日別アーカイブ: 2014年3月7日

空と毒瓦斯(2)

化学戦の話に移るまえに、今日は昭和8年(1933年)8月9日〜11日開催の「関東防空大演習」とそのほかの都市で開催された「防空演習」の記念絵葉書を紹介します。
関東防空大演習の絵葉書は洒落た袋に入ったセットで色々出版されており、ビックリするほど豊富なバリエーションです。この大演習は空前絶後の「仮想戦争ショー」として東京はもとより日本全国で注目された巨大イベントだったのです。戦争の逼迫感よりも戦闘機、高射砲などの兵器、防毒面と毒ガスにみたてた煙幕、爆破の実践などの物珍しさが絵葉書から伝わってきます。
昭和6年に満州事変が勃発し、昭和8年には満州国建国を巡って国際連盟を脱退し、日本は国際社会からの孤立を深めていった時期ですが、まだまだ庶民の空気は「戦勝ムード」で日本の本土が攻撃されるという実感は無かったと思われます。
この大演習開催後に、ジャーナリストの桐生悠々が『関東防空大演習を嗤ふ』という痛烈な社説を信濃毎日新聞にて発表しています。…本土が空襲されるという想定は最早敗北の戦況下であることを指摘し『平生如何に訓練されていても、まさかの時には、恐怖の本能は如何ともすること能わず、逃げ惑う市民の狼狽目に見るが如く、投下された爆弾が火災を起す以外に、各所に火を失し、そこに阿鼻叫喚の一大修羅場を演じ、関東地方大震災当時と同様の惨状を呈するだろうとも、想像されるからである。しかも、こうした空撃は幾たびも繰返えされる可能性がある。』とまさにその後の空襲の惨状を予言しています。そして迎撃作戦の必要性を唱え、迎撃作戦をシミュレーションしない防空演習を『壮観は壮観なりといえども、要するにそれは一のパッペット・ショーに過ぎない。』とも指摘をしています。この文章は一方的なファシズム批判というよりも、冷静かつ客観的な分析と読めるのですが、陸軍サイドはカンカンになり、長野の在郷軍人らで信濃毎日新聞の不買運動を展開し、やむなく桐生悠々は退社することに…。ちゃんと文章を読めないところが軍人っぽいな〜!かなり舌鋒鋭くイカした文章なので全部引用したいのですが、いかんせん長いので興味のある方は、どこかのサイトで読んでみて下さい。

タトウ
記念絵葉書の袋:左上から時計回りに
「世界未曾有の壮挙 関東防空演習実況」「関東大防空演習 帝都空襲に遭はば」
「防空展(東京大丸)」「防空絵葉書(国民防空協会)」「関東大防空演習記念」
「関東防空大演習記念 帝都空襲 防護弾の活躍」
防空絵葉書
関東防空大演習の記念絵葉書たち…48枚
三色防空
「帝都空襲に遭はば」
上:すは毒ガス来襲(防毒覆面をつけて出動)
中:投下毒ガス弾の中和作業
下:救護班の活躍…女学生は手ぬぐいがマスク代わり。
イラスト防空
「帝都空襲に遭はば」(劇的!イラストバージョン)
上:高射砲及び高射機関銃の活躍
中:猛毒中和作業及び高射機関銃・高射砲の活躍
下:照空燈及びラッパ型聴音機・消防隊の活躍
軍用犬
「関東防空演習實況」
上:消火に務むる防火班…..誰も消火活動せず、家屋全焼のもよう!!
中:投下されたるガス弾を消毒中の防毒班….ホースが絡まっちゃった!
下:空襲に備へる軍用犬隊….見よ!防毒面装着の軍用犬の勇姿!