日別アーカイブ: 2018年5月5日

解説コーナー(1)

彫版の悪夢から解放されない夜はまだ続く!その呪縛の原因である巨大木版画『ディスリンピック2680』に何が描いてあるのかご説明しよう。会場にも解説が張り出されている(はず)ですが、あまりにも長文なので(私なら)読む気がしない。なのでここ窓黒にて小出しに解説しまーす。

(巨大版画でハゲ3つ)
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高さ2・4m、全長6・4m 巨大版画の全容!
これを手で彫ってバレンで刷ったのだから、腕の一本犠牲になっても仕方があるまい。

以下会場解説より)
★ディスリンピック競技場★
このスタジアムは、ダンテ「神曲」の舞台である地獄、煉獄、天上界の形状を元にデザインされている。天井は太陽系を模した宇宙、観客席はすり鉢状の地獄が象られ、中央には煉獄山を模した「ディスリンポス山」という名のトレーニングセンターの巨大モニュメントが飾られている。

ドーム型の天井は、1851年ロンドンに建造されたガラスと鉄のパビリオン『水晶宮』をイメージし、大阪に存在する水晶宮似の廃墟『なにわの海の時空間』の画像を元に描いた。(ロンドン万国博覧会の遺構である『水晶宮』を見学したドストエフスキーは、そこに功利主義などの近代悪の勝利と、計算に基づかれた未来を見出し、水晶宮を近代合理主義の権化とみなした。体育競技における成果主義や優生思想も然り、と私は思う。)
新古典主義の秩序とロマン主義の熱情。この二つの異なる主義の出会いがファシズム(特にナチス)の高揚感を生み出すのではないか?と考え、競技場建設にはこの二つの要素を組み合わせてみた。

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観客席(左)
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観客席(右)

●観客席
向かって左側は、現在建設中「新国立競技場」の建設現場、右側は石灰岩(セメント)の採石場の風景写真を元にしている。この二つの風景は形状的に古代ローマのコロッセオに酷似し、奇妙なことに建設資材の原料、建設作業中という完成前の段階ですでに「廃墟」に見えるところが大変に興味深い。これは権力の偉大さを証明するために「廃墟の威容」を予感させる巨大建築を建造する意義を唱えたナチスのお抱え建築家、アルベルト・シュペーアーの『廃墟の価値理論』を思い起こさせ、新国立競技場のデザイン選定の際にうたわれた大義「レガシー」という言葉とも符合する。