月別アーカイブ: 2024年5月

最高裁大法廷傍聴備忘録

昨日、最高裁判所大法廷で、旧優生保護法の被害者たちが国に賠償請求を求める弁論が行われた。この1日で5件の事件が取り上げられ、私は午後の部3件を傍聴することができた。
今まで本やテレビで知ってはいたが、理不尽な体験をされて現在も苦しんでおられる被害者の肉声は、ハンカチ無しでは聴けないお話しだった。

原告側の弁論が終わり、最後に被告である国側の反論が述べられたが、初めて声を上げた飯塚さん佐藤さんについては「不法行為から20年経過し、賠償の権利が消滅した」ので国が賠償する義務はなく「この件だけ例外にするのは立法府の軽視につながる」と詭弁を展開。他の4件に対しても「当時は合法だった」と言い切った!
思わず私は持ってた消しゴムをそいつの後頭部目掛けて投げつけたくなったが、一番憤慨しているのは、命の尊厳をかけて発言をされた皆さんだろう。

これは「国家主導のジェノサイドと言っても過言ではない」そう私は確信した。

(ドキドキの合格発表みたいなかんじ)IMG_9315
166ある傍聴席の1.5倍ぐらいの人が大行列。抽選になり「ダメかな?」と思ってたら、後ろに並んでたオジ様とオバ様が「140あったよ」と私より先に掲示板の番号を見つけ「よかったわね!いってらっしゃい」と送り出してくださった。
被害者支援会のお二人がハズレて、野良研究者の私ごときが当選し申し訳ない…しかと見届けてきます!

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読み返すのもつらいメモ…(弁論の詳細は新聞記事などでご確認下さい)
次のページに書いた小島さんの「札幌でタクシーの運転手をしていたとき、丸山動物園に行く子供連れの家族を乗せた日は、望めない夢を思って泣いた。」というお話しを聴いて落涙…
1950〜60年代は優生手術推進キャンペーンが全国に広まり、各自治体でノルマが定められ手術件数を競い合う状態だったという!(ダントツ1位は北海道で、暴力的に不妊手術をされた小島さんは競争の犠牲者)

兵庫県〈不幸な子ども生まれない運動〉と宮城県〈愛の10万人運動〉は、この裁判で初めて知った官民あげてのディストピア運動だ。

悪魔の法律(1)

いよいよ明日29日。最高裁で旧優生保護法の被害者による弁論が行われる。
1940年、大政翼賛会の新体制下に発布された〈国民優生法〉をそのまま継承するかたちで1948年から施行された〈優生保護法〉は、驚くべきことに1996年まで普通に法律として存在し、2万5000人以上に優生手術(不妊手術)を強制し続けた。国民優生法の被害者を加えたら、どれだけの人数に膨れ上がるか分からない。

優生思想を『ディスリンピック2680』のテーマにし、独自取材(古本集め)をした私としては、この裁判の行方が気になるところだ。違法どころかズバリ国家による大犯罪であるのに、どうして声を上げにくい弱い立場の人達が苦労をして訴訟を起こさねばならないのか?不条理でしかない。
この悪魔の法律がどのようなものか、古本を手掛かりに少しばかり紹介しよう。

IMG_9304左: 「優生保護法」東京母性保護医協会/昭和54年発行
右:「週報」情報局/昭和16年6月11日号[国民優生法解説]
断種手術の社会的意義とその対象が示された啓発宣伝誌の内容は、ショッキングでグロテスク…。

「優生保護法」第1ページIMG_9297
第二章 優生手術/第三条には、成人の該当者からは本人の同意が必要「但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱児(原文ママ)については、この限りではない。」と記載されている。
なぜ被害者の多くが少年少女の時に「盲腸」と騙されて手術されたのか、その理由がこの条文にある。同意の必要がないあいだに施術しておきたかったのだ。

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生まれてはいけなかった人間の烙印を押される絶望(こんな広範囲に…)

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〈優生手術申請書〉遠足か修学旅行の申し込み用紙程度の簡易さ(残酷すぎる)

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ディスリンピック右翼は選別と排除の物語
(…次号では戦前の優生学資料をご紹介)

デイブレイク、その前に

孤独な二つの魂の邂逅と解放を描いた夜ドラ『VRおじさんの初恋』が木曜の夜に終わってしまった。

仮想空間の列車のなかで「銀河鉄道の夜みたいだ。どんな話しだっけ?」「あのお話しは…」と言いかけてカムパネルラの運命が脳裏によぎり、2人の会話がふと途切れてしまった場面で、すでに悲しいお別れの鉄路は敷かれていたのだけど…寂しい。

2ヶ月のあいだ物語に寄り添ってきた美しい歌〈ハートビート〉と〈旅人〉が頭の中で響き鳴り止まぬまま、人っこ一人いない外に出ると、虹色の輪っかを纏った月が光ってた。異世界みたいな夜空はまるでドラマの続きのようだ。

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偶像の瞬間

気怠いA面から軽快なB面へと何往復しただろう?こちらのグラント・グリーン『IDLE MOMENTS』自作カセットは、30年前に繰返し聴いてたヘビロテ.テープです。
つい最近までこの英語タイトルの意味を「偶像の瞬間」だと信じて疑わなかったのだが、この前なんとなくスマホで調べたら「暇な時間」という全く違う意味だったのでびっくり。インデックスカードも「偶像の瞬間」をイメージして作ったのに何たることよ!

私は「暇な時間」よりも「偶像の瞬間」のほうが詩的で断然ステキだと思うけどネ。これからも今までどおり「偶像の瞬間」を採用するよ(そう、私だけは)。

フェルナン・レジェ〈沐浴する女〉を部分使用IMG_9212
HMVやWAVEでCDを試聴し、良いと思ったら図書館で借りてテープにダビング。そして手作りカードでカセットを装飾するのが当時の貧乏ミュージックライフ。
レジェの絵は美術館のチラシから切り取ったもので、生カセットテープは父の部屋から無断で持出。なので制作費はゼロ円

火山とカエルとリーゼント

前号の黒天鵞絨ジャケット期写真は1994年撮影で、ちょうど公募展〈PARCOアーバナート〉でいっぺんに2つ賞を貰った年のものだ。
ビギナーズラックとしか言いようが無い変な受賞作品は『終わりで始まり』というタイトルでテーマは〈永劫回帰〉。ニーチェに傾倒した22歳の私がニヒルを気取り、アーバンなアートに挑んだデビュー作!
左の中央には「エンドレス」と英語で記されており、これはクラフトワークの『ヨーロッパ超特急』からの影響で、これまた音楽に感化されやすい若者の特徴を表している。

※当時のラジカセには裏返さなくてもA面B面が繰返し聴ける便利なリバース機能があった。そう、エンドレスにね。ミュージックノンストップ永劫回帰で!

(URBANART#3 図録より)
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全部があの世とこの世、死滅と再生がモチーフになってるんだヨ 。なんだか怖いね!
経歴欄には〈PARCOゴメス漫画グランプリ1993/岡崎京子賞〉とある。どうです立派な渋谷系でしょ?

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えーっと、左上は火山噴火とカエルとリーゼント集団です…【なんでだ?】

【答】これはヨミガエルを意味する。
ザ.タイガースの傑作『ヒューマン.ルネッサンス』の物語 (
ポンペイの栄華と滅亡、そして復活)にインスパイアされた!

版画の青春

1930年代プロレタリア美術運動と時を同じくして、版画界にも大衆化ムーブメントがやってきた!その運動が一望できる展覧会『版画の青春』展は国際版画美術館(町田)にて開催中。本日(19日)最終日なので興味のある方は急げ!
私は学生時代から藤牧義夫推しなので、小野忠重はちょっと・・・だけど、各作家の作ったポスターの数々は軽快でかっこいい。
「やっぱり藤牧ステキ♡」とオタマジャクシ集合の絵を眺めてたら左の足の裏が攣って、そのあと階段を降りようとしたら両ふくらはぎが同時に攣って激痛が走る。これは…大学版画展の呪いか?5分ほど無表情で悶絶…独りよがりな版画の青春がいま蘇る!

「おまえ、まだそこにいたのね」
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ほろ苦い青春の思い出を映す大玉…

(版画の青春は奪われない)
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私にとって版画の青春とは何か?

(ハートに火をつけて)
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学生時代からエディションのルールを無視して1点しか刷らない私は版画大衆化運動の裏切り者だ。〈版画のできる女スパイ〉を標榜してた当時の私。地下教室でポスターを刷り校内に貼り出す…版画オルグ暗躍中!

バウハウス宣言の影を慕いて

さて。前号で明治大学記念館を登場させたこの流れで、今まで隠してきた秘密を窓黒読者の皆様に告白しようと思う。
その秘密とは、私が9年前に作った古賀政男ファンアート『人生の並木路』は〈バウハウス宣言〉の表紙、リオネル・ファイニンガー作『大聖堂』の模倣だったという事実だ。

明大マンドリン倶楽部の創設メンバーである古賀政男先生の不朽の名曲『影を慕いて』は、明大記念館講堂で発表され、その後の輝かしい音楽家人生の第一幕を飾ることとなった。そして最期の仕事も同じ舞台でタクトを振り、栄光の生涯に幕を下ろしたという。そんな出来すぎた伝説を持つ偉大なミュージシャンを描いたときに私は…バウハウス宣言の表紙を真似してしまったのだ!

グロピウス校長、ファイニンガー先生、それから古賀政男先生へ。心からエントシュルディグング!ゆるしてたもれ〜

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バウハウス宣言の表紙に使用された木版画『大聖堂』
(リオネル・ファイニンガー画集より)

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『人生の並木路』2015年(リノカット)
小さなお星様まで模倣した小作品に悪意はまったく無くて、あるのは大好きな
ファイニンガーと歌謡界の巨星に対する純粋なリスペクトのみ。

赤ハタ翻ルM大

昼(朝)ドラの『ちゅらさん』『虎に翼』と、夜ドラ『VRおじさんの初恋』のお陰で日々のTV鑑賞が充実してます!ありがとうNHK。
『虎に翼』は寅子がパラレル明大を卒業し、高等試験に合格して日本初の女性弁護士誕生へと物語が進行。学友のヨネとバンカラ轟が好きだったので、素敵な男装姿と薄汚い学ランが見られずちょっと寂しい…。
そんな気持ちを知ってか知らでか、懐かしいアルバム(建築写真2軍)が出てきました。たまに掲載の古い建築写真は1軍アルバムからで、こっちは写りが悪いやつを分類して収めてます。19歳当時の行動範囲の狭さと、巻末ポエム集(萩原朔太郎の詩を書き写した紙)などが面映い青春の残滓たち。その2軍のなかに寅子のモデル・三淵嘉子さんが通ってた今はもう無い記念館が!!この写真を見てバンカラ諸君の活躍でも想像しようかな?

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双頭の鷲が輝くアルバムは神聖ローマ帝国のものではなく、お父さんが会社から持ち帰った廃棄備品 (グレー表紙が1軍)

私にとっては超有名・駒沢給水塔
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有名建築物のページ。イラストは大隈講堂っぽいが早大の写真は無い(なんでだ?)ほんの数枚しかない有名建築にしょんぼり…。もっと足で枚数を稼げと昔の自分に言いたい。

マロニエ読本の影を慕いて(行ったけど…)
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PKO法案粉砕!に燃える学生闘士が書いた激しい文字が踊る。明治大学記念館には紫の校章旗ではなく赤い旗が掲揚され若い我等をアジテーション!だが半年後の1992年6月にPKO法が成立しこの闘争は敗北…(学苑会オルグ今いずこ?)

赤色美術集

1か月も家捜ししたのにVOCA2001図録がまったく出てこない。
捜索中あの箱この棚あちこち開けてたら、忘却の奥底に仕舞われてた本『差別が奪った青春』とか『谷中村滅亡史』や『實業之日本オール金儲け實話號』などが発掘されるが、違うこれじゃない・・・

『日本プロレタリア美術集』もその一冊。
「鑑賞向けの美術はブルジョワ的だから全否定!俺達プロレタリアは我々の闘争を(わざと)下手くそに描いて大衆の心をアジテーションしちゃうんだぜ!」そんなヒロイックな陶酔がアマチュア風に描写され、美術というより完全なる思想広告。あえてクオリティを下げて民衆運動をアッピールする手法に、私は今もウンザリしてる。(あなた、美よりも目的を選択しましたね?)

IMG_9124『日本プロレタリア美術集 日本プロレタリア美術家同盟(PP)編 1931』
10年程前に1000〜2000円ぐらいで買ったこの本が、今では2万〜7万円(日本の古本屋調べ)に高騰! そんなに人気なの?プロレタリア美術…(売ろうかな)

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『音』 矢部友衛
危険思想雑誌かビラ作製中の同志たちに迫る特高の気配

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『裏切者』 長谷川三造
工場内にスパイ発見の場面。首を絞めてカナヅチで殴打…怖い。暴力革命の肯定に賛成の反対なのだ!
『アジテーター』 川越治武
力強い演説で労働者諸君を煽ってる場面。(アジテーターとオルグは争議の花)

自己満足の季節フォーエバー

先日ランド四畳半にてお客様4名と打合せ。その内の1人は渋谷系時代にHMVで働いてた音楽通の方で、私のCD棚を見て「クラシックの隣にヒカシューがあるのが面白いですね!」と驚かれてた。けど、そんなコタァないよ。ヒカシューはクラシックの並びで間違いない。
元HMVの人以外はヒカシューを知らないようなので、私は〈ガラスのダンス〉のサビ「だけど声に出せない  そんな弱気な恋さ〜」を口遊んで、こんな感じのグループですよと説明し、その続きの「だからニヒルを気取る そして奇跡を唄う」は脳内で唄う。(勿論《加山雄三のブラックジャック》のサイケ映像つき)

そういえば. 学校(武蔵美学園)帰りによく立ち寄ってたなHMV渋谷店。試聴ブースのデカいイヤホンを片耳に当てて犬のように小首を傾げ、グラント・グリーンとかウェス・モンゴメリーとか気怠いJAZZを聴きながらクールでニヒルな画学生を気取ってた青臭い思い出…。
それはNO MUSIC, NO LIFE じゃなくてHis Master’s Voiceの方で!

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掃除してたらオシャレなCDプレーヤーが出てきたヨ
ペーター・ホフマンで再生を試みるも「すぅ」と吐息のような音がしたっきり停止。聖杯の騎士登場の奇跡は望めず、朝ゴミと一緒に捨てました。さようなら…