日別アーカイブ: 2014年2月21日

消化せぬ惡思想

「武蔵美通信」というムサ美通信科の雑誌のインタヴューをうけるために昨日は人形町へ。
事前に「インスピレーションを受けた画集など持って来て下さい。」とのお達しがあったのですが、キーファーやキルヒナーの画集でひろがる話題って「こうゆう作品に影響されました。」程度かなと思い、実際に作品をつくるきっかけを得ているインスピレーションの素『古本』を持参することにしました。ビジュアル的にドッキリするほうがよかろう。国策、啓蒙、プロパガンダ満載の戦時中のドギツい雑誌をチョイスしました。写真週報、子供の科学、青年、主婦之友…等など。
あれもこれもとダンボール箱に詰めてたら結構な量に。お、重い…。
編集の人たちは、この手の本を見るのは初めてだったみたいで衝撃受けてました。だって極めつけドギツい幻の主婦之友「アメリカ人をぶち殺せ!」号もあるもんね〜!とても喜ばれましたー。
満員電車でひんしゅくを買いながら運んだ甲斐があったというものです。
…しかし、準備をするために「あの本はどこにしまったっけ?」の連続で骨が折れた。読書が苦手なくせに本の蒐集が好きという性分なので、いつか必ず読むつもりで、雑に未整理のまま箱にブチ込み所在の記憶が不鮮明…。そんな昨日のプチ家捜しの最中「どこだっけ?まあいいか。」と放置していた絵葉書がひょっこり出てきました。
それが、これ『陸軍省ポスター絵葉書』。大正12年11月10日「近年我國ノ民心漸ク浮華放縦ニ流レ軽佻詭激ノ風生スルヲ深憂アラサレシ」天皇によって「精神作興ニ関スル大詔』が下り、その精神作興の啓蒙のために陸軍省が制作したプロパガンダ絵葉書なのです。
大正12年11月というと、関東大震災直後の動乱に乗じた「甘粕事件」や思想家の不当逮捕など白色テロが横行し、「治安維持」の大義によって一段と統制が強化された時期です。取り締まりの対象である「軽佻詭激ノ風生」とは何か?日本臣民の剛健たる精神を蝕まんと狙う「悪思想」の姿が絵葉書に描かれています。…思想や言論の統制というと、戦時中のできごとのように思えますが、庶民の文化や思想に対する警戒や弾圧の歴史は思いのほか長いのです。
「万世一系」の国体を覆すような唯物論やら相互扶助論やら虚無思想が蔓延しちゃったら一大事!
なので悪い芽は早めに摘み取るべし!ということです。12枚組のうち一部を紹介します。

1號
『陸軍省ポスター繪葉書』(陸軍省版権所有)大正12年
<一號>危き選択
(白い玉には光輝ある我が国体、黒い玉に国体無視の外来思想)
通信子:昔からお家騒動は妾から
2号
<二號>消化せぬ悪食
(ヨダレかけに「日本」、お肉に「共産主義」、パンに「マルクス」水差しに「虚無思想」
酒瓶に「クロポトキン酒」)通信子:忠実に見へて危険な渡り者
3號
<三號>あぶない あぶない 憧れて酔ふて亡びゆく
(自動蝿取機「誤れる文化」、「享楽」の仕掛けの上でダンスするモボとモガ。)
通信子:羅馬(ローマ)の亡びたる一日にあらず
5號
<五號>過激思想の果て 子は親を 妻は夫を食らへり
(包丁をもった妻と夫の腐乱死体。死体に食らいつく子供達)
通信子:行詰り 野獣と共産主義を取る。
…貧すれば鈍するといった所でしょうか?貧者の選択する共産主義はケダモノの道であると警告。
グロテスクで稚拙な表現で「悪思想」への恐怖心を煽ります。統制すべき退廃文化よりも退廃!