やっと会えたね…

そういえば「無形文化遺産」というのは何で「無形」という定義がされているのか、よく知りませんでした。Wikiで調べてみたら「後継者に伝承しないと無くなってしまう文化」が無形文化だそうです。へぇ〜そうなんだ!
先週の土曜日に放送していた「第十五回地域伝統芸能まつり」というEテレの番組で、この無形文化財でもある「祭り」を3時間たっぷり堪能しました。冒頭、高市早苗の媚びたっぷりなスピーチがあったので、国粋ちっくな催しかな?と思いきや、そうでもなかったです。のんびりしたテンポの琉球語コント『京太郎(ちょんだらー)』など観るとその異文化ぶりに「沖縄独立」という言葉すら頭によぎります。他にもバレエリュス「春の祭典」を思わせる『御嶽神楽』や、地上6m(本当は12m!)の櫓の上で肩車した二人の男が扮する獅子が、超絶アクロバットを繰り返す『大脇の梯子獅子』や、幾何学的なステップがミステリアスな『杉沢比山』などなど盛りだくさんのプログラムに日本文化の多様性を感じました。

伝承しなければ絶えてしまう、というのが「無形文化」なら音楽はどうなんだろう?そういう疑問が頭に浮かんだのは、納得がいく「バレエ・メカニック」を求めてCDを買い集めた(といっても3枚)ことからです。近代音楽の悪童、作曲家であり文筆家であり発明家のジョージ・アンタイルの怪作「バレエ・メカニック」は、複数台のピアノ(オリジナルでは8台のピアノと自動ピアノ)と色んな打楽器、電子ベルにサイレン、プロペラ(!)が織りなす騒音シンフォニーです。私が死んだら葬式会場で流して欲しいほど大好きな一曲です(夢見る五月蝿い葬式!)。当然何回でも聞きたいのでCDを購入したのですが、一枚目は不発、二枚目は及第点。同タイトルのレジェの映像作品で流れていた音楽の衝撃と、CDの演奏の印象がどうしようもなく離れてる感じでしょうか。
…そして此の程「やっと会えたね」と辻仁成の口説き文句と同じセリフを吐いてしまいそうになるほど、やっと会えた感満たされるCDにやっと会えました!実はこのCD、批評で一番良い評価だったのに3000円を惜しんで買いそびれ、その後アマゾンで3万円近い値段で販売されてるのしか見つからず…。それがヤフオクで600円で落札出来たんです!しかも新品。…おお!評判と違わない素晴らしさにやっと会えた!
演奏者(楽団)によって、こんなにも表現に「差」があるということを実感しました。私は音楽通でないので指揮者やオーケストラの知識が無く、もっぱら作曲家だけでCDを選んでいたのですが(ブックオフでわざわざ仕分けてあるコーナーにイラっとするぐらい)、この件で何となく演奏者の重要性がわかりました。楽譜=スコアだけ残っていても、作曲家の制作した当初のコンセプトや背景を解釈する努力がなければ、その曲本来の持ち味を発揮させる事が出来ないんだな〜と。
また、その情報とニュアンスをいかに楽団内で共有できるか、今さら音楽の再現という仕事の凄さに気づきました。「型」を伝承する「無形文化」以上に困難な作業。そこにはスコアを正しく読み、演奏することに加えて、教養と知識、そして感性が必要であるということ。それを実証する「アンサンブル・モデルン」の演奏技術には説得力があります。(彼等はフランク・ザッパのラストアルバム「イエロー・シャーク」の演奏を担当。ほぉ〜そうか!ってザッパもビーフハーツもちゃんと聴いたことは無いのです。)

2015-03-14 14.13.02
なるほど自然の驚異に比べ人間の力(お餅をつく力など!)は無力だ。
その事実を否が応にも突きつけてくる大道具の背景画は、ロマン主義のそれである。
(NHK「第十五回地域伝統芸能まつり」江差餅つき囃子より)

2015-03-16 20.55.56
一枚目:『ピアノ+パーカッション』バイノフ・ピアノアンサンブル演奏
F・ラング教授の生徒達による演奏は生硬くてノロい…。
二枚目:『アメリカン・クラシックス/ジョージ・アンタイル』NAXOS盤
パリでは評判を呼び、カーネギーホールでは不評だった「バレエ・メカニック」の演奏。
これを「アメリカン・クラシック」と括るのには抵抗があるな。
三枚目:『ファイティング・ザ・ウェイブス』アンサンブル・モデルン演奏
拡大解釈しすぎだ、と言われるかもしれないほど挑戦的な演奏。それでイイと思う!

….以上、黒熊選曲家協会会長、DJ 黒太郎氏談。(黄色のベレー帽が氏である)