月別アーカイブ: 2018年9月

嵐の前に

台風襲来の危機感を煽るTV報道を見て「何か備えなければ」という気分が高まり、今日は珍しく午前中から活動し、とりあえず、今後ますます価格高騰が予想される葉物野菜を買いに隣町の大型スーパーまで行った。その道中でなんという種類か不明のキノコが大発生しているのを目撃!この場所(M学園校庭ウラ)は形の良い石や、へんな絵の描いてあるケシゴムが落ちていたりする私が気にっている地帯で、本日もまた嵐を前に素晴らしい光景を見せてくれたというわけだ。

(おいしそうな謎キノコ)
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天然のキノコがこのように沢山生えているのを初めて見た!
地味で無害そうに見えて有毒だったりするのかも?(うかつに食べてはいけない)

(ごろつき人相書き)
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同じ場所で採取したバガボンドな風貌をした石たち

ドッペルゲンガー

当ブログお正月号にて紹介した〈ダブル〉とは、この世のどこかに存在するかもしれない自分にそっくり生き写しの人物で、ダブルと遭遇した人間は死ぬという。この恐怖の存在をドイツ語では〈ドッペルゲンガー〉と言い、むしろこちらの呼び名の方が馴染み深いと思う。
私が中学生のころ夢中で読んでいたE.A.ポオの『ウィリアム・ウィルソン』は、まさにそのドッペルゲンガーを題材にした怪奇小説で、自堕落で傲慢な主人公を、そっくりな外見をした優等生が心理的に追い詰めていく怖〜いお話であった。
もし不運にもドッペルゲンガーに遭遇したらどうするか?私だったらウィリアム・ウィルソンのような対立と軋轢を避け、死なないように努力する。おそらく私とそっくりなそいつにも、私と同様に肩こり/冷え性/足のムクミなど血行不良の諸症状があるだろう。なので私が服用している漢方薬を分けてあげる。そして私と同じく黒い衣服を着用しているだろうから、私のクローゼットいっぱいの闇をそいつにも少し分けてやろう。このように懐柔すれば命を落とすこともあるまい。

シューベルト歌曲集:白鳥の歌より
〈ドッペルゲンガー(影法師)〉
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ハイネのドッペルゲンガーは、かつて恋人が住んでいた住居を訪ねた男が、そこで絶望に苦悶するもう一人の自分の姿を見てしまう暗〜い詩である。
この絵のドッペルゲンガーは、全く同じトラッドファッションで着飾った二人の男。愛車の白いセドリックも全く同じ型だ。

悪霊

この『悪霊』とはロシアの文豪が書いた長編小説の題名ではなく、小学4年生の姪っ子が考案した最新ゲームの名前です。小説『悪霊』は、登場人物・ピョートルの延々と続くお喋りに疲れて、私は下巻を読むまえに挫折してしまいましたが、かのピョートルに負けず劣らずお喋りな姪は、独自に作った算数のテスト/ クイズ問題 / 謎解きゲームを普段から準備しており、機を見計らっては大人の私達に回答を求めて来ます。それに付き合うと、細かいルールの解説、また回答の説明を聞かなければならず、せっかちな私は姪と遊んであげたい気持ちと、逃げ出したくなる気持ちで半々になります。

ゲーム『悪霊』の入り口
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実家の食堂のドアに貼られた「都会」の紙片。
どうやら悪霊は都会にいるらしい…。

〈ヒント〉
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さとり 学校
パソコンのじょうほうをさとっている

かまいたち
都会にいるヨ。
人のではいりが多いなぁ〜。

…などと書いてあるが、このゲーム会を欠席した私にはさっぱり意味が解らない。

明後日まで(だった)

昨年8月より豪州クイーンズランド州立美術館にて開催の〈The Long Story〉展は明後日9/23が最終日!告知をするのをうっかり忘れてしまいましたが、実はこの展覧会に参加しており、おそらくこの美術館所蔵の『人外交差点』が展示されているはずです。これは5年前に六本木クロッシング用に制作し、奇跡的に同じ展示室でご一緒した(我が心の一等星!)中村宏先生から「あんたは作品もいいけどタイトルもいいねぇ!」とお褒めの言葉を授かった記念の作品です。
プロレタリア小説『 ゴーストップ』からの引用など、日本語だらけで英語圏の方々に理解し難い箇所も多々ありますが、中央に描いた(万国共通)SNS魔方陣の呪詛を手掛かりにぼんやりと観て頂きたい。(あと2日しかないけど)

〈人外部分〉
人外部分
炎上するツイッター鳥で燃え尽きそうになった。

海辺にて

今週の[朝日:歌壇俳壇]挿画はシューベルト歌曲《海辺にて》からの着想です。「あの時以来僕の身体は憔悴し、心は憧れに死んでゆく。あの不幸な女が、彼女の涙で僕に毒を注いだのだ。」このハイネによる陰鬱な詩の一節を元に、海岸での出来事に執着したまま岩礁と同化した男。その背中の潮溜まりには決して干上がることのない涙を湛えている…とこんな情景を想像して見ました。
この絵の(写真を見て描いた)海岸は実在し、ハイネの詩情とは全く無縁の、至極マヌケな思い出が私にはあります。その海岸は三浦半島の先端東側に位置する「毘沙門」と呼ばれてる岩礁地帯で、当時小学5年生で三浦半島の更生施設(区立健康学園)に入所してた私は、磯生物の観察か何かでその毘沙門へみんなで遠足に行きました。
遠浅の岩場にはいろんな生物が生息しており、特に宝貝の貝殻が無数に落ちてました。「宝貝は古代の貨幣である」という予備知識から、私はものすごく価値のある貝だと思い込み、
現代の通貨ではないタダの貝殻をポリ袋に集めることに夢中になった!そして…気がついた時には仲間の姿は見えず、静かに足元まで押し寄せて来た満ち潮に、帰る道を奪われる寸前でした!思いもよらぬ速さで海面が迫ってくる恐怖は現実だったのか?それとも夢だったのか?今でも記憶が混乱することがあります。

シューベルト歌曲集:白鳥の歌より《海辺にて》
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なぜ小学生の私は貨幣(貝殻)に執着したか?
健康学園では現金の所持が禁止されており、寮母さんに預けた1ヶ月500円の予算から必需品(ノート/鉛筆/石鹸/歯ブラシなど)を購入しなければならず、それも外出禁止なので廊下に下がってる「買物依頼ノート」に品名を記入し、寮母さんが代わりに買ってくるシステムになっていた。
そんなことでお金への憧れが強烈だったのだと思う。(今はそうでもない)

思い出はカーキ色

不定期に送信されてくる『この日の思い出を見てみよう』というお節介メールは、決まって朝の8時15分に届く。今朝もまたこの着信音でウッカリ目を覚ましてしまいました。本日の「思い出せ」指令はこの写真で、これは2年前の今日9/16に、陸上自衛隊朝霞駐屯地の「りっくんランド」を見学した時の記録です。道路工事をする自衛隊員を描いた油絵・10式戦車・ヘリ部隊のヘル着用の私、以上の3枚が提示されています。(この私のがっかり顔は「悪臭を放つヘルメット」に起因する。)この日のりっくんランド見学の目的は、府中市美術館公開制作で制作するアルミ箔襖絵『人間富嶽』に登場させる現役戦車を写真撮影することにありました。

そして、あれから2年経ち再びアルミ箔ドローイングに着手せんと只今準備中で〜す。銀色絵画『九(ディス)軍(リン)神(ピアン)』は、11〜12月に恵比寿ナディッフ地下室で開催する、ファースト作品集『予感の帝国』出版記念展にて三分の一ぐらい公開予定!そのほか漫画ディスリンピック原稿・本家ディスリンピック部分などなど展示予定。「ぼんやり階級トート」に続く新作グッヅも絶賛開発中!お楽しみに!

(陸自ファンの汗でヘルメットが臭い)
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ナナヨン/キューマル/ヒトマル式…陸自戦車の好きな人には楽しいか〜もね?(私は違う)

さよならルミちゃん

数日前、実家のルミちゃん(金魚)が死にました。飼い主の母に「エサを与えすぎると水質が悪化する」と再三にわたり忠告していたのですが、なかなか理解してもらえず….とうとうエロモナス菌に感染し目が飛び出る症状が!エロモナス感染は飼育魚にとって死刑宣告に近く、私が過去に溺愛してたホトケドジョウ君たちも、この憎きエロモナス菌によって死に至ったのです。ドジョウ君の場合は、腹が赤くなり臓器不全を起こして死ぬという可哀想な末路でした。
私は治癒の可能性を探り、グリーンF.G液で薬浴させ「婦人病の薬が効く」という怪情報を頼りに自分が病気になったフリをして薬を入手。これもまた効果があるという噂のココアに婦人病薬を混ぜて、手作りの丸薬をこしらえて、絶食中のドジョウ君に「エサだよ」と騙して食わせました。こうやって手を尽くしたのですが、少しも回復の兆しも見せず絶命…。石も水草もない暗い部屋で絶食させられ、さぞや辛かっただろうなぁ。
ルミちゃんは病気で出目金みたいになっても母から「かわいい」と言われ、オヤツもいっぱい食べて天国へ旅立ったのだから、それはそれで良かったのかもしれません。

(くまモンとルミちゃん)
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ポップアイ症状が痛々しい最後の写真

(母が描いた在りし日の肖像画)
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水草を食む金魚たち (きっと天国で再会しているに違いない)

すみか

〈ざわめく流れ. どよめく森. そそり立つ岩が俺のすみか〉こんな雄々しい歌詞で始まるシューベルト歌曲《すみか》は、観念で見た大自然を、大地を踏みしめるようなメロディーで描き出す。この曲はまさにフリードリヒ絵画の山岳地帯を眺望するが如くである。
しかし私が10×13cmのリノリュウム版に刻んだ《すみか》はそのような偉観ではない。この絵の主人公は原詩登場の放浪者ではなく、鳥類と人類の中間的な存在で、この人物は人面岩を住処にしており、退屈な山暮らしのなか天候の変化だけを唯一の楽しみに暮らしている(誰かみたいに不謹慎な奴だ)。雷光を見て嵐の襲来に怯えつつ心の裡でスリルを期待している…そんな鳥人間の気分を描いたのが今週の[歌壇俳壇]挿画です。

歌曲集:白鳥の歌より《すみか》
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この掲載紙の発売前日(9/8) ねぶた祭りが開催され、青森でないこの町にラッセラーの掛声と鈴の音が夜中まで響く。我が住処かざまランド斜向かいが集会場所なので、祭りが苦手な私は辟易とし終日籠城を極め込む。

(夜8時)
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これは先日の雷雨のときの写真(眩い閃光で真っ白く飛んだ庭の光景)

〈麺紀行〉袋の人

百均ショップの夏用乾麺の並ぶ棚に鍋用スープが少しずつ進出しつつあるのを見て、夏の終わりを感じる今日この頃です。そして以前ご紹介した蕎麦の袋にも秋は訪れました。
〈大切な人の笑顔がうれしくて本気になって、打ちたて・茹でたて味わい舌づつみ〉と一途な女心をにじませた文面が微笑ましい『ざるそば』の袋だったのですが、先日購入したら例の文は書き換えられ、このような変化が!〈最新の設備を導入した事により、保水性の良い水々しいそばが出来上がりました。ぜひ、ご賞味下さい。〉…彼女に何があったのか?一切の私情を挟むことなく、最新設備導入をアピールする姿勢には以前の無邪気な姿はありません。この事務的な文言に、秋空のように切り替えの早い女心が見て取れます。きっと新型製麺マシーンの導入とともに気分一新したのでしょう。それもまたよし!

(リニューアルパッケージ)
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健気なあのコは何処に…

(旧パッケージ)
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思い出はここ(冷凍庫の扉)に

(自己紹介)
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麺であることは見ればわかる
「殊の外うまい」とはご謙遜。確かに1kg 250円の割には美味しいヨ

セレナーデ

現在連載中「朝日:歌壇俳壇」挿画の9月のテーマは《シューベルト歌曲集》です。シューベルトをドイツ語で歌うことをあっさり断念した私は、むかし覚えた日本語歌詞のセレナーデと菩提樹 (の一番)ばかり歌っています。堀内敬三という人が作詞した和文版セレナーデは、本家レルシュタープを凌ぐ素晴らしい詩で、メロドラマっぽいオリジナル歌詞に対し、詩的な言葉を呪文のように繰り返す不気味な静けさがなんとも秀逸!
〈秘めやかに 闇をぬう 我が調べ/静けさは 果てもなし 来よや君/ささやく木の間を もる月影 もる月影/ひとめもとどかじ たゆたいそ たゆたいそ〉…た〜ゆた〜いそ、た〜ゆた〜いそ〜♪の不思議な情感にチャレンジしたのが今回の挿画〈セレナーデ〉です。

歌集「白鳥の歌」より
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「白鳥が臨終の間際に発する最期の一声は、どんな鳥類の鳴声よりも優る」というへんな俗説から、シューベルト最後の作品集の題名は『白鳥の歌』と名付けられたという。しかしこの絵の中の鳥は当の白鳥ではなく、小夜曲(セレナーデ)に登場する夜の鳥(ナイチンゲール)である。

〈ディースカウ先生〉
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先生と一緒に歌えないけど. 先生の歌声は鑑賞する。
手前のCD『冬の旅』はドイツの新感覚楽団(アンサンブルモデルン)による演奏で、全くお手本にはならないし、歌っているのはディースカウではない。(新解釈版シューベルトでかっこいい)