月別アーカイブ: 2024年9月

総括『虎に翼』

モデルとなった三淵嘉子さんが実際はどんな人物かは知りませんが、『虎に翼』で描かれたヒロイン像が最終的に「寛容な態度だけど、じつは狭量な似非ヒューマニスト」みたいになってしまったのは至極残念でした。

中盤から「視聴者のこっちが〈はて?〉だよ!」と腑に落ちない場面が多く、終盤でも〈はて?〉頻出。
特に変だったのは、少年法改正の会議で意見した部下が寅子に「立場をわきまえず意見して申し訳ございませんでした。」と謝罪すると「いいのよ。正しくない意見でも最後に判断するのは私だから。」というセリフ。え?せっかく勇気を出して発言したのに〈正しくない〉と決めつけて聞いてるのか!すごい傲慢…。物分かりの良いサッパリした上司風の態度が余計に怖いし。

随所にこのような傲慢さが散見され、結局のところブルジョワ家庭のエリート族が〈下々に寄り添ってますよ〉という偽善で取り繕ってるように見えてしまった。
少年犯罪の凶悪化のくだりでは、いつものように寅子が猪爪ファミリーを居間に招集し「皆んなが知ってることを教えてちょうだい」と巷の非行少年に関する情報を募る(いや現場で見てきなよ…)。この定番の家族会議シーンは、小ちゃい民主主義ごっこを見せられてるみたいで正直げんなりです。

女性の社会進出は「地獄」と大袈裟に表現してきて、現実の(人間社会の)地獄からは敢えて目を逸らすのが寅子のスタンスか?
例えば、少年ライフル魔事件と永山事件。真逆の放任家庭が生み出した地獄とか、戦後の時代を象徴する殺人事件を拾い損なって、死刑の問題にも触れず、ふっとお疲れ顔をして「大変だわ…」で済んじゃった!

また、大きなテーマとして原爆被害者の訴訟も扱ったけど、判決文で国側の非を認めつつ結局は棄却。史実なので仕方ないが、司法の正義を示した画期的な判決、という見せ方に疑問が…。
泥を被らない、責任を回避する判決で、その後もズルズルと裁判が続く地獄。原告が力尽きて諦めるか、老いて亡くなるのを待ってるように私には思えます。弱い立場の人が裁判に人生を費やさねばならない残酷さ。原爆も公害も旧優生保護法も冤罪の再審も…

明日はいよいよ最終回。大円団に向かいそうなムードの今日「法律は万人が幸福な人生を送るための舟だと思います。」と寅子が言った。裁判制度のせいで人生を棒に振る人もいるのに?随分と楽観的だなぁと。まあ最後の一回、ちゃんと見ます。

鎌田慧セレクション第1巻『冤罪を追う』皓星社より発売
IMG_0443
なんで無限に控訴と上告が可能なのか?再審制度の地獄

本日午後、袴田巌さんに無罪判決。もう終わりにして!もし検察が控訴したら…私は呪詛するよ。

夏痩せの逆を行く夏(おそらく終了)

「今週末に暑さ終了」という噂は本当か?
この夏の殺人的暑さを言い訳にして大いに怠けまくり、そのせいで手付かずの仕事と体脂肪を大いに増やしてしまった!やる気は減退するのに、食欲は減退しないのは何故だろう?私のために料理をしてくれる私が、ビールもどき飲料と安ワインにピッタリの晩ごはんを用意してくれましたよ。

IMG_0517
キノコ/ツナ/アンチョビ/ケッパー/ブラックオリーブ/ドライトマトにパセリとニンニクと唐辛子を大量に。好きな食材をおもいっきり投入パスタ。

IMG_0572
お好み焼きにチーズたっぷり(半分は翌日の昼食)

IMG_0513グリーンカレー、この日は素麺で。

IMG_0447
トムヤムクン炒飯

IMG_0338
甘唐辛子と茄子と厚揚げ味噌炒め

IMG_0236
ラタトゥユとクスクス

IMG_0194
ゴーヤとキムチのチーズチヂミ

IMG_0515
(おやつ)
★眩しくて忙しないインスタ世界の発信、まだ頑張って続いてます。見ることが可能な方は是非見てね!

虎に翼にモヤモヤ

バーチャル神田で戦前の雰囲気を醸し出し、市井の人々の姿も描写してたので「良いドラマになりそう!」と大きな期待を寄せた『虎に翼』だったが、戦中辺りからすっかり心が離れてしまった!「はて?」と腑に落ちない箇所が多すぎてモヤモヤ…こんなかんじに↓

●体裁の為に結婚した寅子を戦後もずっと許さないヨネ●お父さんが娘婿の戦病死を半年間も隠蔽●親切心で家庭教師の仕事を紹介してくれた恩師に対し「はて?法曹界に導いたのは先生ですよね?」と怒り心頭。ずっと根に持つ寅子●日本人になったヒャンちゃん、何故か寅子に塩対応●戦災孤児の不良リーダーを自宅で保護。「道男」「ともこ」と馴れ馴れしく呼び捨て合う仲に。それから猪爪家にパラサイト●甘味処を継ぐことになった梅子。店主夫妻に伺いを立てることなく、甘味処で道男の寿司を提供することを独断で即決●問題が起きる度にすぐ「ごめんなさい」と頭を下げる寅子。他の登場人物も同様に「ごめんなさい」を連発(変に神妙な謝罪で何だか白々しい)などなど…。

最初こそ世相を意識したドラマだったが、中盤から外の世界が無い内輪な〈室内劇〉になってしまって超がっかり。LGBTQ/夫婦別姓/更年期障害/認知症など今風な問題も取ってつけた感が否めず…

昨日の回では1969年の東大安田講堂事件が取り上げられ「若者達の社会に対する不満が爆発」みたいなナレーションにも違和感。で、もうそんな時代?というか安保もベトナム戦争も永山事件もスルーして69年に来ちゃったのか!
戦後の復興から高度成長期へ。光と影のコントラストが強まる時代の影の部分を象徴する少年犯罪が永山事件だと思う。家裁判事が主人公のドラマとして、少しは(ニュースを見る場面とかで)触れておいた方が良かったのでは?

最終回まであと数日。数々の「はて?」がすっきりするような展開に期待です!

高度成長期の暗い影…青春残酷詩1970
IMG_0505あしべつひろし『狂っちゃいねえぜ』
田所久詩『死刑(リンチ)』
不幸な出自、貧困、差別、無知、思慮の浅さ…無軌道な若者たちが破滅に向かって真っしぐら!つたない絵が救いの無い不条理物語を際立たせる。
1970年刊行のこれらの漫画は、永山事件にインスパイアされたのだろうか?

グーグルに記憶を尋ねて

「パズルみたいで具象でも抽象でもない、アール・ブリュットのようでそうではない絵を描いてる人って誰だっけ?えーっと名前が出てこない…」と記憶力減退が顕著な今日このごろ。私が思いついた解決策は、うろ覚えの絵の似顔絵を描いて写真を撮り、グーグルフォトの検索機能で探してもらうという方法だ。

パズルの寄せ集めみたいな黒い輪郭線にたまに縞々、の似顔絵を描く→検索。
答え「ジャン-デュビュッフェ」でした。
そして新たな謎。じゃあ私がデュビュッフェだと勘違いしてた黒いバサバサした輪郭線の画家の名前は?似顔絵→検索。答え「ビュッフェ」でした。

超便利!しかしこれは似顔絵の再現力が問われる方法だ。試しに他の画家でも検索してみたよ。当たるかな?

「私は誰でしょう?」
IMG_0315
 デュビュッフェ君でした

「では私は誰でしょう?」
IMG_0326ビュッフェさんでした

「あなたは誰のつもり?」
IMG_0332
ロットルフの木版画のつもりでしたが、検索結果は✖️
むしろ枝野幸男氏に似てる。

「あなたは?」
IMG_0334
ヘッケルの木版画を思い出して描いたけど微妙な結果。
棟方志功の二菩薩釈迦十大弟子が検索結果に出てくる。なぜに?

「あなたは?」
IMG_0333
ペヒシュタインの素描のつもりで描いたが全然ダメ。
ていうか、元の記憶が間違いで、ペヒシュタインでなくヘッケルの絵だった!

(ブリュッケの画集より)
IMG_0482
記憶はこの女の子でした。ヘッケル作です。

交通事故と美術の鑑賞

昼食後のコーヒーを飲みながら心静かにCD(ニーチェ歌曲集)を聴いていると、窓の外から「グワシャーン!ガガガがガー」とただならぬ衝撃音が!え何?事故かな…と障子を開けたら、横から自動車に突っ込まれて停車する東急バスの車体が塀越しにあり、オロオロと頭を抱えて右往左往する乗用車運転手の姿が見えた。

「やっぱり人間はピンチに陥ると頭を抱えるんだなぁ」と変な感動を覚えて私は外に飛び出した。そして、運転席側面がベコっと凹んだバス/バンパーがべろっと捲れた自動車/続々と集まる小学生野次馬をしっしと追い払う婦人警官/通行止めをくらった後続車の列を見る。
幸い怪我人は無く、バスの乗客たちはゾロゾロと降りてきて、呑気に壊れた車を見物してるのだった。事故現場には涼しい風が吹き長閑…。

「こんな爽やかな日はお出掛けをしなくちゃ!」とふいに思い立ち、会期終了が迫る須田国太郎展を観に行くことにした。家から世田谷美術館まで徒歩30分でちょうど良い。

「1階は撮影OK!」と受付で撮影を勧められた。 IMG_0410遠慮なく撮影。いい絵たくさん!

IMG_0412ほんと良いよね。イヌワシ

IMG_0427こういう油絵を描きたい。油絵具もってないけど。

IMG_0422めろんとかぼちゃ (訂正: めろんと西瓜でした)

IMG_0430砧公園。こういうどうでもいい風景を描いてみたい。

 

雨に唄えば

雨足とはよく言ったものだ。本当にバタバタと遠くからこちらへ近づいて来るのが足音のようによくわかる。
遠方の台風(のちに熱帯低気圧)から千切れ飛んでくる雨雲の通り道となった我家の上空には、何度も何度も雨雲が来ては去り、時折り不気味な雷鳴も連れてきた。こんな忙しない荒天の日は(たぶん雨音で声が掻き消されるから)家で演歌を存分に歌おう。大声で!

おれは河原の枯れススキ♪同じお前も枯れススキ♪
IMG_0392
藤圭子『人生・昭和を歌う』CD全21曲をフルコーラス!
おとなしい観客の諸君。私の十八番、網走番外地/かえり船/船頭小唄/裏町人生はいかがだったかな?