日別アーカイブ: 2018年5月7日

解説コーナー(3)

悪夢の内容が進展し、昨晩は彫りの作業から刷りに進んだ!がしかし、接合箇所のインク濃淡が合わずに焦っている辛〜い場面が再現され、悪夢であることに全く変わりがない。故障した手はペンを持つとしびれるので暫し休養(サボる)。その諸悪の根源『ディスリンピック』解説は愈々第三弾!

★モニュメントと祭り★
ディスリンピック開幕式典におけるモニュメントと祭りを説明しよう。
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●高架橋
左右対称に配置された高架橋は、国家建設の厳格な秩序を表し、また建設途中の高架橋は高度成長期における成長神話のシンボルでもある。(しかし分断された形体は去勢を予感させる)

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●左側高架橋の弓兵
古代武人(弓兵)の英雄的彫刻三体は、1940年前後に皇紀2600年を奉祝した美術作品の流行スタイルを模している。バードセレモニーで放たれた白鳩の群から灰色の土鳩を見つけては射落し駆逐するゲームを演じており、これは単一民族の堅持をアピールするプロパガンダの一つ。

●左下の人間大砲
戦前の博覧会で催された「人間大砲」と同様のもの。ここでは最優秀遺伝子に選ばれ「国民の弟」と称される日出鶴丸クンが弾丸となり、国家秩序と栄光を象徴する太陽(=卵子)に向かって男性的な大砲から発射された瞬間が描かれている。太陽神への生贄『血の祝砲』はストラヴィンスキー「春の祭典」のように観衆の原始的な興奮を呼び覚ます残酷なお祭りだ。

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●二六八〇人文字
1940年、皇紀2600年のこの年に奉祝行事として開催予定された「東京オリンピック」は、日本の国際的立場の悪化から頓挫し「幻のオリンピック」となった。奇しくもあれからちょうど80年経つ2020年(皇紀2680年)に東京オリンピック開催!これを祝してディスリンピックの同時開催が決定された。1940年は「国民優生法」が制定された記念の年でもあり、2020年は「国民優生法」制定80周年にあたる。

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●石女の像
この像はパルテノン神殿の破風に飾られていた「アテナ神誕生」の石像が元になっている。子供を産めない女性のことを「石女(うまずめ)」というが、その字のとおり石にされた女たちの姿である。石灰岩で造られた手足、首の欠損した石像は、強制的に不妊手術を施され「石女」となった人たちを象徴する。アテナ神の持つメドゥーサの盾の中の行き場を失ったヘビ、メドゥーサの表情が石化の慟哭を代弁し、石灰岩のコロシアムはギリシア悲劇の題材「子殺し」を上演する劇場のようでもある。