月別アーカイブ: 2023年3月

燃えるコニファー

昨年の12月、一部地域で避難指示が解除された福島県双葉町を訪ねた。町に向かう途中の解除されてない区域は、車での通過のみ許されており、自動車の窓からみえる風景は、人間だけがいない映画のセットみたいに静かだった。

「双葉町に戻ってもいいですよ」と促されても商店も病院も無い(というか巨大道路建設ばかり盛んな) 町でどうやって暮らせばいいのか?と宙ぶらりんな義憤が湧いてくるが、余所者の私が無責任にどうこう言うのも憚れる。
故郷を憂う人々の憤懣遣る方無い思いは、剪定する主もなく燃え盛る炎のように繁茂した緑のコニファーが代弁してるように私には見えた。

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この日を覚えてますか?

唐突にグーグルフォトから忘れ去られた記憶を掘り起こされることがある。
先日も「この日を覚えてますか?」と「あれから7年」というタイトルの写真が複数枚パソコン画面に自動で映し出され、それはこんな写真だった。

「この日を覚えてますか?」
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覚えているとも!実家で見たミカン坊やに爆笑しすぎて涙が止まらなくなったあの日を…。
これは油性ペンで顔を描いたプラスチック製ミニミカンをミカンネットで包んだお人形で、母が戯れに作ったものだ。どうして眉を歪ませて諦めたように微笑してるのか?母はこの形容しがたい変な顔に意図はないと言い、テレビ前にしばらく飾ったのち飽きて捨てちゃった。(もらっておけばよかったなぁ)

「あれから7年」
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この対空自走砲は実物を撮影したのではなく、ドイツの試作戦車写真集のページを撮影したもの。
オストヴィントに似た模型の正式名は知らないが、オストヴィントとはドイツ語で「東風」という意味だ。東風 (こち) は春の季語で今の季節にピッタリだが、私は花粉症なので風はあまり嬉しくない。

夜の公園

台所で夕飯の支度をしてると、外から「夜の公園に行きたぁーーい!夜の・公園・に!行きたいよぉーーーー!」と絶叫する子供の声が聞こえてきた。続いて男親がなだめすかし家に連れて帰る様子がして静かになり、私は「連れて行ってあげればいいのに、夜の公園に…」と心の中で呟いた。

夜の公園は好い。
昼間より広場はずっと広く樹木は巨大に見え、陰影が濃くなった植込みは不気味で魅惑的だ。以前は私も草木も眠る丑三ツ時に近所の公園に行き、電燈に煌煌と照らされる石灯籠など鑑賞していたが、昨今の治安悪化を考慮し夜間の散歩は中止している。

(夜の公園写真)
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何を見つけた?

2月20日付毎日新聞夕刊に掲載された赤瀬川原平写真展を紹介する記事には、私が「拾わないとどうにかなっちゃう」性格だと書かれている。どうにかなっちゃうとは穏やかでないが、これは物を拾い損ねたあと何年も継続する〈心残り〉のことで、自分自身は未練に苛まれ狂おしいが、他に危害を及ぼすような性質のものではない(だから安心してください)。
路上で見つけたマーガリンや煎餅の空缶、電車内で発見したゲーセンのコインなど、極めてつまらない品々の幻影が時折脳裏に浮かんでは、その場で理性を働かせた自分を恨めしく思うのだ。

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これは写真展会場に掲示された私の解説文に登場する〈二十歳のときに拾ったマジョリカタイル〉
お風呂屋さんの解体現場に侵入し発掘したお宝です。たぶん大正時代のもので、非現実的な桃色の川岸にゆったりと流れる水色の川がなんとも美しい光景。拾ってよかった!(でかしたぞ過去の私)

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毎日新聞でご紹介の写真展『日常に散らばった芸術の微粒子』は六本木のスカイ・ピラミデにて
今月25日まで開催でーす!

ブルもプロもいない楽園へ…

漫画だから楽に読めると思ってた『アトム博士のユートピア探検』は、子供向けとは思えぬ文字の多さに苦戦し読破できずにいる。マルクス博士が登場し「資本論」を解説するところから、如何にブルジョワジーがプロレタリアを搾取してるかを労働・賃金・時間・価値などの単語を使った算式で示す憎悪煽動場面ばかりで、確定申告すらまともに一人でできない私にとって苦痛でしかない。自分がどれだけ損してるか計算して立腹するよりも、夕飯の献立とお酒について真剣に考える方が私は良いな。
(社会主義者よりも) ごく一部から愛好される詩歌を作った鴨長明や尾形亀之助のように、ぐうたらな美意識に忠実な人生を送った個人主義者(心の貴族)を私は尊敬する。

眠りの国で時間旅行しながらユートピア探検する兄弟
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小5兄「ウーム!!ぼくは.もう我慢なりません。博士ッ!!  いっしょにプロレタリアの味方をして.憎いブルジョアジーを.やっつけようではありませんか?」
小1弟「兄ちゃん。ぼくは.ブルジョアが栄える秘密を聞いた途端に……社長になって大もうけしたくなったよ。マルクス博士ッ。その安い労働力は.どこへ行ったら買えるのですか?」
….小学生の兄弟ですら分断させ階級闘争を勃発させるのが革命の方法だ。