスターが見えた。
「武井武雄展をやってるのか」と、絵本でみた左右非対称のこわい顔を想い出しちょっと気が引けたけど、偶然(失敗して)近くまで来たので観ることにした。『地上の祭』という不気味で素晴らしい銅版画の本は、原画ではなく資料写真の展示で残念だった。
それから徒歩で大小の坂を上り下りして青山目黒に着いた。巷で大評判の展覧会〈なくなる〉を楽しく拝見。言葉のセンスに斬り殺されそうになったが、青山さんが作品の紙をくれたので生き返り、ホクホクした気分で帰りも行きと同じ路線のバスを待つ。
「パクチーを買って帰ろう」と、乗ったバスは私の町を迂回して隣の町に着いた(また失敗)。売切れのパクチー以外の買い物を抱え、谷山浩子の『地上の星座』という寂しい歌を歌いながら夜道をトボトボと歩いてたが、スマホが発する大音量のアラートに驚かされ立ち止まる。
震度3の地震は私の知らない間に地上を通過した。バスは目的地を2度通過した。合計3度も通過した1日だった。