良い時代

この悪筆が不気味な本カバーを剥いた中身は、岩田慶治『カミと神 アニミズム宇宙の旅』講談社学術文庫で、普通の本屋さんで買った本だ。ザラ紙と和菓子の包装紙でオリジナルカバーを制作したのは今から30年近く前になり、この本を手に取るのはすごい久しぶり!どんな内容だったかチョロっと読んでみると、ぼんやりとした記憶が少し蘇ってきた。
…精霊(カミ)に会うために東南アジアの奥地を旅する岩田先生が、人間以外の草木虫魚の魂や、現世と他界のコスモの在り処について考える内容だったかな…。川のほとりで目を瞑るワニは、寝てるようだけど本当は全身に宇宙感覚をみなぎらせているのでは?といった自問に心躍らせ、その疑問に対し時には芭蕉や子規、正法眼蔵など引っ張り出して考察する、いわゆる文化人類学に分類される書物だったような…。

この本を購読したのは、ひとつ年上の兄が早稲田大学文学部在学中(卒論テーマは山伏)だったときに、当時の文化人類学ブームに感化されたのか、レヴィ=ストロースや山口昌男や谷川健一などの本を「読め読め!」と推薦(無理強い)してきたのがきっかけだ。だが私は読書が苦手なので貸してくれた本はたぶんちゃんと読めてない (『常世論』に登場する補陀落渡海の話が怖かったことをなんとなく覚えてる)。そんな影響を受けつつ、兄推薦でない文化人類史本が欲しくなり自分で選んだのが岩田慶治の著作だった。先生の反人間中心の視点や考え方に共感し、このような自作カバーをこしらえて大切にしていたのだ。
30年前はごく普通に一神教=神か?多神教(八百万)=カミか?など論じ、宇宙観の構造についても派閥があったり、虫の霊魂について考えたりと呑気な学問が盛んで本当に良い時代だった。みんなが賢くて平和だったような気がする。昔が理想的に見えるのは加齢のせいだろうか?

1989年刊行『カミと神 アニミズム宇宙の旅』
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宇宙開発には大反対だが、アニミズム宇宙の旅なら大賛成!

(折口 コスモスvs 柳田 コスモス)
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昨年夏、コスモアイル羽咋(UFO資料館)見学のついでに折口信夫&春洋の墓参りをしなかったことが悔やまれる(蒸し暑かったあの日、墓標に手を合わせてたら折口 コスモスに入門できたかも?)