日別アーカイブ: 2014年6月13日

トレンディの墓標

家から40分ぐらい歩いた所に『M2』はあります。M2とは世田谷区砧の環状八号線沿いに建っているビルの名前で、1991年まだバブル爆ぜる前夜時代に建築家・隈研吾氏の設計によって建築された有名なビルです。昨日、突然見たくなって散歩がてら見に行きました。
「奇をてらった」という表現は大変失礼かもしれないが、この建物の印象はそれに尽きます。新築当時は真新しい外壁がピカピカしていて、車で前を通るたびに2度見してしまうような迫力と存在感だったのに、久しぶりに見たM2は天窓のガラスは曇り、長いあいだ自動車の排ガスに晒されたシャビー感で、どこかうら寂しく以前より一回り小さくさえ見えます。
マツダのショールームとして建設されたM2は、2000年に売却されて現在は「東京メモリードホール」という斎場になっています。マツダのショールームだった時は、イタ飯レストランと洋書店もテナントで入ってたそうです。90年代っぽい!
彼氏が「ユーノス・ロードスター」購入の契約を済ませているあいだ、彼女はインテリア用の洋書をチョイス。「おまたせ、待った?」「ううん。ねえジャスパージョーンズの画集買っちゃった」「何それ?おばけのキャスパーなら知ってるけど」「きゃはっ♡笑える!ねえっお腹すいたー♡」「じゃあ、イタメシでも食う?」「うん♡」….といった彼氏と彼女、トレンディ&バブリシャスな光景が繰り広げられていたのでしょうか?
当時、M2ビルは「ポストモダン建築」「脱構築建築」の代表のような扱いだったので、学が浅い私は「へぇ、ポストモダンってこんな感じか〜」とそれ以上掘り下げずにポストモダンへの扉をパタンと閉じ早々に「あまり好きじゃないモノ」に仕分けてしまいました。日本ではバブル期とポストモダンの流行がちょうど重なったので、こういう色もの的な印象が強いですよね。ポストモダンは穿って見られたのか?それともバブルとポストモダンの相性が良かったのか…。

…M2はファッションとしての脱構築、トレンドの墓標のように今もそこに佇んでいるのです。

M2.1
『M2ビル』1991年竣工。いろいろな要素がてんこ盛りです!
M2.4
巨大イオニア式柱頭からは赤錆の涙が二筋..。
M2.3
驚愕!フラットな背面。看板建築か?
Bubble_kan
平成博「バブル館」プレハブパビリオンを彷彿とさせます。M2.2
おくやみレボリューション!