山の日

【今日は山の日】お正月から読み始めた岩波文庫『魔の山』は、春の自宅待機期間に上巻を読み終え、移動再開の夏、東横線・北陸新幹線・そして先週は間違えて逆方向の終点まで乗ってしまった半蔵門線車内で読書に勤しみ、やっと下巻200頁まできた(残449頁)。今読んでる章では、ダヴォス山岳地帯にて隠遁生活を送る論敵2名(一人は西欧中心的見地の人文主義者、もう一人はキリスト教原理主義者でボルシェビストのような血腥い人物)が、舌鋒鋭く論戦を繰り広げているのだが、二人とも平地に戻れぬほど重病で、実行性に乏しい彼等の思想の対立は、机上の空論ならぬ山上の空論である。ハンス・カストルプがその不毛さに気がつくのはこの先の「雪」の場面だということを、まだ読んでいないけど私は知っている。

(サナトリウムにて)
sanatoriumのコピー
これは展覧会用新作『マジック.マウンテン』のための下絵の一部。ピアノに肘をついているのが『魔の山』の著者トーマス.マンで、ピアノを弾いてる人物は指揮者のオットー.クレンペラー、その横で聴いている男はエルンスト.ルートヴィヒ.キルヒナー。(クレンペラーとキルヒナーは精神疾患療養中にサナトリウムで知り合ったという)

【予告】
明日11日、日本経済新聞[朝刊]の特集『戦後75年を考える』にて「表現の自由」に関するインタヴュー記事が掲載されます。日経新聞購読の皆さんは記事を探してみてください。