極北を目指せ!

(註:町田選手が引退表明する前に書いたので、内容にズレがありますがご容赦のほどを…)

「僕の心を込めた作品を皆さんにお届けします。」…今シーズン、町田樹選手が発していたこのコメントに、私は少しばかり不安を感じていた。氷上の哲学者と呼ばれ「町田語録」が注目されるようになると、彼の演技すべき舞台は氷上の外に拡大し、「皆さん」の期待する「町田樹」に徹しようとするその姿勢は、言葉を慎重に選びながら語るインタヴューでも見て取れてちょっと辛かった。昨晩の日本選手権のフリープログラム「第九」の演技は、自らが課したテーマ『シンフォニック・スケーティングの極北』の完成にはちょっと遠いものだった。結果は小塚選手にも抜かれて4位(小塚君の渾身の演技に意地を見た!低身長で苦しんでた宇野君も背が伸びて安心した)。そしてこのまま「極北」へ向かう強度が保てるか疑わしい試合後のコメント「悔いはないです…僕のすべてを詰め込んだつもりです」…本人が満足してないことは傍目から見ても明らかなのに、どうしてこうポジティブに取り繕うのか?極北を標榜する人物としては厳しさの欠いた甘さを感じた。

彼の愛読書が「ヘーゲル美学講義」だということが取り沙汰されて以来、氷上の哲学者とネーミングされるようになったのだが、もちろん哲学書を読んだからといって哲学者になれる訳ではないし、哲学者になる必要もない。(美学講義はヘーゲルが書いた本ではないし。私は未読…)この著書の言葉から「スポーツと芸術の融合の可能性」を見いだしたそうだが、では美学的に芸術を至上のものとして、その至上の産物は誰に還元すべきなのか?という問いに、たぶん今の彼なら「皆さん=観客」と答えるんだろうな。お客様は神様です!そう、芸術至上といいつつ「神」という概念を頂上に戴いてる以上、芸術は至上ではない。
マジで極北を目指すのなら、概念観念を蹴散らして、故ヘーゲル御大に不敬で失礼な態度をとった非道徳の旗手、シュティルナーやニーチェを是非読んで欲しいな。そしたら「皆さんのため」なんて安っちい目標の向こう側が見えてくる(筈?)。皆さんから愛されなくなるリスクは高いが、愛読書に加えてみたら如何かな?…死物狂いの戦士は、殺すか殺されるか常にその瀬戸際にある。死ぬか生きるかの状況で「どう見られているか」と悠長に考えるヒマは無い。がんばれタツキ君!!極北のスケーターを目指してくれ〜!

2014-12-28 16.59.36
引退後の振付け師・町田樹も楽しみですが、
今は町田選手として死力を尽くして欲しい!がんばれタツキ君

☆悲報ー!!!!!!☆
たった今はいった速報。町田選手、突然リンク上で引退表明・・・!
ショックです〜。次の試合の代表入りも決定したのに辞退したそうです。
引退を決めていたなら、なおさら日本代表の試合はまとめてもらいたかった。
☆追記☆
「悔いはない」ってそういう意味だったのか〜しかし世界選手権に出場して有終の美を飾って欲しかった!もう進路が決まってモチベーションが続かないという理由での、シーズン途中の引退ならもったいない。最後の最後に死物狂いの舞いが見たかった!残念…。引退後の進路も「振付師」と言ってたのに、早稲田の大学院で「研究者」を目指すなんて!芸術家の夢は諦めて転向か〜。
もう信じられん。この心のスキマをなんで埋めようか?!