退化の図像

最近の科学番組の恐竜登場場面は、CG映像があまりにも真に迫ってるため、それを見た子供が実写映像と勘違いし「これは本物じゃないよ」と説明するのが大変、という親御さんの声を耳にした。ならば、本日ご紹介する雑誌「科学の世界」(昭和23年発行)など読ませたらいかがだろうか?この学術雑誌のマンモス画の曖昧さには、子供の想像力を伸ばす余地がふんだんに用意されている。氷河時代のことなど空想半分の仮説すぎない、と言わんばかりの画風は、可能な限り現実味をつけようとする博物画へ対抗するかのように退化のム—ドを感じる。

〈科学の世界/1948.第3巻.第9号〉
世界科学探検物語第5回「マンモスの冷凍化石」より
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「象の親類筋」ダイノテリアム
「氷河時代には絶滅してしまった」とあり、その眼差しは心なしか悲し気。

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氷河時代にはサイもいたという

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私には人間同士のケンカをマンモスが楽しげに観戦しているように見えるが、本文によると「旧石器時代の人々は、お粗末ながらおとしあなを工夫し、これでマンモスを捕え大勢よってたかって殺し、肉をみんなで食べたものらしい」という場面が描かれてるらしい。

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彫刻家とその助手を描いたように見えるこの絵は「それ(マンモスの屍体)がみえる少し手前から、いやはや、なんともいいえない臭気がフ°—ンと、極北の清い空気にただよっていた…」という「発掘現場」を再現したものらしい。