月別アーカイブ: 2022年9月

波の背の背に…

演歌と民謡の二刀流を実行する我らが福田こうへいさんの新譜CD『濤(なみ)』の収録曲一覧が先日公表された。一文字シリーズ第10弾となる本作は、海に生きる人々をテーマにした演歌、オリジナルとカバーあわせて12曲で構成され、なんと私の大好きな「かえり船」と「蟹工船」も入っている!これは早速予約して特典のオリジナル.マスクシールをゲットしなければならない(かも?)。歌が超絶上手い福田さんの蟹工船に期待しかない!そしてマスクシールには興味しか湧かない!

(私は1日に2-3回「かえり船」を必ず歌う)
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村田英雄先生の「蟹工船」はプロレタリア小説のお話と一致する内容ではないが〈蟹を網からむしりとる 腕にしぶきの牙がたつ〉という力強いフレーズがたまらない!
古賀政男先生を讃えるバタやんアルバム『男の純情』には古賀メロではない「かえり船」は当然収録されてないが、棒読みでぎこちない感じの「古賀先生 田端義夫コメント」が聞きたくて何度も再生する。

鹿さん何故なくの?

最近ことに好きな東北民謡『秋田おはら節』は、深山に分入った男がホロホロと泣いてる鹿を発見し事情を尋ねると「自分を狙う猟師が遠くに見えるが、あの鉄砲で撃ち殺されたら残った家族はどうやって暮らすのだろう?と心配になり泣いているのだ」と鹿が答える可哀想な歌だ。

これに類似した鹿の歌は古代にも存在し、万葉集の3885番・乞食者が詠んだ歌〈鹿のために痛みを述べて〉は、…(前略) 奈良県平群の山中で、鏑矢を手にした狩人の眼前に観念した鹿が現れ「私を殺すなら私の身体を余すところなく贅沢品に利用し、せめて素晴らしいと誉めて下さい。誉めて下さい。」と懇願する…といった内容で『秋田おはら節』と同様に、殺す側の人間(詠人)が、犠牲者である鹿の気持ちを代弁した歌である。

物寂しい秋の奥山にこだまする鹿の声。悲痛な雄叫びに憐憫の情を寄せ、古の人は歌にしたのだろう。しかし鹿が鳴く本当の理由が繁殖期のアピールだと知ると俄に獣臭くなり、佗しい叙情は半減する。(そんなこと構わずに鹿の都合で勝手に鳴けばよい)

(古典作品引用の普遍性)
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鹿の歌の次の次の次の3888番をモチーフにした『FLOW(沖つ国/不老山)』
領く君の塗屋形とはどれでしょう?

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その解説  (素材箇所は誤記、後に訂正)
小さくて読み難いけど石巻(石の蔵)に行ったら読んでみてね!

【展覧会情報】
明日10日から開催のグループ展〈温泉大作戦〉に参加します
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会場:無人島プロダクション(←詳細こちら)
会期:9/10〜9/25
参加作家:アルバート.レオ.パイル、ヴィットリオ.ブロードマン、ケネス.バーグフェルド、モンスター.チェットウィンド、風間サチコ

私は子等に語る

先日のランド見学会にて塾生から「社会的テーマを扱う理由」を問われる。これについては青年期における衝動性が大いに関係していて、おぞましい人間界に対する憎悪が反射神経的に働き、私の創作意欲に直結してたようなところがあった。では今はどうかというと、現世の事柄については全くバカバカしく思えて対等に付き合う気力がない。と私は子供たちに語った。

〈人間の偉大なところ、それは彼が目的ではなく橋たるところにある。〉これは私の好きなニーチェの言葉だ。学校では「目標を持ちなさい」と向上心を教育されるが、漠然と「橋になりなさい」と先生に言われたら抽象的すぎて子供は困るだろう。
私にとって無目的の先生である鴨長明を引き合いに、非生産的に縮小してゆくグータラ生活を綴っただけの800年前の随筆『方丈記』がなぜ現在も学校の教科書に載っているのか?と子供たちに問う。
私が思うに、時空を跨いで自由に往来できる創作物のような存在が「橋」であり『方丈記』はその資格を十二分に備えた「橋」なのだ。目的とは執着の一種だ。有益でないのに捨てられることなく後世に残り続ける。特段の目的を持たなかった鴨長明に対して最高の評価だと思う。(私の作品もかくありたい)

〈こころの文庫〉中学1年用
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初めて現代語訳方丈記を読んだ (佐藤春夫による冷徹な訳が素晴らしい)
ヤドカリを手本に自分に見合った家を良しとしていたが、ヤドカリとは逆に引越す毎にどんどん家が小さくなり終いには3m四方ほどの空間に!仮住まいの予定だった方丈庵に早5年、「今この草庵を愛するも悪行であり、この閑寂に執着するも罪障に相違あるまい。」と無明界に堕ちる覚悟を決めて、ただ慰み程度に念仏を3回唱えてこの随筆は終わる。
『発心集』では執着からの解放、それ即ち往生と書かれていたが、狭さと静かさに安住することすら呵責があるのなら…私も風間ランド愛を断たない限り往生は望めない。人畜無害な生活ですら悪なのか?「幸福とはなんだろう?」私は子供たちに問うてみた。

新美塾!塾生来訪

昨日の午後、かわいい中高生11名が風間ランド来訪。彼らは国立新美術館の〈新美塾!〉という美術教育事業の塾生たちで、アーティストの制作現場を見学するために下道基行塾長の引率でやって来たのだった。部屋が狭いので2グループに分かれそれぞれにお話を聞いてもらったのだが、どの子も30分に渡る長い話を傾聴し、しっかりとした質問もでき、さらに対等に会話のできる知性にとても感心した!私が中学生の時は30分も大人の話を聞くことができなかった。私も彼らのように素直な態度で勉強してたら…今よりもっと賢い人間になっただろう!

〈質問コーナーより〉
塾生「風間さんの作品は読書からヒントを得てますか?」
私「小中学校はほとんど学校に行かず家で本を見て過ごしたけど、読書は苦手だから斜め読みの技術が発達し、読破せずともなんとなく内容がわかるようになった!しかし誤読と空想に偏った知識なので、誤解と空想と妄想が今も作品に反映されています。」

塾生「一つのテーマで作品を制作し完成した後、テーマに対する関心に変化はありますか?」
私「スパイが情報を探ってるうちに、敵のことが好きになっちゃうお話のように、制作中は執着するけど、もう知りすぎたからいいや〜って感じで、作り終わると関心が薄くなります。」

塾生「スランプや落ち込んだ時はどうしますか?」
私「スランプは特にないけど、もうやりたくない!という時は気分転換に旅に出て自衛隊駐屯地や石を見物するよ。」

塾生「作業机の周りに色々なものが貼ってありますが、小い頃から部屋に好きなものを貼っていましたか?」
私「同室の妹が壁に光ゲンジのポスターを貼ったり、机に中山美穂(みぽりん)のシールを貼っただけで大ゲンカ勃発だったので、好きなものを貼るのは大人になってからですね!」

子供の方がしっかりしてる(ためになったかな?)

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油揚げ三等分

いしのまき元気いちばで購入のA5サイズ油揚げは、三等分にして3回に分けて食べた。シンプルにオーブントースターで焼いただけだが、普通の油揚げよりも大豆の風味が強く感じられ、湯葉をカリカリに揚げたような香ばしさがあった。一枚で3回も楽しめたのでお得な気分!また食べたい!(東京でも売ってないかな?)

(第1回)1/3油揚げ
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讃岐うどん(温)にトッピング

(第2回)1/3油揚げ
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ナス&キュウリのっけ梅風味そうめん(冷)にトッピング

(第3回)1/3油揚げ
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ちぎった油揚げに青ネギ&おかかトッピング
ゴーヤチャンプルにビールと味噌汁でこの日はご馳走

阿部さん夫妻

私のRAF展示会場・石の蔵の家主さんは、蔵と同じ敷地内に建つメルヘンチックなお家に住んでいる阿部さん夫妻です。設営作業中に「暑いでしょう」と氷水やスイカ、笹カマを差入れて下さったり、時折様子を見にきては面白いお話をして下さったりと、多大なるご親切をお二人から賜りました。
以前はボーイスカウト団長をなさってた83歳になるご主人からは、カヌーや釣りなどアウトドア趣味の話を伺い、実際にマグロの一本釣りをするための高級カーボン製釣竿(40万円)を持たせてもらった。電動巻上げリール付きの竿はズッシリ重たく、専用の釣糸は7万円もするのだという!高価な釣具で釣ったマグロが高いのも納得です。

奥様からは5年前に石の蔵で展示した金氏徹平氏の作品にまつわる面白エピソードを聞きました。
…日用品を石膏で固めた氏の彫刻に組込まれた犬小屋に、なんと〈野良猫の妊婦さんが住みつき子猫を出産をした!〉この心温まる話題はたちまち拡散され大人気に。かわいい猫親子の住む彫刻を一目見ようと多くの人が訪れたが、猫は喧騒がイヤになったのか一家揃って何処かへ引越してしまった…。その後も猫の転居を知らない客が次々とやって来たので、おばちゃんはその度に「残念だったねェ、もう猫はいないよ」と教えてあげたのだという。ガッカリ顔の見物人を見つけては声をかける毎日はたいそう忙しかったことでしょう。

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昔は米袋でギッシリだったという大きな石の蔵

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作品搬入前に阿部さんが掃除して下さったのでギャラリーみたいに綺麗!

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プレス公開の日。会場を離れることができず昼食に困ったが、まねきショップのシフォンケーキと鮭おにぎり、阿部さんから頂いたキュウリの粕漬け/スイカ/麦茶で飢えずにすんだ…有難うございました!