山本画伯の排水孔

下絵を描いて、コピー屋で拡大して、コピー用紙と版木の間にカーボン紙を挟んでなぞって転写して、彫って刷ってパネル装して…と木版画は手順が多くて面倒くさい事この上ないので、たまにはペインティングにでも手を出してみるか?と思いつつ実行に移せないので、気休めに油絵を入手しました。ヤフオクで。
流線型機関車C53形が描かれている風景画は、私の嗜好を満足させる要素を備えた逸品です。画面を斜めに横切るパースに、機関車、松の木、架線、土手、波打ち際などが誠実な筆致で描かれてますが、遠近法を重視せず、手前も奥も同じ調子のタッチで描いてしまった作者、J . 山本氏の技巧に共感を覚えます。この絵には、描きたいものに気を取られて全体が見えなくなり、最終的に「どこを一番見せたかったのか?」と焦点がボヤけてしまう当方の作品と通じる落とし穴が存在してるのです。その共感も加わり、この流線型機関車の油絵を凝視する毎日です…特に排水孔! J . 山本氏が注視し描写した一つの穴は、のっぺりとした土手に黒々と穿たれ、時空をも貫通し、こちらを凝視してるが如くです。

2015-04-07 02.07.38
競り合って3,639円(額縁込み)で落札!作家は J. 山本。
機関車C53が流線型に改造され活躍したのが1934〜1937年。その頃の作品かな?

2015-04-15 15.46.33
小柄すぎる蒼褪めた機関士は、たぶんこの世の人間ではない。

2015-04-15 15.49.54
チョロチョロと流れ出す写実的な排水。

2015-04-15 15.41.17
新入生を歓迎する流線型先輩