作成者別アーカイブ: 風間 サチコ

推薦文(5)絵画者

〜推薦文(5)『絵画者』中村宏〜

絵画の向こうに立つ作者と、こちらで鑑賞する客者。対面する双方が転倒し連動することによって永久運動装置〈タブロー機械〉が稼働するのである。タブロー機械の創造する〈観念リアリズム〉の空間を守備する美しい呪物(物質)、雲・地形・蒸気機関車・セーラー服。地上すれすれを舐め、上空を浮遊するそれらフェティシズムの依代たちは、攻め入る隙のないフォーメーションにて(遠くから近くまで)絶対領域を死守する。
絵画者は不可侵の絶対領域にあって大人物を望まない。絵画[者]だから批評[家]と同じ地平で決闘をしない。たとえ凧のように地上に繋がれようとも、硬質な絵画者の言葉は邪魔な糸をスパっと断ち切ってしまうだろう。口上 .言説 .散文詩…そのすべては、鉱物の劈開に光るエッジのように鋭利である。

(中村先生の呪物とは違う)
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かざまランドの呪物たち (地球儀/砂漠の薔薇/アラゴナイト/fiat2000/ピラミッドサボテン/黒電話)と…
『絵画者』中村宏
美術出版社  2003年発行

(サインをしてもらったのではない)
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あらかじめサインのしてある〈サイン本〉を入手したのだ

推薦文(4)赤色エレジー

〜推薦文(4)『赤色エレジー』〜

親がつけてくれた「幸子」という昭和っぽい名前は、ハタチの頃に、呪術的な由来のある古代言語「サ・チ」の方がカッコいいと思って、漢字幸子を捨てて片仮名サチコにしました。まだ私が幸子だった子供時代に、あがた森魚の『赤色エレジー』を父親の調子っ外れな歌声で聞かされて「幸子の幸は何処にある…」の切ない歌詞から、名前とは裏腹に幸薄い幸子の運命をさとり、まだ世間を知らない幼心にも暗~いワルツの調べが重たかったです。…………
その後、だいぶ大きくなってから原作の漫画『赤色エレジー』を読み、「小梅ちゃん」の林静一が芸術漫画家だと初めて知りました。ヌーベルヴァーグのようなコマ割、詩のような言葉。そして陰影を強調し「描かずとも存在を感じさせる」あの表現!白と黒のコントラストの目映さは、白黒世界の素晴らしいお手本です。

〈現代詩手帖と赤色エレジー〉
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裸電灯 舞踏会 踊りし日々は走馬灯….この美しく儚い歌詞の作者・あがた森魚は現代詩人として高く評価されるべきだと思う。

(本当は)
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当初推薦した漫画本は、杉浦茂シュールへんてこりん傑作集『イエローマン』だったが、絶版で仕入不可能とのことで断念…。永遠に敬畏され続ける杉浦茂先生。その超現実的ナンセンス作品群の粋を集めた良書『イエローマン』をぜひ皆様に読んで頂きたかった!

〈唯一者の漫画!!!〉
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これぞ創造的虚無!概念を破壊する天才よ!
変な顔をした不明の存在が次々登場し、異次元空間に突如放り出されたりするが、変な奴も異空間もお話とは特段関係無く、というより最初からお話は重要ではない。

推薦文(3)唯一者とその所有

〜推薦文(3)『 唯一者とその所有』〜

「僕たちは生まれながらの死産児だ!」この世に生を受け人間社会に放たれたその瞬間から、既成概念という死者に囲まれた日常が始まる…ドストエフスキー著『地下室の手記』の主人公は、長い引きこもり生活のすえに、このセリフを吐き悲嘆したのであった。
自動的に敬わなければならない、国家/宗教/経済/道徳/思想などの概念は、社会生活の便宜上、人間が捏造した存在で、霧に投影されたブロッケンのようなものだ。と、この『唯一者とその所有』には書いてある。「アートは社会のブロッケンに過ぎないのではないか?」という私共の疑問と不満を解消する糸口は、〈俺以外は全て無である〉とアッサリ決め込んだ冒頭の一文と、その俺〈唯一者〉が創造の核であると述べた《創造的虚無》に見出せそうである。

〈楽天的唯物論を超克するエゴイズム!
…….支配の論理に対峙するニヒリズム!〉
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『唯一者とその所有 上/下』
マックス・シュティルナー
片岡啓治: 訳  (現代思潮社  1970年発行)

*銀座蔦屋書店に於ける〈予感の帝国フェア〉は昨日2/28をもって終了しました。わざわざ見にいらしてくださった方々、たまたま目にしたという皆様有難うございました。

推薦文(2) 慈善週間

〜推薦文(2)『慈善週間または七大元素』〜

極めて謎めいたタイトル『慈善週間または七大元素 (小説)』に魅かれて手に入れた古書は、文章を読む小説ではなく、コラージュ作品に編まれた物語を読む作品で、マックス・エルンスト《コラージュ・ロマン》シリーズの三作目でした。巧みに切り貼られた銅版画の陰影と、そこに生じる不気味なぎこちなさは、睡眠時に見る整合性に欠いた映像を想起させ、ページを繰るたびにそれは甦る。……..
七大元素〈泥・水・火・血・黒・視覚・未知〉によって構成された一週間『慈善週間』とは何だろう?理性の昼から解放された不条理の闇。ブルジョア婦人の降霊術。変な夢を見た後ろめたさ…。古雑誌と七大元素の魔術的合成は、慈善家のようなお節介さで無意識を暴露する。〈見える詩〉の断片を繋いだコラージュは、滑稽でおそろしい夢の尻尾をとらえた物語(ロマン)なのです。

『慈善週間または七大元素(小説)』
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マックス・エルンスト
巖谷國士:訳  野中ユリ:装丁
河出書房新社 (1977年発行)

火曜日 元素—火 例—竜の宮廷
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入りたまえと彼は言ったが明かりがつくと誰もノックなどしてはいなかった.
(トリスタン・ツァラ『狼が水を飲むところ』)

推薦文(1)未來のイヴ

今年は閏年でないので2月は28日が最終日。そしてこの日をもって銀座蔦屋書店で展開していた〈予感の帝国:かざまランドフェア〉も終了します。特設コーナーでは作品集『予感の帝国』をはじめ、缶バッヂ/階級ハンコ文字の布袋/サバイバルこけし等が展示販売され、私の推薦図書5種も書下ろし推薦文とともにディスプレイされてました。これらはあと2日後には書架から姿を消すと思われますが「陳列に気がつかなかった」或いは「読むのが億劫」などの理由で未読の諸氏の為に、改めてここに(無理やり読ませる魂胆で) 文章を掲載しま〜す。

〜推薦文(1)『未來のイヴ』〜
人命よりも発明を優先する冷酷な科学者エディソン博士は、唯一恩人と敬う青年貴族エワルド卿の〈恋人が絶世の美女なのに頭が空っぽ〉という深刻な悩みを解決すべく、完全無欠の人造人間「ハダリー」に、恋人の外見をそっくりそのまま複写する計画を実行に移すが…(さて如何に?)。
….究極の知性を持つ高貴な霊体・ソワナを甲冑に宿した機械の貴婦人ハダリーは、目には見えない「無限世界」を雄弁に語り、現世的な「理性」と「常識」を罵倒する。彼女にとって俗世に生きる者、生みの親である博士も(愛するエワルド様ですら!)軽蔑の対象である。元恋人の美貌を完コピしたハダリーが、人間エワルド様のプライドを傷つけて逆上させる場面は最高です!優美な文章に織り込まれた、合理主義に対する痛烈な皮肉と笑い。その先見性は、SF小説の先駆け以上の価値があります。

《 無常ヲ觀ジテ以ッテ永遠ヲ探求セヨ 》
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電氣學者の手は何物かの上に壓しあてられたが、エワルド卿にはそれが何であるか、しかとは見分けがつかなかつた。……..
——ハダリー!(と遂に彼は大聲で叫んだ。)

『未來のイヴ』
ヴィリエ・ド・リラダン
齋藤磯雄 :訳(創元ライブラリ)

ポーランド予習

遠い遠い見知らぬ土地、ワルシャワに渡航するにあたり、私はパスポート更新を済ませ、そしてポーランドの歴史と文化を予習するためにポーランド装甲車図鑑を入手しました。
1930年代、ソ連の次に装甲列車を所有していたポーランド共和国は、自動車を武装改造した装甲車も豊富!この本では第二共和国時代 (1918〜1939年)の素敵な装甲車の数々が、ひどく不鮮明な写真で紹介され、私には読むことのできないポーランド語で解説が書かれています。(暗い写真を見よう)

(最近ヤフオク戦利品)
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装甲車図鑑と恐竜図鑑キーホルダーとポーランド装甲列車ハガキ
鉄板と砲塔で武装した装甲列車は、兵士/兵器/物資などの輸送で活躍したが、軌道上しか移動できないのでレールを破壊されただけで走行不能になり、また恰好の爆撃対象になる長い巨体がたたり(恐竜のように)絶滅。灰色の装甲列車車両が、不気味な流線型列車とともワルシャワ鉄道博物館で屋外展示されているという(が、たぶん見にいく時間がない)。

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魅惑のポンコツ感

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不安感を誘う造形

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伝書鳩を収容する車ではない、側面の方眼は何か?

ディスリンピック津々浦々

昨年の12月下旬に受けた共同通信社によるインタビュー取材の記事は、1月17日付から全国の地方新聞に配信され、北から南に、秋田さきがけ新聞/山形新聞/日本海新聞/茨城新聞/埼玉新聞/千葉日報/信濃毎日新聞/大阪日日新聞/徳島新聞/長崎新聞/沖縄タイムズ…と多数の新聞に掲載されました。
爆笑顔の私とディスリンピック画像の掲載されたその記事には、人間の愚行に憎悪する反面、基本的にトーチカとか戦車の形体が好きなことなどが書かれています。
文中では「トーチカ (コンクリート製の防御陣地)」とカッコ付きで丁寧な注釈がついているので、トーチカ予備知識を得た全国の皆様は、日本各地に残存するコンクリート製の不思議な構造物を見て「これがトーチカか?」と興味を持たれることでしょう。

(行ったことのない見知らぬ土地で)
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掲載された新聞の数は合計11紙!

(時には虚偽のポーズで…)
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『マカロニほうれん荘』に登場しそうなコミカルな風態のカメラマンの要望で、作業机に向かい何か描いているフリをしている私は、過去に「きんどーちゃんに似ている」と言われたことがある。

中年時代は狂王気分で

CDや本を1点づつ揃えず、セットや全集でまとめ買いするのは、中高年に見られる傾向だと思っていましたが、本日(2/19)誕生日を迎え、中年ど真ん中というべき年齢である私も、この購買行動がいよいよ顕著になってきた!今年に入り「サティ作品集CD13枚セット」「ブーレーズ指揮:ニーベルングの指環DVD7枚セット」を立て続けに購入したことは、歳をとるごとに一年が短く感じられるようになり、何かにつけせっかちになった証拠です。
20数年前に生まれて初めて買ったクラシックCDはエリック・サティのピアノ曲集で、付属のミニ本に書かれた、諧謔とエスプリに富んだサティの散文を読んで「こんな立派な変人になりたい!」と夢見たものです。そして、美しい芸術に親しんで暮らしたい、という中学時代からのデカダン願望は、先日届いたバイロイト音楽祭のDVD7枚セットで、ほんのちょっとですが叶いつつあります。狂王ことルートヴィヒ2世がワーグナーに建ててあげた、ワーグナーによるワーグナーのためのバイロイト祝祭劇場で上演された壮大な楽劇は、毎夜かざまランド執務室TVで再生され、この四畳半に神々の黄昏が訪れる夕辺は近い!

ベックリン絵画そっくりの巨大な舞台装置
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(私の好物である) ダム、ベックリンの死の島、製鉄所など、本来の設定とは異なるイメージが素晴らしいセット。神様は19世紀の地主風。ジークフリートはわんぱくオヤジのような風体で、粗暴さばかりが目立ち英雄らしさゼロ。この楽劇全編の鑑賞には15時間近くを要する(私はみた)。

〈誕生日プレゼント有難う〉
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(私の好物である) プンパニッケル/ツナ缶/アボカド

WSの朝に…

〈昨日夢の中で〉小池都知事が差向けた刺客から逃れるために偽装入院 (なぜか吉祥寺の母校が病院) していたが、潜伏場所がバレていよいよ追っ手がそこまで迫って来た。ベットの下に身を隠していたが、これではすぐに見付かってしまうので、裏口から抜け出し西荻窪に向かって逃走する。駅前の雑踏に紛れ「これで大丈夫」と安堵していたら、背後から「風間さんですよね」と声をかけられ振り向くとカジュアルな服装の男が二人…!腕を掴まれ拘束されそうになった刹那、私は周囲の人々に大声で訴えた「私は風間サチコという美術作家です!都知事に拘束されそうになってます!助けてください!ネットで私を検索してください!私は無実です!このような弾圧は許されません!…」必死に叫んでいる場面で枕元のスマホが鳴り、母からの電話でこの悪夢は中断した。

悪夢から救ってくれた朝8時のモーニングコールは、国立新美術館でのワークショップ『ぼんやり階級名刺を作ろう』の仕事に遅刻しないように母に依頼していたもので、おかげで都知事の手下に捕まる前に目を覚まし、約束の時刻に間に合い、無事に講師を務めることができました。

(素晴らしい皆様のぼんやり名刺)
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(12時の位置から時計回りに)
処理済/呑んだくれネコ/ジェラシティガール/ドキュメンタリー/修活中/博士中期課程/マイッカ同盟/水玉作戦/ビギナー/家ぽん族/ケバブ/最速おっとり/あまアシ/めぐろ女子/マイゴ21/MAZIME/兄/策士/ネコトレ/鬼ぐんそう/白髪祭/TANUKI/担当p/住処不定/殺人願望
….実用向きの名刺から実用不向きの名刺まで総数25点の作品ができました!

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味わい深い「白髪祭」と「鬼ぐんそう」は素敵なレディたちの作品(こんな銘柄のお酒がありそう)

凡T(シャツ)販売中!

2/9より開催の森美術館:六本木クロッシング2019に、私が芸名を与えた毒山凡太郎君が参加しています!建築デザイン事務所(だったかな?)に勤務していた見るからにカタギのさわやか青年が、何故こんな浮き草稼業(美術界)に転身を?と初対面のときに受けた不可解な印象から〈毒山凡太郎〉という素晴らしい名前を思いつきました。
普通(=凡)の好青年という外見を、いい意味で裏切る「毒」を持って欲しい…。命名に託した期待通りの活躍を見せ、この度いよいよクロッシングという大舞台に登場!これを祝しTシャツ用文字を作って毒山君にプレゼントしました。この文字使用の不穏なムードのコラボTシャツは、会場出口付近のショップで販売中です。売り上げは (一切私の収益にはならないが) おそらく毒山君の作品制作の飛行機代などに使用されるはずです。

(凡と毒を象って…)
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「凡」の字は凡庸なる大衆=細胞をイメージ
「毒」の字は金正男暗殺の実行犯が、手からVXガスを発散させながら逃走する様を描写。