月別アーカイブ: 2018年5月

注文書

丸木美術館に入館するとまず物販コーナーがあり、丸木夫妻の画集や平和を希求する図書が多数販売されています。ディスリンピア会期中はその一隅に、ぼんやり階級トート/高級創作コケシ/絵葉書2種など黒い悪意を発するグッズが陳列され、その傍らには(すでにお気づきになられた方もおられよう)注文書という用紙の束も置かれています。この注文書が何かというと、「なんと!」苦節20余年の画業を収めた本が7月下旬(予定)に刊行の運びとなり、その(タイトル未定)作品集の予約申込み書なのです。まだタイトルも発売予定日もはっきりしない本の注文書は、記入後どこに預けたり送ったりすればいいのか、それもはっきりわからない謎の注文書で(私もどうすればいいか知らない)それでも注文してくださった方に感謝!
…で、この作品集に、漫画ディスリンピックを「すこしだけ掲載しても良い」と編集者さんから許可を得たので、図々しくも載せる気満々でいるわけです。(野望というのはこのことでした)

ディスリンピア開催中〜!
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会場入口の文字は窓黒題字と同様、手書きでレタリングしてリノカットで制作したロゴです(なのでバランスがちょっと変)

コミカルな日々

昨日久しぶりに行った美容室でパーマ事故発生!美容師さんのミスで頭に電気をかけすぎて頭髪がチリチリのインスタントラーメンのようになってしまった〜(ショック!)こんなマンガチックな事故が現実に起こるとはビックリ!作風がコミカル、あるいは漫画風と評されるせいか、私の日常は不思議とコミカルな出来事の連続で退屈知らずです。
そして、ディスリンピック計画の次回作はズバリ「漫画」。これは先日のオープニングトークで聴衆の皆さんに「描く」と宣言したので下手でも描きま〜す。(今朝はラフを10ページも描いた)漫画ディスリンピックは、国民の弟・日出鶴丸クンがディスリンピック開幕式典『血の祝砲』の人身御供に殉ずるまでを描いた純愛ストーリー。
版画漫画「俺は左ビ心房(さびしんぼう)」淡水魚漫画「水がヌルくて死にそうです」など中途半端な漫画しか描いたことがないので、ちゃんと描けるか心配…でもデッカい野望があるので頑張ります。(その野望とは?次回お知らせしよう)

(これは一コマ目の下絵)
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米国漫画家ゲイリーパンターを(一方的に)師と仰ぐ私の描いた一コマ目は「ワンダーフォーゲル」?
前途多難、不安いっぱいの出帆だ!

なぜ買ったのか?

「音楽がなけりゃ、一分一秒たりとも生きていけない音楽好きの人達のために、アオシマからオーディオシリーズが発売されているのはもう知ってるね。でも、これだけじゃ物足りない君達に、プラモデルと音楽のクロスオーバー商品を提供して、より本物志向を満足してもらおうという訳で生まれたのがズバリ「音コン」シリーズなのです。
自分で作ったプラモデルから、それもオーディオのプラモから、本当に音が出たらこれは拍手モノ。そこで、新開発のマイクロスピーカーが登場。でも、ラジオ工作のようにめんどうな配線は一切なしという簡単さがこのキットの特徴なのです。使い方も簡単、手持ちのTVやラジオのイヤホーンジャックに接続するだけで、音楽が流れてくるというスグレ物。さあ君もニュープラモへチャレンジしよう!」

(私の文章に類似した)このイカレた商品解説に惑わされ、ディスリンピック製作中に購入した1/12スケール「カラオケセット」のプラモデルは、ラジカセに接続すると小っちゃいスピーカーから音が出る、という画期的な代物であるが、冷静になってみると、目の前にラジカセがあるのに何故プラモ経由で聴かなければいけないのか?という疑問にぶち当たる。(私は何故コレに二千円も出費したのか?)

これが〈音コンシリーズ〉
クラリオンカラオケニューライン
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無人のフロアでスポットライトを浴びる8トラックカセット
音楽家の亡霊も夜な夜な踊る。ミュージック ノンストップ!

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マイクロスピーカーのほか、場末感たっぷり(アイドル付)背景画も用意された充実のキットだ(たぶん組み立てない)

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お部屋のインテリアにピッタリだね!

解説コーナー(3)

悪夢の内容が進展し、昨晩は彫りの作業から刷りに進んだ!がしかし、接合箇所のインク濃淡が合わずに焦っている辛〜い場面が再現され、悪夢であることに全く変わりがない。故障した手はペンを持つとしびれるので暫し休養(サボる)。その諸悪の根源『ディスリンピック』解説は愈々第三弾!

★モニュメントと祭り★
ディスリンピック開幕式典におけるモニュメントと祭りを説明しよう。
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●高架橋
左右対称に配置された高架橋は、国家建設の厳格な秩序を表し、また建設途中の高架橋は高度成長期における成長神話のシンボルでもある。(しかし分断された形体は去勢を予感させる)

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●左側高架橋の弓兵
古代武人(弓兵)の英雄的彫刻三体は、1940年前後に皇紀2600年を奉祝した美術作品の流行スタイルを模している。バードセレモニーで放たれた白鳩の群から灰色の土鳩を見つけては射落し駆逐するゲームを演じており、これは単一民族の堅持をアピールするプロパガンダの一つ。

●左下の人間大砲
戦前の博覧会で催された「人間大砲」と同様のもの。ここでは最優秀遺伝子に選ばれ「国民の弟」と称される日出鶴丸クンが弾丸となり、国家秩序と栄光を象徴する太陽(=卵子)に向かって男性的な大砲から発射された瞬間が描かれている。太陽神への生贄『血の祝砲』はストラヴィンスキー「春の祭典」のように観衆の原始的な興奮を呼び覚ます残酷なお祭りだ。

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●二六八〇人文字
1940年、皇紀2600年のこの年に奉祝行事として開催予定された「東京オリンピック」は、日本の国際的立場の悪化から頓挫し「幻のオリンピック」となった。奇しくもあれからちょうど80年経つ2020年(皇紀2680年)に東京オリンピック開催!これを祝してディスリンピックの同時開催が決定された。1940年は「国民優生法」が制定された記念の年でもあり、2020年は「国民優生法」制定80周年にあたる。

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●石女の像
この像はパルテノン神殿の破風に飾られていた「アテナ神誕生」の石像が元になっている。子供を産めない女性のことを「石女(うまずめ)」というが、その字のとおり石にされた女たちの姿である。石灰岩で造られた手足、首の欠損した石像は、強制的に不妊手術を施され「石女」となった人たちを象徴する。アテナ神の持つメドゥーサの盾の中の行き場を失ったヘビ、メドゥーサの表情が石化の慟哭を代弁し、石灰岩のコロシアムはギリシア悲劇の題材「子殺し」を上演する劇場のようでもある。

解説コーナー(2)

説明すればするほど更に理解が遠のく巨大版画『ディスリンピック2680』の解説第二弾!

(以下会場解説より)
「ディスリンピック2680」は優生思想によって統制されたとある国のとある都市=ディスリンピアにて、近未来2680年(西暦2020年)に開催予定の国際体育大会である。今作ではその民族の祭典ディスリンピックの開幕式典の様子が描かれている。
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●トラックとフィールド
このトラックとフィールドは、大きく3つに分別されたチームによって式典のパフォーマンスが行われている。左側は知力体力に長けた青年たちの『甲チーム』、中央は性別的に二番手である乙女の集団『乙チーム』、右側は優生学的に排除の対象になった者たちの『丙丁戊チーム』

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『甲チーム』
優秀な人材として育成された彼らであるが、ディスリンピック建設奉仕決死隊の学徒として出陣するところだ。健康も知力も優れた青年が犬死させられる不合理と矛盾!この光景は、1943年の神宮外苑、国立競技場における出陣学徒壮行会の隊列と、ナチス党大会の記録映画『意志の勝利』の作中に見た、ツェッペリン広場にスコップを掲げて集合する国家労働奉仕団の大隊列を参考にして描いた。

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『乙チーム』
二六八〇の人文字マスゲームを演じている彼女たちは、国家の構成員として中庸の心構えと従順さを持つ優秀な分子である(その証拠に分子模型のようなプロポーションをしている)。規則正しい肉体鍛錬により、国家の未来を担う「母性の保護」に勤しむことを誓う巨大モニュメント『ディスリンポス山』には煉獄のごとき(変な体操の)修行によって心身をステージアップさせ、山頂の地上の楽園=民族の花園を目指す少女たちの彫刻が見える。民族の花園には国際優生学学会、ユージェニクスのシンボルツリーがそびえ立ち、民族浄化と国民の健全を祝福している。

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『丙丁戊チーム』
戦前に制定された国民優生法、そして戦後の優生保護法にある「断種」対象の人たち(どんな障害のある人か)を具体的に描くことが大変に苦しく難しいので、遠回しに徴兵検査の劣等に該当する「丙丁戊」の漢字で表現したことをお許しいただきたい。
ここではまだ基礎工事が行われている。セメント鉱山から製造された生コンクリートで打設工事の最中であるが、健全な世界への立ち入りの禁じられた(出生前の)魂が高架橋からブルドーザーによって押し出され、地上では選別機がフルイにかける作業をしている。これら大量の排除された魂たちは、橋脚の足元に掘られた巨大な穴に生コンとともに流し込まれ埋められる。この競技場と大会開催の無事を祈願する『人柱』としてディスリンポスの神々に捧げられるのである。

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人気No.1キャラ「くちマスク」登場!
前列3名(ならず者風)男達も推しメン。

解説コーナー(1)

彫版の悪夢から解放されない夜はまだ続く!その呪縛の原因である巨大木版画『ディスリンピック2680』に何が描いてあるのかご説明しよう。会場にも解説が張り出されている(はず)ですが、あまりにも長文なので(私なら)読む気がしない。なのでここ窓黒にて小出しに解説しまーす。

(巨大版画でハゲ3つ)
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高さ2・4m、全長6・4m 巨大版画の全容!
これを手で彫ってバレンで刷ったのだから、腕の一本犠牲になっても仕方があるまい。

以下会場解説より)
★ディスリンピック競技場★
このスタジアムは、ダンテ「神曲」の舞台である地獄、煉獄、天上界の形状を元にデザインされている。天井は太陽系を模した宇宙、観客席はすり鉢状の地獄が象られ、中央には煉獄山を模した「ディスリンポス山」という名のトレーニングセンターの巨大モニュメントが飾られている。

ドーム型の天井は、1851年ロンドンに建造されたガラスと鉄のパビリオン『水晶宮』をイメージし、大阪に存在する水晶宮似の廃墟『なにわの海の時空間』の画像を元に描いた。(ロンドン万国博覧会の遺構である『水晶宮』を見学したドストエフスキーは、そこに功利主義などの近代悪の勝利と、計算に基づかれた未来を見出し、水晶宮を近代合理主義の権化とみなした。体育競技における成果主義や優生思想も然り、と私は思う。)
新古典主義の秩序とロマン主義の熱情。この二つの異なる主義の出会いがファシズム(特にナチス)の高揚感を生み出すのではないか?と考え、競技場建設にはこの二つの要素を組み合わせてみた。

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観客席(左)
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観客席(右)

●観客席
向かって左側は、現在建設中「新国立競技場」の建設現場、右側は石灰岩(セメント)の採石場の風景写真を元にしている。この二つの風景は形状的に古代ローマのコロッセオに酷似し、奇妙なことに建設資材の原料、建設作業中という完成前の段階ですでに「廃墟」に見えるところが大変に興味深い。これは権力の偉大さを証明するために「廃墟の威容」を予感させる巨大建築を建造する意義を唱えたナチスのお抱え建築家、アルベルト・シュペーアーの『廃墟の価値理論』を思い起こさせ、新国立競技場のデザイン選定の際にうたわれた大義「レガシー」という言葉とも符合する。

白昼夢と悪夢

ディスリンピック製作中に睡眠不足から、目を閉じただけでも(寝ないで)夢を見るようになってしまい、その夢というのが「パイン果汁ジュレ入りのココナツ味のグミを開発する」「銀杏並木を散歩中、前方を派手なスカジャンを着た小さな男が歩いているな〜ってよく見ると大きな七面鳥だった」など、すこぶる他愛のない内容であった。
ようやく展覧会が始まりゆっくり寝られるようになったはずの私だが、そうそう安眠をさせてもらえず「版木をひたすら彫り続ける」という単調な悪夢に悩まされている。「あれ??もう仕上がったよね?なぜ彫っているのだろう…」不安に満ちた自問で目を醒ますと必ず右腕と指先がビリビリ疼いているので、どうやらこの腕の故障と夢とが連動しているらしい。この悪夢で3時間ごとに起こされてイヤになるが、右腕選手の一軍復帰はまだ先の模様…困ったネ。私は早く漫画が描きたい。(故障の原因である版画はしばらく休止)

製作中全国から差し入れ有難うございました!
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熊本県の大家さんからデコポン(ご馳走様でした)

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兵庫県のお友達からプンパニッケル(うまかった)

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宮城県のお友達から(これはなんでしょう?)
これは手焼きのクッキーではなく、なんと縄文&弥生土器の破片49個の詰め合わせと矢じりの作りかけ?黒曜石。食べれないけど十二分に癒された〜(ありがとう)

それから…27日美術館で大量の食料を差し入れてくださったお客様。お名前も訊かず失礼いたしました。。あのあと徹夜作業でしたが、頂いた食料のおかげで飢えずにすみました…本当に有難うございました!(これを読んでくれてたらいいのですが…)