日別アーカイブ: 2014年3月5日

空と毒瓦斯(1)

関東防空演習市民心得:序言

今夏八月中旬を期して決行せられます関東防空演習は「関東防空演習の概要」にてお分かり下さる様に実に空前絶後の大規模の演習でございます。
近代科学の異常な躍進はその際限を予知することは到底出来難いことで、これを戦争の一例にとって見ましても昔の戦争とは全く趣きを異にし第一線の勇猛果敢な軍隊に決定的な結末をあたえない以前に敵国の爆撃飛行隊は容赦なく国土上に空襲し平和の誓約など何のものかは一片の反古紙同様で地物を破壊する爆弾や、凄惨な毒瓦斯を発散する毒瓦斯弾や、疫病を蔓延させる細菌弾や、鉄筋、鉄骨のコンクリート建築物を紙の様に焼き払って三千度以上の高熱を出して、しかも自ら酸素を供給してドンドン燃え広がり消火の水など何の役にも立たないという真に始末に負えない焼夷弾などを遠慮会釈もなく随所へ盲目滅法に投下してまず銃後の国民をして第一に戦意を喪失せしめるのであります。
こんな事を想起し而も複雑した国際関係に想到するとき誰が思い半ばに過ぎないものがありましょうか。この意味に於いて軍民一致協力して国内的にも対外的にも帝都市民の名を恥づかしめないように努力せねばならないのであります、今回の演習はその実習として行われるのでありますから市民各位は直接に間接に本演習所期の目的達成に御協力下さるように御願い致す次第であります。

昭和8年8月、東京市は冊子「関東防空演習 市民心得」の序言で、防空演習を開催する意義の表明と市民の心構えを記しています。千葉、神奈川、埼玉、茨城と東京市を防衛要地に指定した大規模な演習を行うにあたり事前に市民の協力を促したわけです。
この段階で「ドンドン燃え広がり消火の水など何の役にも立たないという真に始末に負えない焼夷弾」と焼夷弾が水で消火出来ず始末に負えないとわかっていたのに、太平洋戦争期には「消せば消せる焼夷弾」というスローガンで消火活動を強要したりと矛盾を感じるのですが、この昭和8年の当時には「毒瓦斯」の恐怖を全面に出してます。演習の写真もガスマスク姿です。なぜ「化学戦」を過度に意識するのか?理由があります。(次回へつづく)

防空大演習
吾等の帝都は 吾等で護れ!「関東防空演習 市民心得」東京市 昭和8年8月
毒瓦斯
ホスゲン、ヂフエニール、アダムサイト、アセトフエーン、ベンヂール、ピクリン、イペリット、
ルイサイト…..一般市民が得るべき情報としては詳細すぎる毒ガス知識。
特臭:腐った林檎の臭、特有の臭(ザックリ…)芥子の臭(阿片?)ドクダメの臭(ドクダミ)