カテゴリー別アーカイブ: 出来事

大雪と大拙

金沢2日目は早朝から轟く雷鳴で目を覚ます。明らかに遠足向きの天気ではないので小松に行くのはやめて金沢見物をすることにした。そう決めてホテルを出たものの、たちまち風雪とメガネの曇りで視界不良。さらに融雪散水でグチャグチャになった雪に足を取られてしまい徒歩5分の場所にあるバス停すら発見できず、予想以上の難渋を強いられ、目的地の鈴木大拙館まで通常であれば30分で移動できたのに1時間20分もかかってしまったのだ。吹雪→晴→雨→晴&雪→雷→雨とめまぐるしい空模様に翻弄されながら漸くたどり着いた谷口吉生建築の清々しい佇まいで、今までの不安はスッと晴れた。

館内は禅の哲学者・鈴木大拙の功績をたどる資料展示とそのほかに関連図書コーナーがあり、本棚の本は自由に閲覧して良い。私はお天気雪の舞う中庭を眺めながら『学習まんが 西田幾多郎』を手に取る。(その漫画はこんなお話のようだ)
…野球チーム内の一人が最近どうしたことか元気がない。見兼ねたコーチが部員たちを連れて禅寺を訪ねると、穏やかそうな外人住職の歓待を受ける。住職は問題選手を見るなり彼の悩みを言い当て(コーチが事前に相談していたものと推測)そして「私はクリスチャンですが禅に目覚めたのです」と言い襖をガラっと開けると、畳の上で座禅を組む横浜パームズ(架空球団)の外人選手の姿が…。憧れの有名選手が瞑想している様子を眼前にし、禅への興味が俄然湧いてきた彼等に向けて住職は哲学者・西田幾多郎の半生(漫画の本題)を話しだす。日本初の哲学者の存在と〈自分を無にする〉という生きるヒントを知って、迷える若者は再び元気を取り戻したのでした(おしまい)。

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君は〈自分を無にする〉のと〈自分以外を無にする〉のとどっちがいい?

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どっちも容易なことではない。

橋が苦手なんです。

定時制高校卒業記念の修学旅行の行先は、4年生全員の投票で四国に決まり、四国/広島/岡山を周遊した。安芸の宮島では私だけ犬と鹿の喧嘩に巻き込まれ、鹿の後脚から繰り出された強烈なキックを上腕部に食らったがこの珍事の目撃者はなく、痛みに耐えながら先を行く級友たちに追いつき「さっき鹿にキックされちゃったよ〜イテテ…」と面白ハプニングを報告したが、誰一人関心を示す者はいなかった。

四国での一番の思い出は高松市にある『四国村』で、このテーマパークは四国を回らずとも四国観光ができるというミニ四国だが、四国周遊を目的で訪れたのに、ここ一箇所で事を済ますような見物の意図は今も不明である。園内には徳島県に実在する祖谷のかずら橋を縮小し再現したミニかずら橋があり、これが私を恐怖の谷底に突き落とした(実際は落ちなかったけど)!一歩踏み出そうにも粗く編まれた蔓から透けて見える川面に足がすくみ、「怖いよ〜渡れないよ〜」と私は涙をボロボロこぼし渡ることを拒んだ。19歳にもなって泣いて駄々をこねる恥ずかしい姿を、級友たちは冷ややかに傍観しつつ次々と恐怖の橋を渡って行ったことを今も忘れない。

〈再びの恐怖・松島〉
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200円払って長い橋を渡り福浦島へ。
「歩いているのは道路だ、橋ではない!」と暗示をかけて渡るも、薄目の両端に海面が見える…

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怖いけど来て良かったと思える景色

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朝とは思えない薄暗さは不気味な夢の中のよう…

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木々に覆われた散策コースを歩く者は私一人しかいない。心細さを紛らすため『波浮の港』を歌いながら山を登った。
♪島で暮らすにゃ乏しゅうてならぬ、伊豆の伊東とは郵便便り、下田港とはヤレホンニサ風便り…

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瑞巌寺五大堂を見るのも橋〜OMG!!
しかもスケルトンタイプだし

造化の天工

再燃した古絵葉書熱によりここ2年間で蒐集した枚数は500に上る勢いである。100円ショップ(セリア)購入のファイルに収められた9×14センチの100年前の風景は、同じ日本国土とは思えない長閑な空気に包まれた桃源郷。私は写真に封じ込められた仙境に逃避しては浦島太郎のように時間を忘れ、その日にやらねばならぬ仕事も忘れ「まあいいか」と責務をアッサリ放棄し一日を終える…。

最近人気急上昇は〈松島エハガキ〉で、大量まとめ買いの束に偶然入ってた数枚がブームのきっかけだ。松尾芭蕉が「造化の天工」と讃えたとおりの霊妙な造形をした小島の数々は、盆栽・水石・盆景・庭園のごとき愛玩物のように見える。この美しいミニチュアを眺めていると、山水及び林泉への鑑賞眼が生きていた時代、好事家のような趣味性が一般的だった頃への憧れはさらに強くなり、まだ見ぬ松島を脳内で巡るだけでは飽きたらなくなってきた。そぞろ神のものにつきて心を狂わせ…って気分でいたら、神仏に私の願が届いたのか(なんと)陸前視察のお話が舞い込み好機到来(これは摩訶不思議!)。道祖神の招きなら断る理由がないだろう(もちろん出張します)。

(兜島)
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(二王島)
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(親に勘当裸島)
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パンツ一丁の半裸男が2名、岩の上で対座している。
小舟は彼等を下ろして遠くに離れてしまった(舟に乗っているのは親類か?)

魚が水槽の外を見ている理由

ホトケドジョウを飼ってみて気付いたことは、彼等は水槽のガラス越しに外を見るのが好きだということ。水草や土管から顔を出しながら人間(わたし)の様子を観察したり、たまにテレビを観たりして過ごすのは「そんなに悪くないなぁ」と口をぽわ〜と開けて欠伸をしてたので、たぶん魚は人間と同じで退屈しのぎに何かを眺めてるのが好きなのだろう。
魚津水族館屋外のチョウザメたちは、円いプールの中でグルグルと時計回りにひたすら泳ぎ続けていたが、水中から見えるのはおそらくプールの壁面だけなので、ものすごく退屈してるのではなかろうか?それにひきかえ館内のサメたちは来館者を眺めて気ままに過ごしているようだった。チョウザメが人間嫌いならそれでいいけど(サメ本人に訊いてみないとわからない)

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外のサメ

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中のサメ

〈来館者を鑑賞する魚介たち〉
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こちらのクエは水槽にもたれてじ〜っとしていた(この姿勢が楽なのかな?)

かわいい日淡コーナー

「ハゼはかわいい」といくら力説しても「佃煮や唐揚げで食べるあの川魚のどこが?」と首をかしげる諸君も少なからずいるだろう。だが今一度わたしは断言する「ハゼはかわいい」と。その根拠は魚津市水族館・日淡コーナーで撮影したこれらのハゼ写真を見れば一目瞭然、この可愛らしさにあなたもハゼファンクラブに入会したくなるはず(そのような同好会は実在しないけど)。

〈かわいすぎるハゼたち写真館〉
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ボ〜っと岩に乗ってる姿が最高なハゼ

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かわいいウキゴリ君とチチブ君

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スイスイ泳ぐウグイやカワムツに無関心なハゼの類
(水槽にくっつくヨシノボリや石に隠れたカジカもいる)

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イワナたち(赤いのは婚姻色)

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〈マドジョウのお食事タイムに遭遇〉
水田を再現した環境でドジョウたちは飼われている。
小さい個体を優先し、顆粒エサ・フレーク餌・オキアミ・赤虫の順で飼育員さんが長いスプーンで与えるとドジョウたちが狂喜乱舞し、その激しすぎる動きにより泥が舞い水が濁る。

出張みやげ(2)

10月の金沢&富山出張で立寄った〈魚津水族館〉は、大正2年開館で日本最古の水族館だそうです。建物自体は幾度か建替えられ今の建物は昭和56年竣工のいわゆる昭和レトロな懐かしい感じの観光施設です。屋外には冷遇されてるチョウザメたちのプールがあり、館内は富山の河川を模した日本淡水魚コーナーから高級魚の大水槽、毒のある危険生物コーナー、ボ〜っとしたアザラシ君など見所が盛りだくさん!(見落としたけどペンギンもいる)。
特に心を奪われたのは日淡の展示で、そこにはむかし私が、一週間かけてキャッチ&リリースしたウキゴリ幼魚の成長した姿がありました。「(別の個体だけど)捨てたあの子がこんな立派なハゼに…」と番場の忠太郎のおっかさんのような気持ちに…。私個人としてはホトケドジョウとカマツカもいたら完璧な水槽に時が経つのも忘れて見入ってしまった、がしかし、これは失敗だった!水族館の外に〈真珠コーナー〉というパラダイスが存在することを知らずに、可愛いハゼにうつつを抜かし時間配分を誤ったことを大後悔。〈真珠コーナー〉とは長年の死蔵土産を処分せず、大量に堆積された宝物(ファンシーグッズ)を販売してる奇跡の土産店で、店内に足を踏み入れた途端「おぉ」と息を呑みましたが、バスの時間が迫っており5分ぐらいしか滞在できず、無念としか言いようがありません。夢の宝石箱のある魚津にまた行きたいです。

(かわいい真珠コーナー土産)
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全長3センチのミニハゼ幼魚をスマホに付けてみたよ。だけど「どこかに引っ掛けて落ちて紛失」というハゼ行方不明の悲しい末路が見えたので、そうなる前にすぐに外したよ。

(真珠コーナーの袋)
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魚貝類の絵が美しいピンクと水色の袋と専用シール。
ファンシーな星砂と巻貝の封入された透明イルカのキーホルダーは、時間が止まった真珠コーナーの奇跡を象徴している。

〈対髑髏〉
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ようこそ魚津水族館へ!(魚の骨を見てみよう)
こんな涼しげな従業員さんにも会えるよ。

夢のシュプール

先週の月曜日。仕事で小学校を訪問したのち、Aさん、Tさん、私の三人は西武新宿線に乗車し帰路についた。車内広告を眺めながら「ライオンズのユニは青一色の方がいいのにね」など品評し、次の議題は『狭山スキー場』の広告に移った。空色を背景にした雪の斜面でチビっ子たちがソリや雪投げに興じるポスターを見て「積雪するような山が狭山にあるのだろうか?」「10月30日スタートとは随分早いので、屋内の人工雪山なのかも?」「合成の空で屋外だと騙されましたね」と謎多きスキー場についてあれこれ話していると、突如 Tさんが「あっ、この場面…。先日の夢で見たままの光景です!」と声をあげた。単なるデジャブじゃない?と私が問うても「いいえ。空が合成だったことや子供の写真、秋からオープンすることなど、映像も会話も全て夢と同じです。」と夢との完全一致を断言した。

斯様に不可思議な超常現象を目の当たりにし、現代科学では解明できない高次元世界の存在を肯定せざるを得ないが、『狭山スキー場』広告の正夢では超能力の無駄遣いのようで、関わった私もなんだか申し訳ない。次回はロマンスや天変地異を知らせる有益な予知夢で実力発揮を!

(厚生省 奨健歩行会推薦)
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屋内スキー場はここ村山池(現.多摩湖)と山口池(現.狭山湖)の間にあるみたい。
79年前の関東地方・體錬歩行路図 (家族向・平野篇)により山地ではなく平地であることが判明。

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シュプールの続きは夢の中で…

秋の忘れ物

2年前の12月中旬、西武秩父駅前広場で見た秩父混声合唱団の定期演奏会を告知するポスターは、公演日の11月24日をとうに過ぎたのに剥がし忘れたまま「季節へのまなざし」を送っていた。ポスターに描かれた青い夏鳥(オオルリ)もまた、暖かい国に渡り忘れて一羽で途方に暮れている。すでにお役御免となったポスター、これは…もしかして貰っていいかも?しかしそれを確認できそうな人物は周囲におらず、もちろん勝手に剥がしたらダメなので諦めた。こののち私は、孤独なオオルリ背後に聳えるピラミッドのような武甲山を臨む羊山公園に登る。

(季節へのまなざし)
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〈十一月が鳥のやうな眼をしてゐる〉
以上が全文の超短い詩、尾形亀之助『十一月の電話』のように秋なのか冬なのか曖昧な11月は非常に短く(もうすぐ12月ですね)

うつせみの…

8年前の11月、恩師である木版画家・塙太久馬先生が66歳でお亡くなりました。重い持病を抱えながら作家活動と武蔵野美術大学&学園の講師をされていた先生の顔貌は、病気の影響なのかいつも土気色で、お名前の印象と同じく古代貴族のようなプリミティブな気品がありました。
ピンク色のミニミニ河馬ブローチ(娘さんからのプレゼント)がお気に入りで、セーターに付けて教室にやって来ては、我々生徒たちが極小カバを発見し「キャ〜!かわいいですね!」と褒めそやすまで澄ました顔で待っていたりとお茶目な一面も…。
また面倒見が良く、私が貧乏学生の時分には先生出演(ジュディ・オング共演)の『NHKおしゃれ工房』の助手、卒業してからは武蔵美通信科の臨時教員として採用して頂き、そのお給料で材料が買えてとても助かりました(ありがとうございます!!)。
忘れられないのは学園を出る日「これから風間さんと俺は作家同士、ライバルですよ」と仰言った柔和な口調とは裏腹に、庇のような瞼の影からギラリと輝いた先生の眼光。思いもよらない先生の言葉にビックリしましたが、あの時の動揺が今でも励みになってます。

そんなことを想い出したのは、台所に置きっ放しにしてた先生の蝉の幼虫版画の額縁が気になり、トイレの壁に飾って毎日眺めているからなのです。塙版画の主人公である蝉の幼虫は、空蝉(抜け殻)ではなく生体で、幼虫が長時間暮らすはずの地中ではなく地上で人間のように生活してます。花柄セーターや横縞Tシャツを着たおしゃれ幼虫は、先生自身の現し身であり、背景の街角は儚い現世を写しているのかもしれません。

8×11cmの木口木版画に影を偲んで…
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うつせみの 世は常なしと 知るものを
秋風寒み 偲ひつるかも?

クリスタル草履

初秋に入手したベランダサンダルは、透明ビニールの甲と霜柱のような合成樹脂の台を持つ美しいクリスタル草履で、初夏に入手したエアプランツと同じく100円ショップ(キャンドゥ)で購入したものだ。驚異の透明度を誇るスケスケサンダルは、寒冷期の管理が難しいエアプランツたちと厳しい季節を過ごさせたのち、陽光の眩しい日を選んでデビューさせるつもり。(そしてその日が来たら…)遮蔽性のないビニール甲部は私の生白い足を容赦なく陽に晒すことであろう。私はこれを履いて電車に乗って遠出がしたい。

(越冬サンダル)
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100均だけど300円(税込¥330)