恐怖の猶予期間

「痛みますか?」「いたくないれふ〜こわいんれふっ!!!」という応答を繰り返しながら約20分、口内でペンチを揮った歯医者の渾身の力もむなしく「腐っているうえに、ネジ曲がってる」という理由で抜歯を断念!腐っているうえに曲がってるのが根性でなくて何よりだったのですが、結局でっかい病院に行って切開手術にてほじくり出さなければならず、この恐怖と不安に余計な猶予期間が与えられました。
歯医者さんから紹介された大病院「国立東京医療センター」には、かつて国立第二病院だった時代に何度か入院してお世話になった思い出がありますが、ここでの衝撃体験は、地獄の絵師 =日野日出志作品との出会いです。中一の頃ナゾの目眩で入院した時に、小児病棟の談話室の本棚にそれらは並んでました。蔵六の奇病、毒虫小僧、わたしの赤ちゃん、地獄変…代表作が5〜6冊あったように記憶しています。日野漫画を読んだことのある方ならお分かりでしょう、これらの作品は病気の子供が読む本として最も不適切な漫画であるということを!…奇病で村八分になる男、育児放棄された奇形の少年などの物語は、健康な児童なら絵空事のホラーで済まされるものが、ここ小児病棟では、より現実に符合し居たたまれない内容となるのです。
この談話室の本棚というのは、入院中に読み終わった本を退院時に納め、また次の患者が読める。という便利なコーナーなのですが、その時はこれと「釣りキチ三平」しか漫画はなくて、貪るように日野日出志を読みました。簡単に禁忌をやぶるその強烈な作風に「漫画は自由でいいな!」と感動したものです。この本の持ち主だったイカした(イカれた)病児は、元気な大人に成長してるでしょうか?私は今でも日野日出志を教えてくれた病気の児童に、感謝と尊敬の念を持ち続けております。

2015-05-08 21.36.56
ショッキング劇場ショッキング劇場と二度記さなければならない恐怖!
『恐怖!!ブタの町』日野日出志(1985年 ひばり書房)