カテゴリー別アーカイブ: 古本

漫ヨハ入門

最近買って後悔した物に『まんがヨハネ黙示録入門』という漫画本がある。難解な黙示録を漫画でわかりやすく解説してくれるのならコリャいいや!と飛びついたのだが、内容は聖書の学術的解読ではなく、現実世界での戦争や事件、天変地異とハルマゲドン流言を利用したキリスト教布教の書物だった。超レアなおもしろカルト漫画だと勘違いしウッカリはまってしまうと危険だが、おっとどっこい、その手は桑名の焼き蛤。

諸星大二郎作品をうんとラフにしたような絵柄の漫画の中身は、キリスト教以外の宗教はもとより思想哲学までも貶め、さらに敵対する巨大新興宗教団体をやっつけてやろうという憎悪に満ち溢れてる。攻撃があまりにも露骨なので、このステルス作戦は失敗のように見えるが…(これ以上批判すると自分の身に危険が及びそうなのでここまでにしておこう)。この本がクイックジャパン「ぼくたちのハルマゲドン特集号」発売の翌年1996年に刊行ということを鑑みると、オタク界から発生した「ハルマゲドン」が一般社会にまで浸透し、終末観アジテーションが有効だったアブナイ時代性が窺えよう。…書棚に置くのさえ憚れる漫ヨハは、面白い絵の部分だけ楽しんでから目の届かない場所にしまう予定。(入手困難で高値な漫ヨハ所望の人がいたら特価1000円でお譲りしよう)

世界初の試み (!?)
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なかなか良い表紙デスネ

(漫ヨハ名場面集)
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ワン岩に大集合

明治の末頃か大正時代のものと思われるこの写真絵葉書には「丹後湊小天橋海水浴場 第三」と記されており、それを頼りに検索すると現在もサーファーや観光客に人気の海水浴場で、波打ち際の岩も現存していることがわかった。観光案内によると岩には名前があって「ワン岩」と称ばれているらしいが、不思議な名称の由来は不明 (ワンとは何?)。

写真のワン岩には松の木か何かが生えているように見える(君にもそう見えたであろう)。だが違う、よ〜く目を凝らして御覧なさい。岩の上に立っているのは約150名の子供と引率の大人5~6名だ!遊びの中で鍛えられ細く引き締まった体躯、海の子らしくこんがりと日焼けした自然児たちの姿が、潮風に晒された樹木のように見えるのも海岸風景の妙である。

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[丹後湊小天橋海水浴場 第三]
第一、第二も欲しかったが同じ趣味の見えない敵がいたのでコレだけ購入(資料代336円)

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ゴツゴツとした岩の上でバランスよくポージングする児童たちは、背景に馴染みすぎて計測困難(150人以上いるかも?)

持戒

『アニミズム宇宙の旅』と同時期に購入の萱野茂著『アイヌの昔話』には木版画の手作りカバーが掛けられています(写真を見よ)。巨大な植物の種のような頭をした男が自然神を拝んでいると、突如その顔面に「持戒」の文字が現れる…そんな神秘的な場面を描いた掛け紙は、刷り損じ和紙を再利用したリサイクル品で、うまく刷れた作品本体はすでに行方不明(たぶん捨てた)。たまたまカバーに再生したことで学生時制作の不気味作品の(全体像は記憶に無いが)一部分が残されました。

絵に登場の「持戒」という言葉は山村暮鳥詩集『聖三稜玻璃』に収録の詩のタイトルで、カバー版画の着想はこの詩から得ましたが、この美しい5行にはもっと相応しいイメージがあるはずだろうと昔の自分に批評を述べたいです。

「持戒」
草木を
信念すれば
雪ふり
百足ちぎれば
ゆび光り。

 

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ちなみに私の「戒」は以下4点
● 肉を食べない
● 家と車は持たない
● 動物を飼わない
● 石は友だち
今後もしっかり遵守しアニミズム宇宙人or 地底人から選ばれる人間になろう!

アニミズム牧師

詩人・山村暮鳥は極貧の少年時代にキリスト教と出会い、虐げられた人々の救済のために伝道師となって秋田、仙台、水戸などの教会を転転とした。いつからか主の教えに背くようなアニミズム的宇宙観に目覚め、聖書を片手に草木虫魚を信念する異端の問題牧師は、寒村の信者から訝しがられるようになり、礫を打って追われるように教会から教会へ…。幼い掌に握りしめた純銀の小さな十字架は、いつの間にか降ろすことの許されない木偶の十字架となって肩にのしかかっていたのか?病身に鞭打ち丘を目指す足取りは重い。………

現代詩文庫末尾に記された暮鳥の生涯を読んだ21歳の頃は、アニミズム宇宙の旅やニーチェの影響下にあり「反キリスト者に転向すべきだ」と私は思ったが、日用の糧を得るために離職は不可能だった現実を今になって理解する。
万物に対する凡人的認識を超越した宇宙観、高次元感覚の詩集『聖三稜玻璃』は、萩原朔太郎と仲間数名以外の詩人から全否定され (おそらく鋭角すぎて理解不能)、献身的に奉仕した教会からは「何月何日までに結核が治癒しなかったら即クビ」というド氏小説の如きヒドイ宣告をされ解雇。結核が悪化し40歳で他界する直前に『聖フランシスコ』を上梓、そして最後の詩集『雲』の校正を終えたという。動物とおしゃべりできる聖人の夢と、主体を持たない真っ白な雲への憧憬を枕辺に残して詩人が旅立った先は「天国」ではなくたぶん「あの世」。

…と、今日も長々とおしゃべりしてしまったが、虚脱状態から癒える道半ばなのでお赦し願いたい。我らが人に赦す如く、我らの罪を赦し給え!

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『聖三稜玻璃』1915年 人魚詩社より刊行(これは復刻)

(この犬は人語を喋りそう)
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山村暮鳥 西群馬郡棟高村生まれ
明治17年(1884年)~大正14年(1924年)

良い時代

この悪筆が不気味な本カバーを剥いた中身は、岩田慶治『カミと神 アニミズム宇宙の旅』講談社学術文庫で、普通の本屋さんで買った本だ。ザラ紙と和菓子の包装紙でオリジナルカバーを制作したのは今から30年近く前になり、この本を手に取るのはすごい久しぶり!どんな内容だったかチョロっと読んでみると、ぼんやりとした記憶が少し蘇ってきた。
…精霊(カミ)に会うために東南アジアの奥地を旅する岩田先生が、人間以外の草木虫魚の魂や、現世と他界のコスモの在り処について考える内容だったかな…。川のほとりで目を瞑るワニは、寝てるようだけど本当は全身に宇宙感覚をみなぎらせているのでは?といった自問に心躍らせ、その疑問に対し時には芭蕉や子規、正法眼蔵など引っ張り出して考察する、いわゆる文化人類学に分類される書物だったような…。

この本を購読したのは、ひとつ年上の兄が早稲田大学文学部在学中(卒論テーマは山伏)だったときに、当時の文化人類学ブームに感化されたのか、レヴィ=ストロースや山口昌男や谷川健一などの本を「読め読め!」と推薦(無理強い)してきたのがきっかけだ。だが私は読書が苦手なので貸してくれた本はたぶんちゃんと読めてない (『常世論』に登場する補陀落渡海の話が怖かったことをなんとなく覚えてる)。そんな影響を受けつつ、兄推薦でない文化人類史本が欲しくなり自分で選んだのが岩田慶治の著作だった。先生の反人間中心の視点や考え方に共感し、このような自作カバーをこしらえて大切にしていたのだ。
30年前はごく普通に一神教=神か?多神教(八百万)=カミか?など論じ、宇宙観の構造についても派閥があったり、虫の霊魂について考えたりと呑気な学問が盛んで本当に良い時代だった。みんなが賢くて平和だったような気がする。昔が理想的に見えるのは加齢のせいだろうか?

1989年刊行『カミと神 アニミズム宇宙の旅』
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宇宙開発には大反対だが、アニミズム宇宙の旅なら大賛成!

(折口 コスモスvs 柳田 コスモス)
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昨年夏、コスモアイル羽咋(UFO資料館)見学のついでに折口信夫&春洋の墓参りをしなかったことが悔やまれる(蒸し暑かったあの日、墓標に手を合わせてたら折口 コスモスに入門できたかも?)

招福ハウエル

22歳頃に『幸福について』を読んで以来、ショウペンハウアーの著作を読んでなかったが、最近になって『意志と表象としての世界(全巻)』が欲しくなりネットで購入できないかと連日検索。しかし電車内でも読めるような(大きさも値段も)手頃な本がなかなか無く、これは当分買えないなぁと諦め気分だった。が、それも節分の日までだった!
今年124年ぶりに2月2日という珍しい節分を私は忘れず、オーケー用賀店で豆まき用豆を用意しその日に備えていた。そして一昨日の夜更け、玄関でひっそりと豆をまき、2021年の幸運を祈念、それから部屋に戻り『意志と表象としての世界(全巻)』をスマホで検索すると「なんと!」古書店の新着商品の中に新書版(全巻揃)3千3百円で売り出されているのを発見した。なんという豆まきの招福パワー!その即効性!豆まき後ものの10分で願い事が叶った!やっぱり川崎大師で祈祷を受けた豆の呪力は違う。

『意志と表象としての世界(全巻)』
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早い!!もう届いた(今は読む時間がないけど)

〈川崎大師祈祷済み煎り大豆〉
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「熱烈なオーケーファンのお幸せを願って」
どうして私が熱烈なオーケーファンとご存知か!?
いつ何時もオーケー神は私たちを見守っている…

「福は内〜」ナイスキャッチ!虎
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外の豆は鳥か小動物に食べられたのか?翌朝にはもうない

繰り返される(遺失物)物語

警視庁遺失物センター発行チラシ『とうきょうのおとしもの』の観音開きを開くと、落し物がたどるストーリーが漫画風に描かれている。その運命は落とし主が現れた場合と、落とし主が現れない場合にわかれパラレルな展開を見せる。気になる遺失物物語を早速お見せしよう!

〈茶色い鞄のパラレル物語〉
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落し物の代表選手である鞄やバック類が、どのようなシチュエーションで遺失され、また発見されるか?それが物語の始まり…。タクシー座席に、デパート店内に、電車及びバス車内に、そして路傍(自販機前)で!「ママ〜!かばんが落ちてるよ!」「あら、本当!交番に届けましょうね。」
持ち主不明の鞄はおまわりさんが事務処理し交番や署で一ヶ月保管。その間に落とした本人が交番に現れたら一件落着だ。だがしかし不明なまま半年過ぎると「拾った人がもらうか」「都帰属」となる…。

〈さあどうぞ!善行の記念に…〉
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「坊やよく届けてくれたね!かばん欲しいかい?」「うん!やったぁ僕かばんもらっちゃたヨ!」「よかったわネ」
…どこぞのおじさんが使用してた中古鞄がそんなに欲しいか?(私は要らない)
それに路上は不衛生な上に、鞄の中身が爆発物/麻薬/遺体の可能性もあり、子供が触れるのは危険!(みだりに拾ってはいけない)
感染症やテロの危険性のある昨今では、このような坊やの善行は推奨されない。と思いきや、現在も遺失物センターHPでは、同じ茶色い鞄を拾う児童が主役の遺失物ストーリーが(今様なイラストで)描かれているのだ!もしかしたら落とし主は大人に成長したこの坊やかも?流転の鞄物語…

〈乗務員も唖然の異常事態!〉
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このシートに座ってた乗客たちに何が起きたというのだ?

とうきょうのおとしもの

レンコンホンポ・ハスだっぺの空き箱に長期保管されていたチラシ『とうきょうのおとしもの』は、平成16年の1年間に警視庁遺失物センターで処理された「落し物」についての報告及び広報のリーフレットである。この観音開き状の警視庁チラシを読むと西暦2004年落し物トレンドが見えてくる!それではさっそく17年前のウッカリ傾向を見てみよう。

〈とうきょうのおとしもの〉
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「遺失物センター」はここ警視庁飯田橋庁舎内にある。

〈遺失物トレンド〉
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★多い落とし物ベスト5 (平成16年中)
1位:傘 (33万本)
2位:衣類 (25万枚)
3位:財布類 (18万個)
4位:カード類(16万枚)
5位:有価証券(15万枚)

1位は納得の傘 (私も頻繁に電車内に忘れる)。5位は意外にも有価証券。普段から手形/小切手/株券などを多量に持ち歩いてる人がいることに驚く。携帯電話がランクインしてないのは当時の普及率が今ほどでなかったからであろう。

〈落し物がこんなに!!写真〉
右:21世紀初頭には携帯電話の主流がまだ二つ折りだったことがわかる。ズラリと並べられたその様はまるで甲虫の標本のようだ。鞄は中年サラリーマン愛用の茶色いビジネス鞄と男物セカンドポーチが多いことが特徴的 (落とした男のポッカリ空いた小脇に隙間風吹くだろう)。
左:ザックリ編みセーターが散見される衣類写真 (流行してたっけ?)『傘、傘、傘…….▼一雨3,100本。』一回の雨でこれだけの大量の傘が!それにしても木の柄の雨傘が多く、ビニ傘が少ないのは驚きだ(既にゴミとして処分されたのか?)。私も今年はビニ傘を廃止しサステナブルな木の把手傘を持とうかな?(高価な傘を持つ緊張感で落し物防止)

★落し物処理状況
遺失物品半数以上(58%)を拾った人がもらってることにビックリ!現金ならわかるけど。(私は封筒入り4万円を拾って届けその後もらった)

。。観音開き内側は次号ご紹介!

お魚ゲルト

川に釣り糸を垂れて魚を釣ったことはないが、網で川魚を捕獲したことはある。それは今から16年程前のこと、愛玩ホトケドジョウの水槽に他種淡水魚の投入を企てた私は、タモ網とポリバケツを携えて多摩川へと向かった。流れのない水溜りのような小川に小魚の群れを発見したので、小さなハゼ類5匹と何だかよくわからない稚魚十数匹を網で掬って捕獲。「これでドジョウ君たちに新しいお友達ができるぞ」と喜んで帰宅しさっそく水槽に新入り小魚を泳がせたのであった。

それから3日後…。なんと!不明稚魚群は獰猛なハゼに食われて(跡形もなく)全滅!捕食者の身元を図鑑で調べたら〈ウキゴリ〉という名前の肉食ハゼだった。どうりで与えた乾燥エサには見向きもせず稚魚を屠ったというわけだ。私は愛するドジョウたちに危害が及ぶまえに、恐ろしいウキゴリを川に返すことにした。小魚5匹を入れた青いポリバケツをぶら下げ、多摩川河川敷を遡ること約5km、ゆるい流れに奴らを放流しウキゴリ返却のミッションを完遂した。
〈さて今日の謎ゲルトは〉そんなマヌケな昔話を思い出させるお魚ゲルトです。

(小魚ゲルト)
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ウキゴリは小生意気なかんじの可愛い川魚(この絵にちょっと似てる)

(人面魚ゲルト)
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船か魚か人間か?不気味な生物を捕獲した老婆は、得意満面で網を担ぎ家に帰るところだ。
ウキゴリを捕獲しポリバケツで運搬中の私も、こんな顔で田園都市線に乗っていたはずだ。

処刑ゲルト

ドイツ語でNotは緊急、Geldはお金という意味のノートゲルトは、謎の図像多数で大変に魅力的!(なので集めすぎちゃう) 本日ご紹介の1マルク紙幣に描かれているのは何と処刑 (私刑?)。
十字架と聖書とロングソードの置かれた寝台の前に連れてこられた善良そうな男を、頭巾をすっぽり被った黒装束のカルト集団(ドイツ騎士団だろうか?)が断罪している場面。樹木の枝には絞首刑用のロープが掛けられ、男の背後には、ひときわ長身の騎士のような姿の死刑執行人が待機している。紙の左側には「ブルッフハウゼンの聖なるテーマ」と書いてあり、首吊りロープでマルクの文字が…どうしてこれが「聖なるテーマ」なのか、てんで見当がつかないが、ヨーロッパにおける騎士団の長い歴史に関係する宗教的内容か?(お札にこのような不穏な絵を描く時代背景が知りたい。どなたか知らないか?)

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ほのぼのタッチなのに怖い!裏面にはブルッフハウゼン発行の証しが印刷してあり、誰かがふざけて発行したものではない。

(黒頭巾に見覚えがあると思ったら)
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第三帝国をロックンロールで表現したアルバム、The Residents『ザ.サードライヒンロール』のジャケット中写真に似てるね!(こちらはスワスチカが不穏もしくは不穏当)