月別アーカイブ: 2018年10月

図鑑 世界の戦車

先日入手した『図鑑 世界の戦車』という44年前に刊行された本は、(たぶん)著名な研究者アルミン・ハレ氏による戦車専門書『パンツァー(TANKS)』を原著に、日本の出版社が子供向けに再編集した児童書です。日本の学童を喜ばせることに重点を置き、新たに日本人画家による挿絵をふんだんに盛り込んで、戦車にまつわる面白エピソード満載したこの図書は(原著と全く別物となったが) いま大人が読んでも十二分に楽しめる本です!
古代の変な戦車、中世時代の謎戦車、近代工業の副産物的な戦車、機械化黎明期の失敗戦車などなど、いわゆる戦車マニアの嗜好と異なる愛らしい戦車が多数この本では図解されており、これらを眺めていると思わず頰が緩みます。(今後ちょっとづつ紹介しましょう)

(これが表紙)
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少年少女講談社文庫『図鑑 世界の戦車』昭和49年刊行
学童達はこの戦車画に胸を踊らせたに違いない (…もちろん私も!)

(古代の戦車)
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〈要塞をこわす怪物戦車〉約三千年前のアッシリアで発明されたこの高さ3m長さ6mの巨大木造戦車は、前方に付いている破城槌で石壁を叩き割る。と解説されているが動力が何なのかは不明(ヘルメットがかわいい)

(渾身のダジャレ)
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「アシュルナシルバル王のむすこ、シャルマネサー三世がつくった怪物戦車の改良型。破城つちを二本にしたが、さるまねさーといったところw」

嘘の街

戦前の渋谷で子供時代を過ごした母方の祖母が「ハチ公が屋台の酔客から焼き鳥をもらってる現場をちょくちょく見た」と生前語っていたのを憶えている。ハチ公は死んだ主人を偲んで毎日駅に通っていたのか?それとも焼き鳥に味をしめて出没していたのか?諸説ある忠犬ハチ公物語の真相は定かではない。それは、渋谷川が「臭い」とフタをされ暗渠になったり、かと思えば再開発で緑化されイメージアップに利用されたりするのと同様に時世に左右されるものである。

今週の[朝日:俳壇歌壇]挿画には、昭和初期のスタイルに身を包んだ男女の害虫が渋谷交差点に群がり、我が物顔にダンスする享楽的な場面が描かれている。だが「渋谷くんだり」と渋谷を田舎扱いしてた父方の祖父の言葉から推測すると、この時代はまだ渋谷は繁華街ではなかったようなので、この版画の情景もまた虚偽である。(絵の中央には、和装の女(虫)が警官によって身柄確保されている様子が見える。学生服で擬装しダンスの輪に潜入していた警官に騙されたのであった。)

〈SHIBUYA〉
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昭和初期のダンスホールの写真には、男装の娘とおじさん、男同士、女同士のペアなどが散見され、みな美しく着飾り踊っている。エログロナンセンスの語感よりずっと清潔で優雅な雰囲気だ。

予感の帝国(公式情報)

ナディッフ公式WEB上の《予感の帝国展》キービジュアルには漫画の1ページが掲示されている。しかしこの本は漫画本ではなく画集で、本文の章ごとに私の書いたへんな短詩が掲げらていても、むろん詩集ではなく画集です。そして自作への解説文 (現在過去未来の誰に向けられたか不明の警告と皮肉)は、爽快な読後感とは真逆のへんな気分を誘発すること間違いなし、と言えましょう。

この地底王国かざまランドの暗黒が反映された作品集『予感の帝国』に射す一条の光は、本の最後を締めくくる足立元さん執筆の論考です。明快な考察と品位に満ちた論評によって、不気味に自己完結な(ちょっと怖い)図書に、読者皆様との交歓を許可する梯子が設置されたような…そんな親近感がもたらされました!〈そして告知〉美術界を鋭い視点で眺望する視覚社会史研究者・足立元さんとのトークイベントを恵比寿ナディッフにて12月1日に開催しま〜す(詳細は以下)

(これが表紙)
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《予感の帝国展》11月9日〜12月9日
於:ナディッフギャラリー(恵比寿)

〈トークイベント〉足立元氏 × 風間サチコ
12月1日(土) 18:00~20:00 於:ナディッフ店内(恵比寿)
*有料*要予約*定員70名
*詳細はこちら→NADiff a/p/a/r/t

温室漫画

「こちらになります」と案内されたのは、三階建の某国大使館の最上階一室で、その窓からは広々としたテラスに建造された温室を見ることができる。「先生、いかがでしょうか?」と訊く案内係に促され、よくよく観察すると、プラモの箱を立てて置いたような形体をしたガラスの温室を中心に、雨交じりの暴風がゴーゴーと渦を巻き、その雨粒が、手前のガラスには左方向に、向こう側のガラスは右方向に打ち付けられて、ガラス越しに見ると、その雨の筋が格子状に見えて面白い。そして外の樹木が暴風雨によって激しく煽られ靡いているのに、薄い箱のような温室の中の植物だけは、微動だにせず静寂を保っている。その「動と静」のコントラストが素晴らしい。「よろしい、漫画にしましょう!」と私は答え、この珍しい光景を漫画化することを約束したのである。

…朝方このような夢を見て「作品のヒントになるかも?」と思い、内容を記憶するよう努めたが、昼に思い起こすとまるで面白くない夢であることに気がつく。(ということがよくある)

(夢のスケッチ)
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案内係から「物資の乏しい時代に、王貞治と金子兜太がギターとバイオリンの交換をした」という逸話を紹介されましたが、これは夢の中のウソのお話です。

二重の誤認

今まで私は、皇居の濠に架かるこの橋の名前を「眼鏡橋」と誤認していた。しかしそれは長崎市にある観光名所の橋の名称であることを知り、では昔の東京観光絵葉書に表記されている「二重橋」が正しいのだろうと思って、今週の[朝日:俳壇/歌壇]挿画のタイトルを〈NIJUBASHI〉とした。
だが本当は、この水面に映る姿がメガネよりもむしろ、北方民族の着用する遮光器に似る東京の名所、私以外の皆様も通称「二重橋」と認識している橋の正式名称は『正門石橋』であり、本物の二重橋は、誤認二重橋の奥に架かる『正門鉄橋』なのだという(ことを挿画掲載後に知る)。真実はともあれ、二重橋のイメージとは程遠い直線的な正門鉄橋は、今後も二重橋の呼称を奪還するのは難しいだろう。(大多数の認知が真実となった一例だと言える)

(正式名称:正門石橋)
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縄文人も装着していたのだろうか?
私も木製のカッコいい遮光器をかけて街を歩きたい(走りたくはない)

誤報&訂正

先日の当ブログ記事にて、作品集『予感の帝国』刊行日程を11/9と記述してしまいましたが、その後それが誤情報だとわかり、《11月9日恵比寿ナディッフにて特別先行販売》というのが真実であることが判明。ここに謹んで訂正いたします。11/9に購入可能な店は恵比寿ナディッフのみで、他の書店での販売は11/15からです。ご注意くださいませ!
特定一店舗のみ先行販売である最大の理由は、それはこちらのナディッフで出版記念展が11/9より開催され〈初日に主役の書籍が無いのは変だ〉からです。展覧会ではディスリンピック部分/漫画生原稿少数/九軍神一部など、いろんな断片を揃えて展示予定!(詳細は後日お知らせ) よろしくお願いしまーす。

(目印はコレ)
rino.yokanのコピー
いろんな定規を駆使して書いた文字『予感の帝国』版画を表紙デザインに採用!

東京所々

購読者投稿の俳句及び短歌の内容とは無関係に、だが時には偶然の重なりを見せながら紙面を飾った朝日新聞[俳壇/歌壇]コーナー挿絵連載も3ヶ月目に突入しいよいよ最後の月となりました。残すところ4回となった十月のテーマは『東京』です。(なぜ東京か?特に深い意味は無い)
今週は銀座の夜景を写した昭和30年代の絵葉書を元に、地上の光景とは思えぬ宇宙的ネオンに驚愕しつつ絵を描きました。稲垣足穂の短編『一千一秒物語』に出てくる月は、何を考えているのかわからない得体の知れない奴ですが、この絵に登場する月の男も意思の疎通が難しそうです。それでも勝手にイルミネーションの模様替えをしてくれてるところを見ると、そんなに悪い奴では無いのかもしれません。

〈GINZA〉
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月には桂男という人が住んでいて、これに手招きされると寿命が縮むという伝説がある。(天体ばかり眺めているのは時間の無駄だ、という戒めだろうか?)

(本棚に一千一秒物語を探したが…)
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無かったので、この『人間人形時代』を久しぶりに手に取ってみた。
読者を拒絶する難解な内容/本の中央に穴が空いている(紐が通せる!)等、購入25年以上経っても理解不能な一冊だと言える(タルホのお月さまのような存在だ)。

私は着飾らない

『私は着飾らない』という題名の素敵な絵画を購入しました。作者は吉村宗浩さんです。先月末、吉村さん個展(代々木/パールブックS&G)で、吉村さんと歓談中にこの絵の中の人物とバチっと目が合い「この顔は?」と固まりました。似てる…私に!スーパーマーケットで買い物してるとき、店内の鏡に映ったぼんやりした顔。そんな表情に近い。しかしこのモデルは(私ではない)、兵庫県内のとある駅で3度すれ違っただけの名も知らぬ女性とのことで、私のドッペルゲンガーは兵庫県在住だと判明。兵庫県には旧友が住んでいるけど、こんど遊びに行く際は、この人物と鉢合わせしないように気をつけよう。もし遭ってしまったら名前を訊こう。

「ようこそ人間たち」
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ようこそかざまランドへ!
四次元ボーヤもハダリーも貴女を歓迎する。
(私は着飾らない/私はたまに着飾る)

ぬばたまの

ぬばたまの 黒き画面に没入す 雑言住まう現し身の国(四度目のスマホ故障に遭いて詠む。ヤフコメの見過ぎに注意!) 昨夜またアイホンの画面が前触れもなく真っ黒になり、今朝になってやっと復旧!充電する辺りが過熱してるので、たぶんバッテリーが限界なのだと思う。買換えるのが最善の策とはいえ、この旧式小型アイホンに愛着があり新機種購入には抵抗がある。なのでしばらくは生命危うしアイホンを続投する。きわめて不安定な通信機器が、皆様とつながる唯一の連絡手段なので、もしメール返信等が途絶えたら「私のスマホがいよいよ冥界入りしたとお察しください。よろしくお願い致します。」

〈アルバムを作りました〉
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頼んでもいないのに「アルバムを作りました」と送信してくるグーグルフォト。スマホが受信機なので、この一方的お節介も受信できなくなっちゃう!(写真は一昨日金曜日に西洋美術館で撮った西洋絵画で、台東区の風景ではない)

うつせみの

古賀政男の詞を「万葉集の引用に過ぎない」と指摘する声を聞いたことがある。しかし、万葉ロマンの風化を古賀メロが少しでも食い止めている、と考えれば、古典からの引用に問題があるどころか、むしろ4千5百首の歌を詠んだ天皇、防人、民間人その他大勢のいにしえびとは、草葉の陰で喜んでいるに違いない。
秋の夜長にピッタリな名曲『影を慕いて』の三番の歌詞〈君故に 永き人世を霜枯れて/永遠に春見ぬ我が運命 / 永ろうべきか空蟬の 儚き影よ我が恋よ〉では「永」を三度重ねた技巧と、枕詞「うつせみの」にかけた「ひとよ」の万葉テクが泣かせる!時間では癒せない絶望を表現するのは、14世紀に渡り継続された変わらぬ情けである。(ちなみに私が好きな枕詞は闇黒ムードの「ぬばたまの」だョ)

〈人生の並木路〉より引用
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11/9刊行の作品集『予感の帝国』の作家経歴ページには、私の顔写真ではなく古賀政男の肖像画(これ)を掲載する。