月別アーカイブ: 2018年5月

〈麺紀行〉戦車とベビーカー

訪れた土地に、戦争遺跡・自衛隊施設・立食いそば又はうどん屋の三点が揃っていれば申し分なく地方散歩は楽しい。私が13年前に散歩した茨城県土浦市は、陸自土浦駐屯地/武器学校・予科練跡・変な立食い蕎麦屋と三つの条件をクリアした素晴らしい町だった。

その当時の紙焼き写真(フィルムカメラだった)を並べ眺めていると、13年経った今、これらの物件がどうなっているか気になり検索をしてみた。武器学校敷地内に多数展示されていた新旧の米軍/帝国陸軍/陸自戦車及び火器は、私が見た時は全てがパンツァーグラウ(灰色)に塗装され、ぱっと見どれもドイツ車輌のような不思議な光景だったが、現在は三式、八九式中戦車のみ特別整備され塗装も現役当時の色に塗り替えられたらしい。そして、一番気になってた汚くてマズい立食い蕎麦屋は「さすがにもう存在してないだろう」と思っていたら、なんと蕎麦屋の母体(小宴会処)の改築に伴い、リニューアルオープンしていた!パチンコ屋の景品交換所みたいなつくりで、暗く油臭いのがとても印象的な店だったのだが、今度は駐車場の管理小屋みたいなお店に変身!あの忘れられない思い出の味もリニューアルされた(はず)だろう。

十年一昔と言うが、あれから13年。時節は変わり、昔の面影は一掃されたように見えるが、案外本質は変わらず、存在自体は同じままなのだと思う。(お蕎麦は美味しくなっていて欲しい)

(思い出の味)
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黒い汁とふやけた麺が印象深いタヌキそば¥270

(自走砲とわたし)
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あまり興味のない自走砲と記念撮影したのは、この側を通りかかった女性自衛官にシャッターを押してもらったから(他の戦車の前が良いとは言えず…)

(うらやましい情景)
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ベビーカーに乗ってお祖父ちゃんと記念撮影していたこの赤ちゃんも、今頃は中高生に成長しているだろう。八九式中戦車とともに写った自分の赤ちゃん時代の貴重な場面が、まさか(こっそり撮影され)赤の他人の思い出フォトになっているとはゆめゆめ思うまい!

〈麺紀行〉ムショと長シャリ

「日中は夏日」の予報で、本日予定していた高崎の旧陸軍火薬工場と古墳見学は中止し、前橋のみ散歩することにして、手打ちうどん→朔太郎記念館→文学館→アーツ前橋の順で移動することに。両毛線新前橋駅に着くと群馬特有の熱風が吹いていてかなり暑い!群馬の森計画を縮小して正解だった。専門学校は多いが人影のない大通りを抜け徒歩20分、小相木にある屋号の無いお店、ズバリ『うどん屋』に到着。昭和の食堂風の店内は昼前だというのにほぼ満席で、客の多くは常連と見受けられる。黒装束でいかにも余所者の私は、隣席の客が白い皿に盛られた「もりうどん」にオプション天ぷらを添えて食べている様子をマネて「もりうどん」と「ゲソ天」を注文。手打ちの乱切りうどんは、いろんな太さや形状が混在し歯ざわりのバリエーションが一皿で堪能できる。そして「ゲソ天」がうまい!ゲソの概念を覆す肉付きの良い発達した脚!普段よく食す白い棒状イカより俄然うまい。これで440円安い!

感動の余韻を残しつつ高速回転のうどん屋を出ると利根川はすぐそこだ。朔太郎が憂愁をうたった利根川は、想像以上に大河でコワい感じがした。時折畝りを立てる翡翠色の川面を恐る恐る覗きながら大橋を渡ると、レンガ造りの城壁のようなものが眼前に現れた。「刑務所の敷地です」の看板で、この美しい壁が実はムショの塀であることを知った。刑務所では麺類のことを「長シャリ」と隠語で呼ぶときくが、前橋刑務所で出される長シャリは、やはり上州うどん…なのだろうか?

(人間の見えない町)
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小相木ではブロック塀もネクタイをする

(打ちたて茹でたて)
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濃いめのつゆが合う。もりうどん370円 ゲソ天70円

(地獄の番人)
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城塞の佇まいに相応しく巡らされた堀には、大きな鯉が多数生息している。
人間の気配を察知しワーっと集合するが、エサをくれない人だとわかるとアっという間に去る。(私はグミしか持ってなかった)

魅惑の太麺王国

「なぜ埼玉はもっと太麺アピールをしないのか?」先週金曜日に、先輩の運転する車で友人たちと丸木美術館を再訪し、その帰りに立寄った吉見町の道の駅の冷蔵ケース内に、スパゲティとうどんの中間的存在の焼きソバや、それよりも太くて平たい焼きソバ、ペタンコの太うどんやペラペラのうどんを発見。初めて目にする魅惑的な麺類に心を奪われました!購入したい衝動にかられつつ、暑さで痛んでしまいそうなので断念。今思うと、保冷剤を何個も買って持ち帰ればよかったなぁと大後悔です。都内には埼玉県の物産店は無く、やはり地元食料品店でしか扱ってなさそう…。地元高校生原案のゆるキャラ・コバトンのように地味で控えめな埼玉ですが、太麺平麺文化の強豪として全国区に(太麺平麺販売)進出してほしいです。

〈米国資本の進出〉
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「丸木美術館とその周辺には自販機すら無いよ」と吹聴してたのに…目を疑うような光景が!なんと5月1日からペプシ社飲料自販機が設置されたのだという。
登山者のようにペットボトルのお茶をちょびっとずつ大切に飲んでいた(地獄の)展示作業のあの日。そう先月27日には存在してなかったのだ!

〈ネギはうまい〉
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緑色の特産品に満足はしているが、太麺への未練はつのるばかり!

影をなくした男

一昨日、日差しの眩しい昼下がりの街頭で、「うわ〜大変!大変だ〜影が…影がない!」と叫声を発し、自転車で右往左往しながら狼狽するお爺さんを見かけた。もしも本当に影を失くしたのなら、ご老人はすでにこの世のものではない (あの世の住人には影がないという)か、もしくは悪魔のような存在に影を売り払ってしまったか、そのいずれかだと思われる。

読んだことはないけど、あらすじは知っている小説『ペーター・シュメールの不思議な物語』は、自分の影とお金が湧き出る袋とを交換してしまった男が、影のない不都合から人生を狂わせ、悲観にくれて不思議な袋を廃棄し放浪してたら、今度は千里でも万里でも飛ぶように歩ける不思議な靴を入手、そのおかげで自然科学者になって成功した。…といった変に都合のいいお話で、この物語にどんな教訓や寓意が込められているのかは不明。たんに作者シャミッソーが自身の職業(自然科学者)を自慢したいだけのような感じもする。

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ドイツ表現主義のシャープな影法師
E.L.キルヒナー画「ペーター.シュメールの不思議な物語」

ディスリンポスのYはヘソ

夏に刊行予定の作品集では、出版界で活躍するハイセンスなデザイナーさんとお仕事するので、私の不気味な作風もオシャレ偽装できるかも?と淡い期待を抱いていたのですが、打合せで「表紙の文字は手書きレタリングの版画でいいでしょう」という流れになり、まだまだ暗黒路線続行の予感。そして本のタイトルはまだ決定していないけど予約受付継続中〜(注文書をかざまランドに送付してくれる友人もいるが私も処置に困っているよ…どうにかする)

〈3つの秘密〉
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「ディスリンピック2680」中央部
ディスリンポス・トレーニングセンターのサイン〈DYSLYMPOS〉の秘密とは?

(その1)   造語 DYSLYMPOSの語源であるオリンポスの本当の英語綴りは~POSではなく~PUS。でも読みやすいと思い(勝手に) UをOにした。
(その2)  DISではなくDYS。俗語のディスる、ではなくディストピアのディスだから。
(その3)  正確な左右対称の構図を描くために、9文字奇数の真ん中に当たる「Y」の字(垂直棒部分)を中心を示す標柱にして、そこを基準に測りながら下絵を作成。

〈ダンケシェーン!〉
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これは丸木展初日の朝に撮られた写真。不眠不休のせいで酔っ払いみたいに上機嫌でヘロヘロの私とマリオさん。母国ドイツの文化はもとより、日本の歴史と文化にも造詣の深いこの友人が、ディスリンピア展をネットで紹介してくれました。

〈アート-カルチャー〉↓展覧会紹介コーナーはこちら!
http://art-culture.world/articles/kazama-sachiko-dislympia-2680-hiroshima-panels-maruki-museum/

宝石を食うもの

W.B.イエィツの散文詩『宝石を食うもの』作中の主人公は、漆黒の大坑の壁に並んだ無数の猿たちが、掌に大盛りに盛った宝石をガツガツと飽きることなく食い続ける光景を白昼夢に見たという。これはケルト民族の地獄、己自身の地獄、そして芸術士の地獄で、美と奇異を渇望し、貪った果てに「平和と形状」を喪失し「無形と平俗」に堕する未来の予知だという。
版木をガツガツ彫る地獄のさなか、この詩に描かれた不気味な幻影が頭に住み着き困った。「無形と平俗」に堕する!なんという芸術士の地獄よ!
そして昨夜、何気なく目に入った『絵画者はゾンビになってネオ・アナクロニズムの彼方へ』この一行に恐れを抱く。偽悪醜アナクロの志士が現代美術のゾンビに…。ネオ・アナクロニズムというのは希望の新天地なのか?はたまた地獄か?この中村宏先生の言葉は今後解読しようと思う。

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これは明治時代の理科教科書を切貼りした自作コラージュ

母の日に

一週間前、母の日のプレゼント(しまむらのパンツ)を慌てて取りに入った和室の襖の角で、左足つま先を強打!それが原因で足の甲が腫れて痛むのかと思っていたのですが、よく観察すると、左右とも足がクリームパンみたいに膨れ(指で押すとへこんだまま)脚全体がむくんで痛だる〜く歩きにくいので、これは半年間の座りっぱなし生活(運動不足)による血行障害で、下肢静脈瘤の初期症状と思われます。この下肢静脈瘤という病気は母が長年患っていて、皮膚の下を太いミミズが這っているよう見える症状は本当に痛々しいものです。そして今わたしは、この病気は遺伝するという情報に慄いている。受入れ難い遺伝という名のプレゼント…「おそろしい!!!!」←(楳図かずお風に)

スーパーマルダイ(桜新町店)にて
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母の愛を渇望する幼子にとって「ママ」2文字では不足だったのだ。
ままままままと叫ぶその声は幼児特有のエゴに満ちて無限である。

☆掲載予告☆
明日月曜日、毎日新聞・夕刊「美の扉」コーナーでディスリンピックが紹介されます。毎日新聞を購読している方はチェックしてね!

わたしは真悟

中学生の時、三軒茶屋アムスで楳図かずおトークショーが催され、私は恐怖漫画を貸借りする親友と連れ立って憧れの先生を観に行きました。そして質問コーナーでは勇気を出して挙手し「漫画において今後も奇形の表現は可能でしょうか?」という全く面白くない質問をしてしまい、今もそのことを悔やんでいます。(もっと14歳らしい可愛い質問をすればよかった!)

その楳図先生の作品『わたしは真悟』が、今年フランスの漫画賞を受賞されたという朗報を知り、文庫版全7巻をディスリンピック製作中にヤフオクで購入。しかし通読する時間が無いので「完成したら直ぐ読もう!」と楽しみにとっておいたのです。…そして晴れてディス体育大会から解放されて埼玉より帰京。家に戻り真っ先に読み耽りました。が、疲労困憊した精神には、殺人描写や天才的な電脳シーンが鮮やかすぎた!まるで悪夢のよう…。「エコエコアザラク」もそうだけど、元気な時に読むのをお勧めします。

『わたしは真悟』第1巻
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楳図先生のイメージする電脳世界…凄すぎる!
小学6年生の真凛と悟の汚れなき恋から「自我」の芽生えた赤ちゃんコンピューターの「真悟」
概念を学習してない赤ちゃんゆえの無垢さから暴走し犠牲者続出!コンピューターの知能向上、外部との接続(扉が開いてゆく感覚)を悟りになぞらえた傑作。

演歌クイズ

(狂気のディスリンピック)気晴らしネットショッピングはニュープラモ、蛍石の他に、柘榴石、CD、お皿、漫画本、詩集と多数!そして本日ご紹介のCDもその一枚。…さて突然ここでクイズです。このCDジャケットの人物「このひとは誰でしょう?」

〈クイズ〉
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ピンク色の背広が似合う「私は誰でしょう?」

(1)桜色した君がほしいよ「新沼謙治」
(2)ヤル気 元気 いわき「井脇ノブ子」
(3)古賀先生最後の愛弟子「大川栄策」

〈こたえは…〉
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(3)大川栄策でした〜(正解できたかな?)

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個人的な意見として、「酒は涙か溜息か」は藤山一郎「影を慕いて」は青江三奈「無法松の一生」は村田英雄の歌が良い。大川栄策の古賀メロは(ここには収録されてないけど) 流転の心情を軽やかに歌った名曲「サーカスの唄」が一番好き。

氷海そっくりさん

約半年に及ぶ制作期間中、カンヅメ生活の気晴らしのため(ヤフオクで)購入したのは変なプラモデルだけではない。本日ご紹介する石もその一つで、このフローライト結晶は、ドイツロマン主義を代表する名画、C.Dフリードリヒ「氷海」に見れば見るほどそっくりです!キリキリと追い詰められた精神状態でも、この灰色を帯びた水色が美しい結晶を掌に乗せると、フリードリヒの描く絵画の世界同様の不思議な驚異を感じ現実逃避できました〜ありがとう氷海そっくりさん。

これは名画「氷海」
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こっちが「氷海そっくりさん」
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分厚い流氷がギシギシと迫り上がる音まで聞こえてきそうなそっくりさん!
…石を置いた詩集・氷島の作者、萩原朔太郎の故郷前橋を目指して、高崎(旧陸軍遺構と古墳)〜前橋(萩原朔太郎記念館)を徒歩で巡る楽しい遠足を計画し今日実行の予定だったのですが、二日前、襖の角に爪先を強打し負傷。あえなく断念し延期!とほほ〜