作成者別アーカイブ: 風間 サチコ

キメラ漢字

87年前の一昨日27日。詩人・石川善助は酔っぱらって大森駅西口の側溝に落ちて死んだ。私はすっかりこれを忘れてしまい、龍子記念館からほど近い善助落命の地に寄らずに帰ってしまった。
先日龍子記念館を見学し、大森から自宅までの10km(徒歩2時間)の帰路を体錬歩行しようとしたが蒸し暑いので途中で断念。事前に散策の計画を立ていれば、気温湿度に関係なく鎧懸松下坂近辺に側溝跡を探し手を合わせ冥福を祈ったのだが…。
そしてその道すがら緑道公園でこのような看板を見た。立て看には「公◯衛生上害になる行為はしないで下さい近隣の住民が大変迷惑しています トイレ→」と池上警察署から緑道で排泄をする不届者に対する牽制が書かれている。しかし、かつてこの一帯が文士の集う格調高い地域であったことが反映されてるのか、立ちションへの警告は遠回しな表現で、筆致は遠慮がちであり漢字には見たことのない形のものがある。

〈キメラ漢字〉
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公衆の衆と思しき漢字は、象61%:衆39%と象が優勢な嵌合体。
(迷惑の惑は点が不足) 矢印の指す方向のトイレは未確認である。

(武蔵美油絵科)生徒諸君!

昨夜は友人と二人で上海料理の食べ飲み放題に挑戦。腹がはち切れんばかりに暴飲暴食した挙句、友人宅に上がり込み朝まで飲酒し、短時間仮眠したのち歩いて帰宅。通勤ラッシュの電車に乗る根性もなく、駅に向かう勤労者の列と逆行し、脱げやすい靴をしきりに履き直しながら(途中諦めて半分脱げたまま)だらしなく歩く中年の姿は、青少年のお手本にはなり得ないものである。

(このような私がなんと)明後日、武蔵野美術大学油絵科で講義をします。出身校の武蔵野美術学園が消失した今、武蔵美親分の大学に招かれるのは幸甚の至です。講演の題目は『白い紙に黒い世界を喚び起こせ!』で、なんだか黒魔術的であるけどちゃんと美術の話をするのでご心配なく。
講義後は油絵科の先生、研究室職員、生徒有志皆様との懇親会が予定されてるので、私は休肝日2日を設け内臓を休ませる。そしてその間まじめに原稿及び画像の準備をし講義に臨む所存だよ。学生諸君のご出席を願う!

油絵科の皆様よろしくお願いいたします!
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何故かざまランドに油絵科研究室の定規があるのか不明。

爆弾散華の池

沖縄慰霊の日は(忘れないように)全国的に休日にすればいいと思う、今日6月23日はたまたま日曜日。前々から気になっていた大田区大森にある龍子記念館に本日やっと行くことが叶い、隣接する龍子公園も見学できました。
日曜の午後だというのに見学者は私一人しかおらず、庭園案内係の男性からマンツーマンで説明していただきました。厳選された植物、石、巨大石塔などで構成された庭の緑陰の向こうには、ハイセンスな日本家屋と60畳もある画室…門をくぐればそこは龍子の美意識宇宙。この龍子宇宙のビッグバーンとも言える〈爆弾散華の池〉は、終戦間際の1945年8月13日、旧家屋が空爆の直撃を受けて大破し、そこに空いた穴を利用して造成した池だという。ここから発生する蚊の軍団は、蚊取線香の煙幕をもろともせず見学者を襲来し、私も顔や腕を何箇所かやられました。受付職員がキンカンをすすめてくれたけど、一番かゆい眉毛の上に塗ったら、眉毛のバリケードを容易に越えて目に侵入するキンカン液で、悶絶すること必至なので丁重にお断りしました。

〈爆弾散華の池〉
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コウホネとガマが群生し水面の見えない池。
この米軍の爆撃で使用人の一名が犠牲になったという。

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隙の無いモダンな意匠と高級建築材が目を奪う美しい建造物は〈絵筆一管〉の努力の賜物と言える。

(爆弾散華/龍巻/獺祭など20点展示中)
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私の好きな絵『爆弾散華』は、池誕生の由来である爆撃の印象を描いた作品。

大田区立龍子記念館
「インスピレーションズ 龍子作品の源流」
〜7月15日まで 入館料200円 (安い!)

彩管報告

下北沢トーク会にご参加の皆様、2時間に及ぶ対談を御清聴くださり誠にありがとうございました。終了間際に林洋子さんが発せられた「有便堂の筆が藤田のフランスのアトリエにあった」という証言により、祖父が商っていた絵筆が海を渡り、パリ郊外に暮らす画伯の手元に届いた可能性が高くなりました。自分とはあまり縁がないと思っていた藤田嗣治と、ほんの僅かですが不思議に繋がりがあることを知り、とても感慨深いです。
トークのために事前に送っていただいた『戦時下に書く』と『旅する画家』を拝読し、私の狭かった藤田嗣治観はだいぶ広がった(ような気がします)。今更ながら昨年のへっぽこ論考〈パリの壁画、そして秋田〉の不出来が悔やまれる…。もし挽回の機会があれば、その時はもっと良い論考を書きたいです。

〈戦争画と私〉
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これは藤田も三点出品した『第二回大東亜戦争美術展』絵葉書集の一枚で、かわいい零戦が幻想的な小堀安雄〈イサベル島沖海戦〉という日本画。おそらくこの戦争画が制作されたであろう、世田谷区深沢の古い画室で、私は幼稚園から小学校まで絵画を学んでいたのだ。

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パリ郊外の小村・ヴィリエ=ル=バクルの古民家に暮らしてた藤田のアトリエの様子(新潮社とんぼの本『旅する画家 藤田嗣治』より)
もしかして卓上の筆立ての中に有便堂の筆があるかも?

彩管報国

〈彩管報国〉の彩管とは絵筆のことで、すなわち「絵筆で国に奉公する」の意です。この言葉は林洋子さんの編著『藤田嗣治 戦時下に書く』で初めて知りました。私の死んだ祖父は、藤田と並んで〈彩管報国〉の双璧を成してた日本画の巨匠・横山大観に画材を届ける仕事をしていたので、間接的に〈彩管報国〉に協力していたのかもしれません。
戦地まで取材に行き戦争画のトップランナーとなった藤田にとって、画室で優雅に富士山ばかり描いていた横山大観はイケ好かない奴だったろうと想像がつきます。藤田はベッチャリと油絵の具を塗った前衛絵画や、富士山を通俗的に描いて稼いでる日本画がもて囃される世間に逆襲しようと、デッサン力を武器に実力勝負する戦争画に燃えたのか?活躍の場を提供してくれる軍部への阿りは、本心というより強かな「手段」のように思えます。そこまでやるか!と呆れつつ、軽薄な風潮を嫌悪する美意識高い系の気持ちもわからなくもないです。
….そんな藤田嗣治をめぐって林洋子さんとお話しするトーク会は、明日20日下北沢[本屋B&B]にて!(席はまだある・木戸銭¥2000/飲み物一杯付き) 是非ご来店くださ〜い。

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太平洋戦争末期の昭和19年。日本画材店「有便堂」店先から出征する祖父。
蘭印作戦に成功したセレベス島での思い出話はノンキなものが多かった。

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左下:座談会記録がハラハラさせる『戦時下に書く』
右下:何処の地に於いても美意識を堅持する『旅する画家』
そして右上:足立元さん最新著書『裏切られた美術』には、語られることの少ない藤田嗣治の漫画について書かれています。

『旅する画家 藤田嗣治』『予感の帝国』W刊行記念トーク
下北沢〈本屋 B&B〉
20日(木) 20:00〜22:00 (¥2000要予約)
〈歴史とアートのこれまでとこれからを考える・戦時下のフジタの活動を通じて〉
文化庁文化調査官でフジタ研究第一人者の林洋子さんと対談します。
詳細コチラ→〈本屋 B&B〉

この石の思い出を見てみよう

珍しく連投されてきた今朝の〈この日の思い出を見てみよう〉は、先日と同じく4年前の青森滞在中の写真で、画像には森林地帯に人為的に置かれた巨石の姿があった。
これは何かというと、ただの石ではなく屋外展示物で彫刻作品である。確か石の裏側にギリシアか北欧の神が、日本の道祖神のように刻まれていたと記憶する。なんの神様だったか?しばらく思い出す努力をしてみたが全く思い出せないので、ACACのHPを検索すると、正解は神様ではなく、11世紀イングランドに実在したゴディバという貴婦人と彼女の馬だった。この人は増税を目論む領主の夫に抗議するために、素っ裸で馬に跨り市街を一周したという。そんなことで消費税アップが止められるなら、日本の主婦のうち数名がこれの真似をするに違いない。

2015年6月17日
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確かに私はこの石を見た。

思い出せフォト

不定期に、しかし必ず朝の8時に送信されてくる恒例の〈この日の思い出を見てみよう〉が今朝もスマホに届き目を覚ます。今回は4年前の今日6月15日の思い出写真で、そこには青森ACACのアトリエ棟と松の切株に集う青虫の姿が写っている。私はボンヤリとはっきりしない目でこれを見て、先日あった出来事を一気に思い出し朝から憂鬱になってしまった。

(どんなことかというと)3日前の午後、買い物に行く途中に、アスファルト路面に親指の先ほどしかない桃色のヒナが落下したのを見たのだが、天を見上げても営巣できそうな場所はないので、おそらくカラスの落し物に違いない。私には為す術もなくまだ息のあるヒナをそのままにし、遺骸を見るのが怖くて帰りは違うルートで帰宅したのであった。
一方で2015年の青森ACAC滞在制作中にも、様々な小動物の死を目の当たりにし、その大部分はこの八甲田山山腹に建てられたアトリエ棟が舞台であった。写真に撮られたフワフワ青虫(蛾の幼虫)のモヘアちゃんを誤って踏んでしまったり、また違うモヘアちゃんはこの巨大建築に錯乱したのか、自分を包む球状の繭を作らず、コンクリート床に生春巻きの皮みたいな変な物体を作り、糸を吐き尽くし剥き出しのまま死んだ。またある日の朝アトリエ棟に向かうと、外の長い廊下にガラス窓に集まった大量の昆虫の死骸とともに、一羽の小鳥の亡骸があった。清掃員のタミエさんによると、夜間飛行中の鳥にはアトリエの大きな板ガラスが見えず激突してしまうのだという。「ここで死ぬ鳥はみんな可愛い鳥だよ」と亡骸の始末をしながら言ったタミエさんの言葉が印象的で、なお一層小鳥の死を悲しいものにさせた。
美しい自然との対比と調和に成功したかのように見える名建築も、小動物にとっては危険な障害物でしかないことを思い出させ、死ぬとわかっても何もできない不甲斐なさに痛打する〈この日の思い出〉通信よ。送り主グーグルフォト様の思惑とはなんなのか?と雨なので外にも行かずに私は静かに考えているのだ。

2015年6月15日
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確かに私は青森にいた。

グラフィック・ビエンナーレ

先週末より中央ヨーロッパの一国であるスロベニアの、舌がもつれそうな名の首都リュブリャナにて開催されている〈第33回グラフィックアート・ビエンナーレ〉に作品を3点出品してます。
武蔵美術学園時代に色々なコンテストに応募し、イラスト(チョイス賞)=落選、GOMESマンガ賞=審査員賞、アーバンなアート(アーバナート賞)=審査員賞/奨励賞という結果を受け、賞を2つくれたアート系の評価を信用して今に至るので、もし当時イラストを褒めてもらえてたらグラフィック界での活路もあったかも?(落選が現実)。
なので、唐突ですがグラフィック・ビエンナーレに招いていただき嬉しいです。願わくばスロベニア出身のメラニア夫人にも是非ご来場いただきたい(会期中に里帰りしないだろうか?)。そして高い木立から獲物を狙う猛禽類のように冷徹な眼差しで『地球のおなら館』を一瞥してほしい。

『平成博2010・地球のおなら館』
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(平成も遠くになりにけり)サポートストッキングのテカテカが懐かしい…

六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト展
『人外交差点』は、日本/オーストラリア/韓国で展示され、スロベニアは4カ国目となる。もう一点『WAR PUP』という穏やかでない作品も出品中!
詳細以下→33rd Biennial of Graphic Arts

【さらに予告!】
旅する画家 藤田嗣治&予感の帝国:W刊行記念トーク

6月20日(火) 20:00〜22:00 (有料¥2000)
下北沢〈本屋 B&B〉に於いてトーク会(サインもする)
*フジタ研究第一人者の林洋子さんと対談します!
詳細以下→〈本屋 B&B〉

あぶさん(居酒屋)

(ドカベンは読んだけど) 1ページも読んだことがない野球漫画『あぶさん』を店名にした居酒屋を四谷で見つけた。主人公あぶさんは酒豪打者で、試合直前に大量の日本酒を飲んでも、ちゃんと打席に立ち結果を出すというから大したものだ。
私も1500ml入り600円の激安チリ産ワインをコップ 2杯飲んでから夜間の仕事に取掛かるが、酒気帯びでも難なく彫刻刀やペンを握ることができるのだ!更にその後、ちゃんと席に座ったまま眠ってしまう確率は、あぶさんの打率より高い(はず)!
私は〈巨人軍を負かしてさえくれたらどのチームでもいい〉ので、巨人贔屓をしない水島先生の作品は大変好感が持てる。しかし『あぶさん』を読んでないので入店資格は無い。

(あぶさんの絵がかっこいい)
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入口に掲げられた多数の写真で、水島新司先生が幾度となく来店した様子がわかる。

Y字郎くん

二週間前に台所の流しで発見した謎の双葉(Y字郎と命名)は、吸水させた不衛生なスポンジに植えてから10日間様子を見ていたが全く成長しないので、芽と根がよく出る液体肥料〈メネデール〉を父から少量分けてもらって、その希釈液を与えることにしました。(栄養分を与えてから4日目)根っこはまだ生えてきませんが、日当たりの良い窓際に置かれているにもかかわらず、さらに日光を求め「くの字」に曲がるという植物らしい貪欲な意志を示すようになりました。

(Y字郎近影)
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私が小学生のころ、母が水と間違えてメネデール希釈液(約200cc)をガブ飲みしてしまう珍事が発生!(コップに入れてテーブルに置いた父が悪い)
(そして)施肥後の母は、それ以上肥えたり身体から新芽や根が出ることもなく平常であった。植物用液体肥料が人間には無効であることが立証された。