月別アーカイブ: 2022年11月

W杯をみて

(ワールドカップしかサッカーを見ないが) 先週末のチュニジアvsオーストラリア戦で注目したのは〈2002年W杯で躍動した痛がり珍演技選手の再来〉である。
20年前の日韓大会で、チュニジア代表ブアジジ選手がピッチで大袈裟にすっ転び、全然ぶつけてない顔面の唇を指差して「痛い痛い!ひどいよ〜」とファウルを哀願するも(当然)審判に認められず、何事もなかったかのようにスタスタ歩き始めた姿は、サッカーを見慣れない私にとって衝撃の名場面であった。このような痛がり演技名人が今回も登場するかと期待しチュニジアチームに注目したのだが、フェアプレイが賞賛される潮流の中(世間ではズルい人間が多いのに)こすっ辛い手段は影を潜め、面白シーンが展開されることはなかった。現代サッカーの痛がり名人・ネイマール選手も本物のケガで出場が危ぶまれ、ファウル懇願演技を見ることはさらに難しくなった。

年齢的にもう出ないと思ってたクロアチア代表モドリッチ選手に歓喜!
観戦しながらAI画伯に肖像画を依頼したのだが…
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足が3本、手が園芸用熊手みたいな中心の人物がモドリッチ選手だと?

要望が細かすぎたかな?再び依頼
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…誰?(似てない)

吉村さん『悲しみの星』刊行記念展

魔物に髪を毟り取られたような有様になり悲しみに暮れる私。このままではいけないと姪っ子推奨の(洗髪台のある)普通の美容院に行って断髪、さらに電髪をかけ岡本かの子風(ジャイ子寄り)のボブヘアーに変わりリカバリーに成功!漸く外出できるまでに持ち直した。

心も頭髪も軽く現場監督うどんショッピング巨大水門見物した翌日、すなわち昨日は神戸の異才・吉村宗浩さんの個展初日を祝いに888ブックスギャラリーを訪問しました。10月の兵庫県美展示では圧倒的な点数に感動しましたが、このような小さい部屋でじっくり鑑賞する方が私は好きです。
最新画集『悲しみの星』の悲しみとは何か?それは絶望ではなく人間的滑稽さの片鱗であり(滑稽さには救いがある) 悲しみが人生にとって必須であることは、吉村さんの作品を観ればよくお分かりになるはず。さらに知りたい諸君は『悲しみの星』を買って面白い随筆を読もう!

黒マスクで失礼(スペイン風邪大流行の設定)
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断髪に至った経緯を説明し傷心を癒すために多摩川を歩き川崎の分水嶺を見たことまでお話しすると「そこ行ったことあるかも知れへん」とまさかの展開!久地円筒分水…そこは悲しみの泉!次は荒天の翌日に行って私の悲しみ(愚かな滑稽劇)をザブザブ溢れる湧水に流したい。

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全て違う設定のパロマー氏イラスト付きサイン本は早い者勝ちです
吉村宗浩・画集刊行記念展『悲劇的』
888booksギャラリーにて12月11日まで開催!

現場監督(蕨市)

国立近代美術館収蔵の作品『セメント・モリ』インスタレーション部分(捨てコン風台座)を新調してくださるというので、製作に立会うため蕨市にあるスタジオにお邪魔し現場監督をした。文化財を守り続ける使命の美術館が信頼する職人集団だけあって技術が素晴らしく、あれよあれよという間に完成した!塗装下地テクニックなど見学してとても勉強になりました。この作品が展示される可能性が一歩前進。もし公開される日が来たら、版画とかっこいい台座の両方見てね!

現場監督終了後、現場近くにある巨大ヤオコーでうどんショッピングを満喫してから埼京線で北赤羽駅に移動。新河岸川/荒川/隅田川が集中する広大な河川敷の土手を歩き、荒川と隅田川の分岐点にある新旧二つの巨大水門を見物。巨大ヤオコーもお天気(雲の景色)も水門も最高な好日であった。

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捨てコン風台座製作中〜

新河岸川/新志茂橋より
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秋の日は釣瓶落とし。美しい黄昏は一瞬で終わる…
東北/北陸新幹線の車窓(赤羽付近)から見える変わった山門のお寺を見に行こうと思ったがタイムアップ。また行こう赤羽に。

久地円筒分水

先日見た川崎市の久地円筒分水は、20年くらい前から岡本太郎美術館に行く際に利用している路線バス(二子玉川⇔向ヶ丘遊園)停留所の一つ〈新平瀬橋〉のすぐ横だった!今の今まで気付かないで通過してたのが惜しく思えるほど大変好ましい景観に「かかる窓ありとも知らず、昨日まで過ぎし河岸…」と北原白秋の『窓』がふと頭によぎる。

かかる分水嶺ありとも知らず、昨日まで過ぎし水路。今日は見よ!色赤き葉に日の照り、かなしくも水溜り匂ふ。あはれまた私のZANBARA頭も…

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なんだここ!素晴らしいじゃないか…

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多摩川の二つの堰から取水した二ヶ領用水を分量桶で4つの堀に分水されてたが、均等でないという理由で長きに渡り争いが続いた。それを解消するため1941年に建造されたのがこの円筒型の分水嶺だという。仕組みは説明し難いが、どうやら中央部が噴水のようになってるらしい。

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勝手知ったる常連カルガモは知っている
「同心円中心部分の水だけ泡立って臭い」と…
次回は大雨後を狙いザーザーと水が流れてるのを見たい。

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二つの暗渠入口

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二ヶ領用水と平瀬川の合流地点

散髪無惨

「そろそろ髪でも切ろうかな」と軽い気持ちで激安カット店に行って事故レベルの悲惨な頭髪に!鎖骨ぐらいの長さにって注文したのに、なぜ襟足ギリギリの長さに?しかもざんばら…ハサミを握った担当のタコ坊主はメートル法を知らないか、言葉が理解できないかのいずれかに違いない。まさに後悔先に立たずとはこのことだ。私はそそくさと忌々しい店を去り、この災難について考えるのは止めて「円筒分水嶺でも見に行こうっと」とワクワク遠足気分に切替え、多摩川に向かって歩を進めた。

(現実逃避行)
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二子橋の上から見る美しい白サギ集団

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富士山(実物)の代わりに見るアパート富士

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円筒分水嶺の複雑な構造物に遊ぶ カモップル

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私の頭上で幾度となく旋回する鳥の群れ
鳥よ鳥たちよ!! 私の変な頭をからかい笑うがよい!

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分水嶺から配水されてる二ヶ領用水の一つ「川崎掘」
マンション窓枠の影が五線譜のように小川に映る。
透明な水中に泳ぐ鯉たちは体長60cmほどで巨大!!(水質良く健康)

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歩道橋から見下ろす川崎堀は一筋の白線のよう…
「嘆くまい…あすは明るく」

(到来!!) 余波と濤

今日の昼前、情報番組「王様のブランチ」に 我がディスリンピックが登場しました。というのも『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が本屋大賞ノンフィクション部門を受賞されたおかげで、受賞作品紹介の際に映画版が流され、ディスリンピック鑑賞シーンが採用されたというわけです。川内有緒さんのご活躍の余波で私にも良い影響が!ありがとうございます!

姫さま以前から長年視聴してきた番組に自分の作品が(ちょろっと)登場するとは、なんとも不思議な感じがしますね。そういえば元ブラン娘の森山愛子ちゃん元気かな?福田こうへいさん同様、歌唱力抜群の演歌歌手なので、もっと爆発的に売れてなければおかしいのだが…。近年の演歌界には、心をえぐって耳にこびりつくヒット曲が不足しており、歌名人という宝を活かせずにいると思う。昭和の名曲のように聴いて歌って自然と涙が溢れるような歌を、ぜひ愛子ちゃんに歌って欲しい。

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ワァ…おめでとうございます!

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ワイプ内の芸人さんも見てる…

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フフフフフフ

CD『濤』が届いた!!
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付録の特製マスクシール!あまり似てない〜
マスクに貼っちゃおうか〈これは誰でしょうクイズ〉

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良い曲ばっかり。石狩挽歌、蟹工船、かえり船…最高!
今更だけど北原ミレイ、村田英雄、バタヤンは偉大だなぁ
こうへいさんは上手に歌ってるが、アレンジと伴奏が軽すぎて残念…

慶びと悲しみの報せ

今日は吉報と悲報の両方が届きました。
良い報せは川内有緒さんの『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が本屋大賞ノンフィクション部門を受賞したことです。この本の表紙裏には私のディスリンピックが使用されており、本文には黒部市コンクリート展が登場してます。さらに今年完成したドキュメンタリー映画にもTCAA都現美展で登場させてもらってます。現在は公開日程未定ですが、有志による支援により全国各地で上映されそうです→https://motion-gallery.net/projects/shiratorisan
昨今では芥川賞や直木賞より注目されてる本屋大賞を受賞されるとは素晴らしい!おめでとうございます!

悲しい報せは福田こうへいさんが紅白落選したこと。近年の紅白というのは、もはや演歌歌手にとって夢のステージでは無いことは、出場決定歌手の顔ぶれで容易にわかる(友よ!この調べではない!!とNHKに苦情をいれるか?)。しかしご本人とファンの皆さんは「今年こそは…」と期待してたのでさぞ落胆されてるだろう。私は(今年も)紅白を1秒も視聴しないことをここに宣言し、年明け前夜はベートーベン応援団になる!

両方応援!
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冬が来る前に

美術誌ご依頼の推奨映画3本用テキストをようやく書き終えて、次はネット記事向けに料理のレシピを書く予定。このように締切のある件はちゃんと約束を守り尚且つレジャー(治水構造物見物)も楽しみたい。ここから徒歩59分のところにある川崎市の久地円筒形分水嶺は、地域の田圃引水戦争に終止符を打った平和をもたらす発明品で、変な円盤のような形をしてるという。とても気になるので「寒くなる前に…」と自分に言い訳して仕事をほっぽらかし多摩川を渡っちゃおうかな?(もちろん渡河ではなく渡橋)

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夏でも見れるオールシーズン雪だるま

同姓同名のベーコン

30年前ムサビ学園在学中、油絵科のイクちゃんが「わたしフランシス・ベーコンが好きなの」と話すのを聞き〈ほほぉ、フランシス・ベーコン卿がお好きとは高尚な!〉と感嘆したが、イクちゃんが好きなベーコンは20世紀の画家でルネサンス時代の思想家のことではなく、とんだベーコン違いだった。その後ベーコンの絵は何度か見たが、ベーコン卿の本は全く読まずに月日が過ぎた。
それがつい先日『ニュー・アトランティス』という薄っぺらい本を図書館で借りて「ベーコン面白いなぁ」となり直ぐ購入。この本の125ページ中前半がベーコンの書いたユートピアSF小説だが、執筆途中で死んじゃったので未完。残りの半分は忠実な助手による回想文と訳者の解説文でどうにか文庫本のページ数をかせいでいる。
どんな物語かというと、大航海中に漂着した謎の超文明国家の島で、学会の長老からいろんな自慢話を聞かされるお話だ。太陽光や水力を利用した動力、遺伝子操作など、現代のテクノロジー及びバイオを連想させる予言、さらに引き篭もり人間と地底の活用方法など、17世紀とは思えぬ空想が書かれておりオーパーツを見るような不思議を感じる。

超御曹子だったベーコン卿の人生は、父親が風邪を拗らせて亡くなってから雲行きが怪しくなり、転落の末どうにか発明で身を立てようと〈鶏の長期保存法〉に挑戦し命を落とす。寒い日に行った鶏のお腹に雪を詰める実験で風邪をひいてしまい(父親と同じく拗らせて)痰を詰まらせ窒息死したというのだ(なんたる悲運!) 風邪をひかなかったらニュー・アトランティスが完成したのに残念。みんな風邪と疫病には気をつけようネ

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発売当初400円だったのが現在絶版で3倍の1200円に高騰(これでも最安値)。こういった愉快な書物を売れないという理由でどんどん絶版にするとはけしからん (安く大量に普及させよ)

寄生するプラモデル

ワタリウム美術館で来年3/12まで開催『寄生するプラモデル』と題された加藤泉さん個展のオープニングに行った。タイトル通り特徴的な立体作品にプラモデルがくっついた作品群が大変面白く、特に使用済みのプラモ空箱を展示した最上階では可笑しさが込み上げて大きな声で笑ってしまった(展覧会場で静かにできずごめんなさい)。
見たことのない解剖模型の数々は、コロナ緊急事態宣言発令下に集め始めたコレクションで、この物欲を刺激する珍しい動物解体スケスケプラモの入手について加藤さんに訊くと「ネットオークション出品物は、凡そ自分が総ナメしたのでもう売ってないだろう」とのことだった。残念と思ったが、また新たな購買分野が開拓されず良かったとも言える。

『寄生するプラモデル』展示会場2F
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透視生体模型と彫像の遭遇 (内臓を露わにした乳牛模型を使用)

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小鳥模型に餌付け(幼虫の無理強い)される子供

(解剖スケスケ模型空箱)
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〈平和をよぶ鳩〉と誉めそやして解体する非情(注:子供向け). 丸枠内の内臓が生々しいがこの学習玩具は一般家庭用と書いてある。
他にも〈忠実なる犬〉が学童の医学への関心向上に献体してる。

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2F作品で使用されてた〈乳牛の秘密〉の空箱
「牛の構造が一目でわかる」このプラモは学校、家庭ならびに「病院用に!」と推奨されている。
牛の足元にはカラフルな臓物がフルーツ盛合せのように置かれているが、まさか入院患者への進物用ではあるまい。(病人の枕元にどうぞ)